物理的減価・機能的減価・経済的減価の違い
減価の3要因とは
物理的減価・機能的減価・経済的減価は、原価法における減価修正で考慮すべき3つの減価要因です。不動産鑑定士試験では、減価修正の適用に関する問題で頻出の論点です。
減価の要因は、物理的要因、機能的要因及び経済的要因に分けられる。
― 不動産鑑定評価基準 総論第7章第1節
わかりやすく言うと
建物が古くなって価値が下がる原因は、大きく3つに分けられます。
- 物理的減価: 建物自体が古くなること(壁にヒビ、屋根の劣化など)
- 機能的減価: 建物の機能が時代遅れになること(間取りが不便、設備が旧式など)
- 経済的減価: 周辺環境の変化で価値が下がること(隣に嫌悪施設ができた、需要がなくなったなど)
建物の「体」「機能」「環境」の3つの視点から価値の低下を分析するイメージです。
身近な具体例
例1: 物理的減価 ― 築30年のマンション
築30年のマンションでは、外壁のタイルが剥がれ始め、配管も老朽化しています。雨漏りも発生しています。これらは建物そのものの経年劣化による価値の低下であり、物理的減価に該当します。修繕工事を行えば一定程度は回復可能です。
例2: 機能的減価 ― バブル期のオフィスビル
バブル期に建てられたオフィスビルは、豪華な大理石ロビーがある一方、OAフロア(床下配線)が未整備で、天井高も今の基準では低い場合があります。現代のオフィスニーズに合わない設計は機能的減価です。また、エレベーターの台数や容量が足りないことも、このカテゴリに入ります。
例3: 経済的減価 ― 工場撤退後の住宅地
大手メーカーの工場が撤退した町では、人口が減少し、商店街もシャッター街になっています。この地域にある住宅は、建物自体は健全でも、周辺環境の悪化によって需要が減少し、価値が下がります。これが経済的減価です。
3要因の比較
| 要因 | 原因 | 具体例 | 回復の可能性 |
|---|---|---|---|
| 物理的減価 | 経年劣化、損傷、老朽化 | 外壁のひび割れ、配管の腐食 | 修繕で回復可能なものが多い |
| 機能的減価 | 設計・機能の陳腐化 | OAフロア未対応、旧式の間取り | 改修で回復可能な場合もある |
| 経済的減価 | 外部環境の変化 | 隣に嫌悪施設、需要の減少 | 回復が困難なことが多い |
鑑定評価における位置づけ
減価の3要因は、原価法における減価修正の中核をなす概念です。
- 耐用年数に基づく方法: 主に物理的減価を反映する方法
- 観察減価法: 3要因すべてを実地観察によって把握する方法
- 両者の併用: 基準は原則として、耐用年数に基づく方法と観察減価法の併用を求めている
実務では、物理的減価は比較的定量化しやすいのに対し、機能的減価や経済的減価は個別的な判断が求められます。
関連する用語との違い
| 用語 | 意味 | 違いのポイント |
|---|---|---|
| 物理的減価 | 建物自体の劣化 | 建物の「体」の問題 |
| 機能的減価 | 設計・機能の陳腐化 | 建物の「性能」の問題 |
| 経済的減価 | 外部環境の変化 | 建物の「外」の問題 |
| 減価修正 | 再調達原価から減価額を控除する手続き | 3要因を総合的に処理する手法 |
試験での出題ポイント
短答式試験
- 3要因の分類: 「OAフロア未対応による減価は物理的減価である」→ 誤り(機能的減価)
- 経済的減価の回復可能性: 経済的減価は建物自体の問題ではないため、建物の修繕では回復できない点が問われる
論文式試験
- 「減価修正における3つの減価要因の意義と具体例を論述せよ」は定番の出題
- 各要因が回復可能(curable)か回復不可能(incurable)かの分類まで踏み込めると高評価
まとめ
物理的減価(建物の劣化)、機能的減価(機能の陳腐化)、経済的減価(外部環境の悪化)は、原価法における減価修正の基盤です。3要因を正確に区別し、具体例とともに説明できるようにしておくことが、試験対策として不可欠です。減価修正や再調達原価の記事と併せて理解を深めましょう。