建付地の鑑定評価とは

建付地とは、建物等の用に供されている敷地で、建物等及びその敷地が同一の所有者に属している宅地をいいます。不動産鑑定士試験において、建付地は更地と並ぶ重要な不動産の類型です。更地と異なり、現に建物が存在していることが土地の価格に影響を与える点が最大の特徴です。この「影響」がプラスになる場合(建付増価)もマイナスになる場合(建付減価)もあり、その判断が建付地の評価の核心です。

建付地とは

定義

建付地とは、建物等の用に供されている敷地で、建物等及びその敷地が同一の所有者に属している宅地をいう。

― 不動産鑑定評価基準 各論第1章第1節

建付地の要件を整理すると、以下の3点です。

  1. 建物等が存在する:現に建物等が建築されている敷地であること
  2. 一体利用:建物等の用に供されていること(建物の敷地として利用されている)
  3. 同一所有者:建物等とその敷地が同一の所有者に属していること

建付地に該当する例

  • 自宅の敷地(自用の建物及びその敷地の場合の土地部分)
  • 賃貸マンションの敷地(貸家及びその敷地の場合の土地部分)
  • 事務所ビルの敷地(自用または賃貸)
  • 工場の敷地

更地との違い

建付地と更地の違いは、鑑定理論の基本中の基本です。

比較表

項目 更地 建付地
定義 建物等の存しない宅地(使用収益を制約する権利なし) 建物等の用に供されている宅地(同一所有者)
建物の有無 なし あり
最有効使用 更地としての最有効使用を前提 現在の建物利用との関係を考慮
権利の制約 なし 建物の存在による事実上の制約
市場性 高い(用途の選択肢が広い) 建物の状態・用途により変動
価格水準 基本的な指標 更地価格以下になることが多い(建付減価の場合)

更地の評価については更地の鑑定評価を参照してください。

最有効使用との関係

建付地の評価で最も重要な概念は、最有効使用との関係です。

  • 現在の建物利用が最有効使用に合致している場合:建付地の価格は更地価格と等しくなる(建付減価なし)
  • 現在の建物利用が最有効使用に合致していない場合:建付地の価格は更地価格より低くなる(建付減価が生じる)
  • 現在の建物利用が更地の最有効使用を超える価値を生む場合:建付地の価格が更地価格を上回る可能性がある(建付増価)

建付減価の考え方

建付減価とは

建付減価とは、現に存する建物の利用が、更地としての最有効使用と比較して劣っている場合に、土地の価格が更地価格よりも低くなる現象をいいます。

建付減価が生じる典型的なケース

ケース 具体例
建物の用途が最有効使用と異なる 商業地域に低層の木造住宅が建っている
建物の規模が過小 容積率400%の地域に2階建ての建物しかない
建物の老朽化 築40年超で取壊しが合理的だが、まだ使用中
建物の配置が不適切 敷地の有効利用を妨げる配置になっている

建付減価の算定

建付減価は以下のように考えます。

建付地価格 = 更地価格 - 建付減価額
建付減価額 = 取壊し費用 - 発生材価格 + 立退料等 + 工期中の逸失利益等

ただし、建付減価額の算定は必ずしもこの式だけで求められるものではなく、市場の実態を踏まえた総合的な判断が必要です。

建付増価の可能性

建付増価とは

建付増価とは、現に存する建物の利用が特に優れているために、土地の価格が更地価格を上回る現象をいいます。

建付増価が生じる可能性があるケース

  • 現在の建物が高い収益を上げており、かつ今後も長期間にわたって収益が見込める場合
  • 建物が地域のランドマーク的な存在で、土地の価値を高めている場合
  • 現行法規制下では建築できない建物が既存不適格として存続しており、その建物の存在が土地の価値を高めている場合

注意:建付増価が生じるケースは限定的であり、一般的には建付地の価格は更地価格以下となることが多いとされています。

建付地の評価手法

基本的な考え方

建付地の価格は、更地の価格を基準として、建物の存在による修正(建付減価または建付増価)を行って求めるのが基本です。

具体的な手法

1. 更地価格を求める

まず、対象地を更地と仮定した場合の価格を求めます。三方式のうち、以下の手法を適用します。

2. 建付減価(増価)を判定する

現在の建物利用と最有効使用を比較し、建付減価の有無と程度を判断します。

  • 最有効使用と合致 → 建付減価なし(建付地価格 = 更地価格)
  • 最有効使用と不合致 → 建付減価を算定
  • 最有効使用を超える価値 → 建付増価を検討

3. 建付地の価格を決定する

建付地価格 = 更地価格 - 建付減価額(+ 建付増価額)

建物及びその敷地の評価との関係

実際の鑑定評価では、建付地単独で評価するケースは少なく、建物及びその敷地として一体評価する場合が多くなります。建付地の概念は、建物及びその敷地の評価における土地部分の理解に不可欠です。

具体例で理解する建付地

ケース1:建付減価が生じる例

  • 所在:商業地域(容積率600%)
  • 現況:築35年の3階建て事務所ビル(延床面積は容積率の50%程度しか使用していない)
  • 最有効使用:10階建て以上の高層オフィスビル

この場合、現在の建物利用は最有効使用に大きく劣るため、相当額の建付減価が生じます。更地としての活用可能性と比較して、現在の低層利用では土地のポテンシャルを活かしきれていないためです。

ケース2:建付減価が生じない例

  • 所在:住宅地域(容積率200%、建蔽率60%)
  • 現況:築5年の2階建て戸建住宅(土地を適切に利用)
  • 最有効使用:戸建住宅の敷地

この場合、現在の建物利用が最有効使用に合致しているため、建付減価は生じません。建付地の価格は更地価格と等しくなります。

ケース3:取壊し最有効使用の例

  • 所在:駅前商業地域
  • 現況:築50年の2階建て木造店舗(老朽化が著しい)
  • 最有効使用:高層商業ビルの敷地

この場合、建物を取り壊して更地にした上で再開発するのが最有効使用と判断されます。取壊し費用等を控除した価格が建付地の価格となります。

建付減価の具体的な計算例

上記ケース1の商業地域の事例を数値化して示します。

項目 金額
更地価格(容積率600%を前提とした最有効使用) 500,000,000円
(-)建物の取壊し費用 △15,000,000円
(-)立退料(テナント入居中の場合) △10,000,000円
(-)工事期間中の逸失利益(6ヶ月分の機会損失) △5,000,000円
= 建付地価格 470,000,000円
建付減価額 30,000,000円
建付減価率 6%

このように、建付減価の算定では取壊しコストだけでなく、立退料工事期間中の逸失利益も考慮する必要があります。

建付地の鑑定評価額は、更地の価格をもとに当該建付地の更地としての最有効使用との格差、更地化の難易の程度等敷地と建物等との関連における個別的要因を考慮して求めるものとする。

― 不動産鑑定評価基準 各論第1章第1節

試験での出題ポイント

建付地は鑑定理論の論文式試験で定番のテーマです。

出題されやすいポイント

  1. 建付地の定義を正確に書けるか
  2. 更地との違いを明確に説明できるか
  3. 最有効使用との関係を論述できるか(建付減価の判断基準)
  4. 建付減価の考え方を具体的に説明できるか
  5. 建物及びその敷地との関係を整理できるか

答案作成のポイント

  • 定義 → 更地との違い → 最有効使用との関係 → 建付減価の判断 → 評価手法の順で論述
  • 「現在の建物利用が最有効使用に合致しているかどうか」が建付地の評価の核心であることを強調
  • 具体例を交えて論述すると説得力が増す

まとめ

建付地の鑑定評価について、要点を整理します。

  • 建付地とは:建物等の用に供されている敷地で、同一所有者に属する宅地
  • 更地との違い:建物の存在が土地の価格に影響を与える点
  • 最有効使用との関係:合致していれば減価なし、合致していなければ建付減価が生じる
  • 建付減価:現在の建物利用が最有効使用に劣る場合に生じる土地価格の低下
  • 建付増価:限定的だが、建物の存在が土地の価値を高めるケースもある
  • 評価の基本:更地価格を求め、建付減価(増価)を判定して建付地価格を決定

建付地は底地借地権と並ぶ各論の重要テーマです。建物及びその敷地の評価と合わせて体系的に理解しましょう。