建付減価とは

不動産鑑定士試験において、建付減価は建付地の鑑定評価における中心的な概念です。建付地とは既に建物等が存在する土地ですが、その建物が土地の最有効使用に合致していない場合、更地としての価格よりも低い価格が形成されます。この差額を建付減価といい、建物の存在が土地の潜在的な価値を十分に発揮させていないことの経済的な表れです。

建付地とは、建物等の用に供されている敷地で建物等及びその敷地が同一の所有者に属している宅地をいう。

― 不動産鑑定評価基準 総論第2章


建付地と更地の概念の違い

更地の特徴

更地とは、建物等が存在せず、かつ使用収益を制約する権利が付着していない宅地をいいます。更地は最有効使用を自由に選択できる状態にあり、その価格は最有効使用を前提として最も高く形成されます。

建付地の特徴

建付地は、既に建物が存在する土地です。建物の存在により、土地の使用方法が現在の建物用途に限定されるため、必ずしも最有効使用が実現されているとは限りません。

項目 更地 建付地
建物 なし あり(同一所有者)
使用の自由度 最大(最有効使用を自由に選択) 制約あり(現在の建物に依存)
価格水準 最も高い(基準となる価格) 更地と同等か、それ以下
権利関係 完全な所有権 完全な所有権(ただし建物が存在)

建付減価が生じるメカニズム

建付減価の定義

建付減価とは、建付地の価格が更地としての価格を下回る場合の、その差額をいいます。建付地において、現存する建物の用途・規模・構造等が最有効使用に合致していないときに発生します。

建付減価 = 更地としての価格 − 建付地としての価格

建付減価が生じる要因

建付減価が生じる主な要因は以下の通りです。

要因 具体的な内容
用途の不適合 建物の用途が最有効使用と異なる 商業地域に低層住宅が存在
規模の不適合 容積率の未消化 容積率600%の地域で200%しか使用していない
建物の老朽化 建替えが必要だが取壊し費用がかかる 築50年で大規模修繕が不経済な建物
配置の不適合 建物配置が不合理 敷地の有効利用を妨げる配置

建付減価が生じない場合

建物が土地の最有効使用に合致している場合は、建付減価は生じません

  • 商業地域で容積率を十分に活用した事務所ビルの敷地
  • 住宅地域で標準的な戸建住宅が建築されている敷地
  • 新築直後で建物の効用が最大限に発揮されている場合

この場合、建付地の価格 = 更地の価格となります(理論上)。


建付減価の類型と具体例

類型1:容積率の未消化

最も典型的な建付減価のケースです。

項目 内容
用途地域 商業地域
指定容積率 800%
現況建物 3階建店舗(容積率240%
土地面積 200m2
更地価格 2億円

この場合、更地であれば容積率800%を活用して高層ビルを建築できますが、3階建の店舗では容積率の30%しか使用していません。

建付地としての価格 ≒ 1億6,000万円(概算)
建付減価 ≒ 4,000万円(更地価格の20%相当)

ただし、建付減価の額は画一的に決まるものではなく、取壊し費用、建替えの実現可能性、現況建物の残存耐用年数等を総合的に考慮して判定します。

類型2:用途の不適合

項目 内容
用途地域 近隣商業地域
最有効使用 中層の店舗兼事務所ビル
現況建物 戸建住宅(築25年)
更地価格 1億2,000万円

住宅地域から近隣商業地域に用途変更された地域で、周辺が商業施設化する中で戸建住宅が残存している場合などが該当します。

類型3:建物の老朽化

項目 内容
現況建物 築50年の木造住宅
建物の状態 使用可能だが大規模修繕は不経済
最有効使用 取壊して新築
取壊し費用 300万円

この場合、建付減価は少なくとも取壊し費用相当額となりますが、実際にはこれに加えて立退き期間のロス廃棄物処理費用なども考慮されます。


建付減価の算定方法

基本的な考え方

建付減価の算定には、以下の2つのアプローチがあります。

アプローチ 方法 特徴
控除法 更地価格 − 建付地価格 = 建付減価 結果として算出される
積上法 取壊し費用 + 逸失利益 + 廃棄物処理費用等 減価の内訳を積み上げる

控除法の算定プロセス

  1. 更地としての価格を求める(最有効使用を前提)
  2. 建付地としての価格を求める(現況建物を前提とした収益価格等)
  3. 差額が建付減価
更地価格       :2億円
建付地価格     :1億6,000万円
建付減価       :4,000万円(更地価格の20%)

積上法の構成要素

構成要素 内容 具体例
取壊し費用 既存建物の解体費用 1,500万円
取壊しに伴う逸失利益 解体期間中の収益機会の喪失 500万円
廃棄物処理費用 アスベスト除去等の特殊費用 200万円
立退き費用 テナントがいる場合の立退料 800万円
建付減価の合計 3,000万円

建付増価の可能性

建付増価とは

まれに、建物の存在が土地の価値を高めるケースがあります。これを建付増価と呼ぶことがあります(基準上の正式な用語ではありません)。

  • 歴史的建造物が存在し、当該建物が地域のランドマークとして価値を有する場合
  • 既存不適格建築物で、現行法では建築できない有利な建物が建っている場合(容積率の緩和前に建築された大規模建物等)

ただし、このようなケースは極めて限定的であり、一般的には建物の存在は土地の価値に対してニュートラルか、マイナスの影響を与えます。


建付減価と他の減価要因との関係

減価の3要因との関係

不動産の減価の3要因は、物理的減価、機能的減価、経済的減価です。建付減価は主に機能的減価と経済的減価に関連します。

減価の種類 建付減価との関係
物理的減価 建物の老朽化は取壊し費用の増大を通じて建付減価に影響
機能的減価 建物の用途・規模の不適合が建付減価の主因
経済的減価 市場環境の変化により最有効使用が変わり建付減価が発生

複合不動産の評価との関係

複合不動産(土地+建物の一体)の評価では、建物と土地をそれぞれ評価する方法と、一体として評価する方法があります。建付減価は、一体として評価する方法で特に重要な概念となります。

複合不動産の価格 = 建付地の価格 + 建物の価格
                 =(更地価格 − 建付減価)+ 建物の価格

具体的な算定例

ケーススタディ

前提条件 内容
所在 都心の商業地域
土地面積 500m2
指定容積率 800%
現況建物 築35年の5階建事務所ビル(容積率300%)
更地価格 5億円
現況建物の収益性 年間純収益2,000万円、空室率20%

ステップ1:更地の最有効使用の判定

容積率800%を活用した10階建以上の事務所ビルの敷地が最有効使用です。

ステップ2:建付地の価格の査定

現況建物を前提とした収益価格を求めます。

年間純収益    :2,000万円
還元利回り    :5.5%(築古・空室リスクを反映)
建物+土地の収益価格 :約3億6,400万円
建物価格控除  :△3,000万円
建付地の価格  :約3億3,400万円

ステップ3:建付減価の算定

更地価格     :5億円
建付地の価格 :3億3,400万円
建付減価     :1億6,600万円(更地価格の約33%)

この建付減価は、容積率の大幅な未消化(300%/800%)と建物の老朽化が主因です。


試験での出題ポイント

短答式試験

不動産鑑定士の短答式試験では、以下の論点が出題されます。

  • 建付地の定義:建物等の用に供されている敷地で、建物等及びその敷地が同一の所有者に属している宅地
  • 建付減価が生じる条件:最有効使用と現況利用が一致しないこと
  • 更地価格との関係:建付地の価格 ≦ 更地の価格(等号は最有効使用に合致する場合)
  • 容積率の未消化:典型的な建付減価のケース

論文式試験

論文式試験では、建付減価の概念を体系的に論述する能力が求められます。

  • 建付地と更地の定義の違いから出発し、建付減価の概念を導く
  • 最有効使用の判定との関連を論述する
  • 建付減価が生じる具体的な要因を列挙し、説明する
  • 建付減価の算定方法(控除法と積上法)を論述する

暗記のポイント

  1. 建付地の定義 — 建物等の用に供されている敷地で、建物等及びその敷地が同一の所有者に属している宅地
  2. 建付減価の発生条件 — 現況建物が土地の最有効使用に合致していないこと
  3. 建付減価の主因 — 容積率の未消化、用途の不適合、建物の老朽化
  4. 更地との関係 — 建付地の価格 = 更地の価格 − 建付減価
  5. 建付減価が生じない場合 — 建物が最有効使用に合致しているとき

まとめ

建付減価は、建物の存在が土地の最有効使用を制約することによって生じる価格の低下です。容積率の未消化、用途の不適合、建物の老朽化が主な要因であり、更地の価格と建付地の価格の差額として算定されます。建付減価を理解するためには、最有効使用の判定更地の鑑定評価の知識が前提となります。

建付地の評価は、建付地の鑑定評価として基準に規定されています。建付減価の概念をしっかりと理解した上で、具体的な評価手法の学習に進みましょう。