令和5年論文式試験の出題傾向

令和5年(2023年)の論文式試験・鑑定理論科目は、各論における不動産の類型ごとの評価手法と、三方式の本質的な意義・適用関係を深く理解しているかが問われたことが特徴です。前年(令和4年)と比較すると、より実践的な内容にシフトした出題でした。

本記事では、具体的な問題の引用は避けつつ、出題傾向と効果的な対策について分析します。

令和5年論文式試験の概要

試験の基本情報

項目 内容
試験日 2023年8月(3日間のうち1日目・2日目)
鑑定理論の構成 論文問題(1日目)+演習問題(2日目)
論文問題 2問(各60点、計120点)
演習問題 2問(各60点、計120点)
試験時間 各2時間

合格率と難易度

令和5年の論文式試験全体の合格率は約14〜15%でした。鑑定理論の難易度は標準的で、基準の正確な理解と適切な論述力があれば十分に得点可能な出題でした。

出題テーマの分析

論文問題の出題領域

令和5年の論文問題は、以下の分野から出題されました。

問題1の出題領域不動産の種別と類型に応じた評価手法の適用 – 宅地の類型(更地、建付地、借地権、底地等)の定義と評価上の留意点 – 各類型における三方式の適用可能性

問題2の出題領域収益還元法の意義と適用手順 – 直接還元法とDCF法の比較 – 還元利回りと割引率の求め方

出題の意図

令和5年の出題は、「基準の条文を覚えているか」だけでなく、「実際の鑑定評価においてどのように適用するかを理解しているか」を問うものでした。特に問題1では、不動産の類型ごとに適用すべき手法を整理して論じる力が求められました。

答案のポイント

問題1型(類型別評価)の答案構成

類型別の評価手法を問う問題では、以下の構成が効果的です。

推奨される答案構成

  1. 対象となる不動産の類型の定義 – 基準における定義を正確に引用する – 例:「更地とは、建物等の定着物がなく、かつ、使用収益を制約する権利の付着していない宅地をいう」

  2. 各類型における評価手法の適用 – 原価法の適用可否と留意点 – 取引事例比較法の適用可否と留意点 – 収益還元法の適用可否と留意点

  3. 類型間の比較 – 各類型で適用手法が異なる理由 – 最有効使用の判定との関係

問題2型(手法の深掘り)の答案構成

特定の手法について深く問う問題では、以下の構成が有効です。

  1. 手法の意義:基準における定義を正確に引用
  2. 手法の適用手順:具体的な手順を段階的に説明
  3. 手法の特徴と限界:利点と留意点を整理
  4. 他の手法との関係:三方式の相互関係を論じる

令和5年特有の注意点

令和5年の出題では、以下の点が特に重要でした。

ポイント 具体的な内容
類型の正確な定義 「更地」「建付地」「借地権」等の定義を一字一句正確に
適用手法の根拠 なぜその手法が適用可能(または不可能)かの理由を明示
DCF法の詳細 DCF法の計算手順と各パラメータの意味を正確に記述
還元利回りの求め方 複数の方法(類似の不動産の取引利回り、借入金と自己資金の加重平均等)を列挙

前年(令和4年)との比較

出題テーマの変化

項目 令和4年 令和5年
論文問題1 総論的テーマ中心 各論(類型別評価)
論文問題2 評価手法の基本 収益還元法の深掘り
演習問題 更地の評価 建物及びその敷地の評価
全体の傾向 基本重視 やや応用寄り

令和4年は総論の基本を問う出題が中心でしたが、令和5年は各論や特定の手法について、より深い理解を要する出題にシフトしています。

出題サイクルの観察

過去の出題テーマを追うと、以下のようなサイクルが見て取れます。

テーマ 直近の出題年度 出題間隔
価格の種類 令和6年、令和3年 約3年
三方式の意義 令和6年、令和4年 約2年
類型別評価 令和5年、令和2年 約3年
収益還元法 令和5年、令和3年 約2年
賃料評価 令和4年、令和1年 約3年
証券化対象不動産 令和3年 不定期

注目すべき点として、三方式と収益還元法は約2年おきに出題されており、頻出テーマであることがわかります。一方、類型別評価や賃料評価は約3年間隔で出題されています。

論文式試験の出題サイクル

同じテーマの出題間隔

論文式試験の鑑定理論では、大きなテーマが2〜3年のサイクルで繰り返し出題されています。

高頻度テーマ(2年おき程度) – 三方式の意義・適用関係 – 収益還元法(直接還元法・DCF法) – 試算価格の調整

中頻度テーマ(3年おき程度) – 価格の種類(正常価格・限定価格等) – 不動産の類型別評価 – 正常賃料と継続賃料 – 地域分析・個別分析

低頻度テーマ(不定期) – 証券化対象不動産の評価 – 原価法の詳細 – 対象確定条件

出題サイクルを踏まえた学習計画

出題サイクルを意識することで、学習の優先順位を設定できます。

  • 「そろそろ出題されそうな」テーマを重点的に学習する
  • ただし、予想に頼りすぎないこと(予想外のテーマが出題されることもある)
  • すべてのテーマの基本は押さえた上で、重点テーマを深掘りする

効果的な答案練習の方法

答案練習の基本ステップ

  1. 条文暗記(インプット) – 基準の条文を繰り返し読み、書く – 重要な定義・要件は一字一句正確に暗記する

  2. 答案構成の練習(構成力) – 問題を読み、いきなり書き始めずに5〜10分で答案構成を考える – 構成メモを作成する習慣をつける

  3. 実際に書く練習(アウトプット) – 手書きで2時間通して書く練習を定期的に行う – 実際に書くと「暗記したつもり」の部分が出てこないことがわかる

  4. 添削・振り返り(改善) – 書いた答案を自分で読み返し、基準と照合する – 可能であれば、受験仲間や予備校で添削を受ける

答案練習の頻度とスケジュール

時期 練習頻度 練習内容
試験6か月前 月2回 テーマ別に答案構成の練習
試験3か月前 週1回 実際に手書きで答案を書く
試験1か月前 週2〜3回 本番形式の模擬試験(時間制限あり)
直前期 毎日 条文暗記の確認+短時間の答案構成練習

演習問題の練習方法

演習問題の対策としては、以下の方法が効果的です。

  • 計算パターンの体系的な整理:各手法の計算手順をフローチャートにまとめる
  • 電卓の操作練習:計算スピードと正確性を向上させる
  • 過去問の繰り返し:同じ問題を3回以上解き、計算手順を体に覚えさせる
  • 時間を計って解く:本番と同じ時間制限で練習する

よくある答案の失敗パターン

失敗パターン 対策
条文が不正確 暗記の精度を上げる(音読・書写の反復)
答案構成が散漫 書く前に必ず構成メモを作る
時間配分の失敗 模擬演習で時間感覚を養う
趣旨が書けない 基準の各規定について「なぜ」を考える習慣をつける
計算ミス 検算の習慣をつける、途中計算を省略しない

まとめ

令和5年論文式試験・鑑定理論の分析ポイントを整理します。

  • 各論の類型別評価収益還元法の深い理解が問われた
  • 答案では類型の定義を正確に引用し、適用手法の根拠を明示する
  • 出題サイクルは2〜3年で、三方式・収益還元法は特に高頻度
  • 令和6年では趣旨を論じる力が問われる方向へ変化
  • 答案練習は手書きで時間を計って行うことが最も効果的
  • 演習対策は計算パターンの反復電卓操作の練習が不可欠
  • 直近5年の出題傾向を把握し、出題サイクルを意識した学習を

論文式試験は暗記だけでは突破できません。暗記→構成力→論述力→時間管理のすべてを鍛えることが合格への道です。計画的に練習を積み重ねましょう。