最有効使用の判定とは?鑑定評価の大前提をわかりやすく解説
最有効使用とは
最有効使用とは、不動産の鑑定評価における最も重要な概念の一つであり、対象不動産の価格を判定するうえでの大前提となるものです。不動産の価格は、その不動産がどのように使用されるかによって大きく異なります。鑑定評価では、その不動産にとって最も合理的な使用方法を前提として価格を求めます。最有効使用の判定は、地域分析と密接に関連しています。
基準では、最有効使用について次のように定義しています。
不動産の価格は、その不動産の効用が最高度に発揮される可能性に最も富む使用(以下「最有効使用」という。)を前提として把握される価格を標準として形成される。この場合の最有効使用は、現実の社会経済情勢の下で客観的にみて、良識と通常の使用能力を持つ人による合理的かつ合法的な最高最善の使用方法に基づくものである。
― 不動産鑑定評価基準 総論第5章第2節
この定義には、最有効使用を理解するうえで不可欠な要素が凝縮されています。
最有効使用の判定の考え方
「良識と通常の使用能力を持つ人」による判定
最有効使用は、特別な能力や資力を持つ人を前提とするものではありません。あくまで「良識と通常の使用能力を持つ人」が利用することを前提としています。
例えば、ある土地について、特殊な技術を持つごく一部の事業者だけが活用できるような使用方法は、最有効使用とは認められません。一般的な市場参加者が合理的に判断して選択し得る使用方法でなければならないのです。
「合理的かつ合法的」であること
最有効使用は、合理的であると同時に合法的でなければなりません。
合法性とは、法令上許容される使用方法であることを意味します。用途地域による建築制限や建ぺい率・容積率の制限など、都市計画法や建築基準法等の法規制を遵守した使用方法でなければなりません。更地の鑑定評価においては、最有効使用の判定が特に重要です。
合理性とは、経済的に見て合理的な使用方法であることを意味します。物理的に可能であり、かつ経済的に実現可能な使用方法であることが求められます。
「最高最善の使用方法」
最有効使用とは、対象不動産の効用を最高度に発揮する使用方法です。ここでいう「最高最善」とは、不動産の収益性を最大化する使用方法を意味します。ただし、収益の最大化だけでなく、リスクや安定性なども総合的に考慮した判断が必要です。
最有効使用と価格との関係
不動産の価格は、最有効使用を前提として形成されます。この原則は、不動産の価格に関する諸原則の中でも特に重要なものです。
なお、ある不動産についての現実の使用方法は、必ずしも最有効使用に基づいているものではなく、不合理な又は個人的な事情による使用方法のために、当該不動産が十分な効用を発揮していない場合があることに留意すべきである。
― 不動産鑑定評価基準 総論第5章第2節
つまり、現実の使用方法が最有効使用と一致しているとは限りません。例えば、商業地域にある土地に低層の古い建物が建っている場合、現実の使用方法(低層建物としての利用)は最有効使用(高層の商業ビル等)と異なる可能性があります。このような場合、鑑定評価では最有効使用を前提として価格を判定します。
このことは、不動産の価格が「現在どのように使われているか」ではなく、「どのように使うのが最も合理的か」によって決まることを示しています。
最有効使用の判定における考慮事項
最有効使用の判定に当たっては、以下の事項を総合的に考慮する必要があります。
物理的な可能性
対象不動産の物理的な条件(土地の形状、面積、地勢、地質等)を踏まえ、物理的に実現可能な使用方法であることが必要です。例えば、急傾斜地にある土地については、大規模な造成工事が必要となるような使用方法は物理的に困難な場合があります。
法的な許容性
都市計画法、建築基準法、その他の法令による制限を遵守した使用方法であることが必要です。用途地域、建ぺい率、容積率、高さ制限などの規制を考慮します。
経済的な合理性
物理的に可能で法的にも許容される使用方法のうち、経済的に最も合理的な使用方法を選択します。建設費用と収益のバランス、需要の有無、市場環境等を総合的に判断します。
建物がある場合の最有効使用
建物が存在する場合の最有効使用の判定は、更地の場合よりも複雑になります。
建物及びその敷地についての最有効使用の判定に当たっては、まず更地としての最有効使用を判定し、次いで現実の建物の用途等を勘案して、建物及びその敷地としての最有効使用を判定するものとする。
― 不動産鑑定評価基準に関する実務指針(留意事項) 総論第6章
この規定が示すように、建物がある場合の最有効使用の判定は2段階で行います。
第1段階:更地としての最有効使用の判定
建物がないものと仮定して、その土地の最有効使用を判定します。
第2段階:建物及びその敷地としての最有効使用の判定
更地としての最有効使用を踏まえつつ、現実に存在する建物の用途、構造、規模、築年数、残存耐用年数などを考慮して、建物及びその敷地としての最有効使用を判定します。
例えば、更地としての最有効使用が「中高層の共同住宅」であっても、現存する建物が築浅の事務所ビルであれば、直ちに建物を取り壊すことが合理的とはいえず、当面は事務所ビルとしての使用が建物及びその敷地としての最有効使用と判定される場合があります。
逆に、現存する建物が老朽化して経済的な効用を発揮していない場合には、建物を取り壊して更地としての最有効使用に転換することが、建物及びその敷地としての最有効使用と判定される場合もあります。
最有効使用と鑑定評価の手法
最有効使用の判定は、鑑定評価の各手法の適用に直接影響します。
- 原価法 — 最有効使用を前提とした再調達原価を基礎として積算価格を求めます。
- 取引事例比較法 — 最有効使用が類似する不動産の取引事例を収集・選択します。
- 収益還元法 — 最有効使用を前提とした純収益を見積もります。
最有効使用の判定を誤ると、鑑定評価のすべての手法の適用結果に影響が及ぶため、最有効使用の判定は鑑定評価の大前提として極めて重要です。
試験での出題ポイント
短答式試験
短答式試験では、以下の論点がよく出題されます。
- 最有効使用の定義(「良識と通常の使用能力を持つ人」「合理的かつ合法的」「最高最善の使用方法」)
- 現実の使用方法と最有効使用の関係(必ずしも一致しない)
- 建物がある場合の最有効使用の判定手順(更地としての判定が先)
- 最有効使用と価格形成の関係
特に「特別な能力を持つ人による使用方法も最有効使用に含まれる」といった誤りの選択肢や、「現実の使用方法がそのまま最有効使用となる」といった誤りの選択肢に注意しましょう。
論文式試験
論文式試験では、最有効使用の意義、判定の考え方、建物が存在する場合の判定手順などが出題されます。基準の条文を正確に再現したうえで、その趣旨を説明できるようにしておくことが求められます。
暗記のポイント
- 定義の中の「良識と通常の使用能力を持つ人」は必ず覚える
- 「合理的かつ合法的な最高最善の使用方法」のキーワードを落とさない
- 現実の使用方法が最有効使用と一致しない場合がある点を理解する
- 建物がある場合は「まず更地としての最有効使用を判定し、次いで建物及びその敷地としての最有効使用を判定する」という2段階の手順を覚える
まとめ
最有効使用の判定は、不動産鑑定評価の大前提となる極めて重要な概念です。不動産の価格は、その不動産の効用が最高度に発揮される使用を前提として形成されます。
最有効使用は、良識と通常の使用能力を持つ人による、合理的かつ合法的な最高最善の使用方法に基づくものであり、物理的可能性、法的許容性、経済的合理性を総合的に考慮して判定します。建物がある場合は、まず更地としての最有効使用を判定し、次いで建物及びその敷地としての最有効使用を判定するという2段階の手順を経ます。
試験では定義の正確な暗記と、判定手順の理解が求められます。基準の条文を繰り返し確認し、確実に得点できるようにしましょう。最有効使用と価格形成要因の関係についても整理しておくことが重要です。