令和5年短答式試験|鑑定理論の過去問解説
令和5年短答式試験の出題傾向
令和5年(2023年)の短答式試験・鑑定理論科目は、総論からの出題が中心で、基準の基本的な内容を正確に理解しているかを問う「正統派」の出題が多い年でした。合格率はやや高めに推移し、基本をしっかり押さえた受験生にとっては得点しやすい試験だったといえます。
本記事では、具体的な問題の引用は避けつつ、出題傾向と効果的な対策について分析します。
令和5年短答式試験の概要
試験の基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 試験日 | 2023年5月(第2日曜日) |
| 試験科目 | 鑑定理論、行政法規 |
| 試験時間 | 鑑定理論:2時間 |
| 出題形式 | 五肢択一式 |
| 出題数 | 40問 |
| 合格基準 | 総合点でおおむね7割以上 |
合格率の状況
令和5年は前年と比べてやや合格率が上昇し、約36%前後の合格率となりました。これは出題内容が基本寄りであったことを反映しているとも考えられます。
出題分野の分析
総論・各論の出題バランス
令和5年の特徴は、総論偏重の出題バランスです。
| 分野 | 出題数(概算) | 比率 |
|---|---|---|
| 総論(基本事項、価格の種類、三方式等) | 約22問 | 約55% |
| 各論(種別・類型別の評価) | 約9問 | 約23% |
| 留意事項 | 約4問 | 約10% |
| その他(鑑定評価制度全般等) | 約5問 | 約12% |
総論が全体の半数以上を占めており、令和6年の出題と比較すると各論・留意事項の比率が低いことがわかります。
総論の出題内容
総論からは以下の分野が重点的に出題されていました。
特に出題が多かった分野
- 価格の種類:正常価格・限定価格・特定価格・特殊価格の定義と要件
- 三方式の意義:原価法・取引事例比較法・収益還元法の適用条件
- 最有効使用:最有効使用の判定基準とその意義
- 対象確定条件:対象不動産の確定と条件設定
各論の出題内容
各論からの出題は比較的少なめでしたが、以下の分野が出題されていました。
- 更地・建付地の評価手法
- 借地権の評価
- 建物及びその敷地の評価における留意点
- 賃料評価の基本的な考え方
頻出論点の確認
価格の種類に関する出題
令和5年でも例年通り、価格の種類は複数問出題されました。特に以下の点が問われています。
| 論点 | 出題のポイント |
|---|---|
| 正常価格の定義 | 「合理的な市場」の要件を正確に理解しているか |
| 限定価格の適用場面 | 借地権者が底地を買う場合等の具体的適用 |
| 特定価格の要件 | 民事再生法に基づく早期売却等の法的要件 |
| 特殊価格の対象 | 文化財等の一般市場性がない不動産の扱い |
価格の類型まとめも参照してください。
三方式の意義と適用
三方式に関しては、以下のような出題がなされていました。
最有効使用に関する出題
最有効使用は毎年必ず出題される「鉄板論点」です。令和5年でも以下の点が問われています。
- 最有効使用の判定における4つの要件(物理的可能性、法的許容性、経済的合理性、使用収益が最も高い使用)
- 建物及びその敷地における最有効使用の判定
- 更地における最有効使用と建付地における最有効使用の違い
前年(令和4年)との比較
出題傾向の変化
| 比較項目 | 令和4年 | 令和5年 |
|---|---|---|
| 総論の比率 | 約50% | 約55%(増加) |
| 各論の比率 | 約25% | 約23%(微減) |
| 留意事項の比率 | 約12% | 約10%(微減) |
| 全体の難易度 | 標準 | やや易化 |
| 新傾向の問題 | 若干あり | 少なめ |
令和5年は令和4年と比べて、総論の基本的な事項からの出題が増え、全体としてはやや取り組みやすい試験であったと分析できます。
継続して出題された分野
以下の分野は令和4年・5年と連続して出題されており、最重要分野です。
- 価格の種類(毎年3〜5問程度)
- 三方式の意義と適用(毎年3〜4問程度)
- 最有効使用(毎年1〜2問)
- 対象確定条件(毎年1〜2問)
- 地域分析・個別分析(毎年2〜3問)
正答率の分析
正答率が高かった問題の特徴
正答率が高かった問題には以下の共通点がありました。
- 基準の基本的な定義をそのまま問う問題
- 選択肢の一つが明らかに正しい(または誤り)で判別しやすい問題
- 過去問で何度も出題されている定番の論点
正答率が低かった問題の特徴
一方、正答率が低かった問題の特徴は以下の通りです。
- 留意事項の細部を問う問題
- 賃料評価の詳細(継続賃料の求め方等)
- 証券化対象不動産に関する問題
- 似た概念の微妙な違いを問う問題(例:限定価格と特定価格の適用場面の区別)
正答率による学習優先順位
| 正答率 | 分野の特徴 | 学習方針 |
|---|---|---|
| 80%以上 | 基本的な定義・概念 | 確実に得点する(落とさない) |
| 60〜80% | やや応用的な内容 | しっかり理解して得点源にする |
| 40〜60% | 細かな知識・応用問題 | 可能な限り対策する |
| 40%未満 | 高難度・新傾向 | 余裕があれば対策する |
効果的な学習法の提案
基本の徹底が最優先
令和5年の出題傾向から言えることは、基本に忠実な学習が最も効率的だということです。
学習の3ステップ
- 基準の通読:まず不動産鑑定評価基準を通読し、全体像を把握する
- 条文の精読:重要条文を一つずつ正確に理解・暗記する
- 過去問演習:過去問で理解度を確認し、弱点を補強する
テーマ別の学習ポイント
| テーマ | 学習のコツ |
|---|---|
| 価格の種類 | 4つの価格を表で比較して違いを明確にする |
| 三方式 | 各手法の適用条件と限界を整理する |
| 最有効使用 | 4要件を暗記し、具体的な判定例で理解する |
| 各論 | 不動産の種別ごとの評価手法を一覧表にする |
過去問の効果的な使い方
- 最低5年分は年度別に解く(時間配分の練習を兼ねる)
- 間違えた問題は基準の該当条文に戻って確認する
- 同じテーマの問題を年度横断で比較し、出題の切り口を分析する
- 直近5年の出題傾向分析を参考に、重点分野を把握する
他の年度の過去問も活用する
令和5年の分析だけでなく、令和6年の短答式や論文式の過去問(令和5年論文式、令和6年論文式)も確認し、出題傾向の変化を把握することが大切です。
まとめ
令和5年短答式試験・鑑定理論の分析ポイントを整理します。
- 総論からの出題が中心(約55%)で、基本に忠実な出題が多い年だった
- 価格の種類、三方式、最有効使用は毎年出題される「鉄板論点」
- 各論・留意事項の出題比率は前年よりやや低下したが、翌年(令和6年)には増加に転じている
- 正答率が高い問題で確実に得点することが合格のカギ
- 基準の条文を正確に暗記する学習が最も効率的
- 過去問は年度別とテーマ別の両方で活用する
令和5年は比較的取り組みやすい出題が多い年でしたが、翌年の令和6年は留意事項や各論の出題が増加しています。基本を押さえた上で、各論・留意事項まで幅広く学習することが、安定した合格につながります。