配分法と開発法|土地の評価手法
配分法と開発法の概要
土地の鑑定評価においては、取引事例比較法による比準価格が最も基本的ですが、取引事例が乏しい場合や特殊な土地の評価においては、配分法や開発法が重要な役割を果たします。不動産鑑定士試験では、両手法の意義と適用場面の理解が求められます。
鑑定評価基準では、土地の評価にあたって複数の手法を適用すべきとしています。
宅地の鑑定評価額は、原則として比準価格及び収益価格を関連づけて決定するものとする。再調達原価が把握できる場合には、積算価格をも関連づけて決定すべきである。当該更地の面積が近隣地域の標準的な土地の面積に比べて大きい場合等においては、開発法による価格をも比較考量して決定するものとする。
― 不動産鑑定評価基準 各論第1章第1節
配分法とは
定義と意義
配分法は、複合不動産(建物及びその敷地)の取引事例から土地の価格を抽出する手法です。取引事例比較法の一種として位置づけられます。
配分法は、まず多数の取引事例を収集して適切な事例の選択を行い、これらに係る取引価格に必要に応じて事情補正及び時点修正を行い、かつ、地域要因の比較及び個別的要因の比較を行って求められた価格を比較考量し、これによって対象不動産の試算価格を求める手法である取引事例比較法の一つであり、複合不動産の取引事例について、当該取引事例の取引価格から、建物等の価格を控除して土地の価格を求めるものである。
― 不動産鑑定評価基準 総論第7章第1節
つまり、建物付き土地の取引価格から建物部分の価格を差し引くことで、間接的に土地の価格を求めるものです。
配分法の計算構造
配分法の基本的な計算式は以下の通りです。
土地価格 = 複合不動産の取引価格 − 建物の価格
建物の価格は、原価法の考え方に基づき、再調達原価から減価修正を行って求めます。
計算例:配分法による土地価格の算定
築20年のRC造事務所ビル付き土地の取引事例について、土地価格を算定します。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 複合不動産の取引価格 | 2億円 |
| 建物の再調達原価 | 1億5,000万円 |
| 経過年数 | 20年 |
| 経済的耐用年数 | 50年 |
| 建物の減価率 | 40%(20年/50年) |
| 建物の減価額 | 6,000万円 |
| 建物の価格 | 9,000万円 |
| 土地価格 | 1億1,000万円 |
建物の価格 = 1億5,000万円 − 6,000万円 = 9,000万円
土地価格 = 2億円 − 9,000万円 = 1億1,000万円
配分法の留意点
配分法を適用する際の留意点は以下の通りです。
- 建物価格の推定精度が土地価格の精度を左右する — 建物の再調達原価や減価額の見積もりに誤りがあると、土地価格にそのまま影響する
- 築年数の古い建物では精度が低下しやすい — 減価額の判定が難しくなる
- 更地の取引事例が豊富な地域では、あえて配分法を用いる必要性は低い
- 取引事例の選択に当たっては、事情補正と時点修正を適切に行う
配分法の精度に関する考察
配分法の精度は建物の築年数と密接に関係します。
| 建物の築年数 | 配分法の精度 | 理由 |
|---|---|---|
| 新築〜築5年 | 高い | 建築費データが入手しやすく、減価額も小さい |
| 築10〜20年 | 中程度 | 減価修正の判断にある程度の幅が生じる |
| 築30年以上 | 低い | 減価額の判定が困難。観察減価法の比重が大きくなる |
| 取壊し最有効使用 | 不適切 | 建物に経済的価値がないため、配分法は不適 |
取壊し最有効使用(建物を取り壊して更地として利用するのが最有効使用である場合)の事例では、配分法ではなく複合不動産の取引価格から取壊し費用を加算して更地価格を推定する方法が適用されます。
開発法とは
定義と意義
開発法は、更地を最有効使用の建物の敷地として開発(建築)することを前提に、開発後の不動産の価格から開発に伴う費用・利益等を控除して土地の価格を求める手法です。
開発法は、対象不動産が更地である場合において、当該更地に最有効使用の建物の建築を想定し、販売総額から通常の建物建築費相当額及び発注者が直接負担すべき通常の付帯費用を控除して求められる価格について、当該建物の建築工事の着工時点に割り戻すことにより対象不動産の試算価格を求めることができるものとする。
― 不動産鑑定評価基準 総論第7章第1節
開発法は、主に以下のような場合に適用されます。
- 近隣地域の標準的な土地の面積に比べて大きい土地(マンション用地等)
- 素地(宅地見込地等)の評価
- 取引事例が乏しい大規模画地
開発法の計算構造
開発法の基本的な考え方は以下の通りです。
土地価格 = 開発後の不動産の価格(販売総額)
− 建物建築費
− 付帯費用(設計料、許認可費用、金利等)
− 開発利益
これを現在価値に割り戻すことで、価格時点における土地の適正な価格を求めます。
計算例:マンション用地の開発法
敷地面積1,000m²の更地に、分譲マンション(50戸)の建築を想定した場合。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 販売総額(50戸 × 平均5,000万円) | 25億円 |
| 建物建築費 | 15億円 |
| 設計・監理費 | 1億円 |
| 販売費用(広告費・仲介手数料等) | 1億5,000万円 |
| 開発期間中の金利 | 5,000万円 |
| 開発利益 | 2億円 |
| 土地価格 | 5億円 |
土地価格 = 25億円 − 15億円 − 1億円 − 1.5億円 − 0.5億円 − 2億円
= 5億円
計算例:戸建分譲用地の開発法
敷地面積2,000m²の更地に、戸建住宅10区画の分譲を想定した場合。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 販売総額(10区画 × 2,000万円) | 2億円 |
| 造成費(道路築造・インフラ整備等) | 3,000万円 |
| 販売費用 | 1,000万円 |
| 開発期間中の金利 | 500万円 |
| 開発利益 | 2,500万円 |
| 土地価格(素地価格) | 1億3,000万円 |
開発法の賃貸想定型
上記の計算例は分譲想定型の開発法ですが、賃貸用建物を想定した賃貸想定型の開発法もあります。
賃貸想定型では、開発後に賃貸用不動産として運用する場合の収益価格から建築費等を控除して土地価格を求めます。
土地価格 = 開発後の賃貸不動産の収益価格 − 建物建築費 − 付帯費用
計算例:賃貸マンション用地
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 開発後の賃貸マンションの収益価格(直接還元法) | 3億円 |
| 建物建築費 | 1億8,000万円 |
| 設計・監理費・金利等 | 2,000万円 |
| 土地価格 | 1億円 |
賃貸想定型は、対象地域で分譲需要よりも賃貸需要が主体である場合に適用されます。
配分法の適用が有効な場面
配分法は、以下のような場面で特に有効です。
- 既成市街地で更地の取引事例が極めて少ない地域 — 都心の商業地等では、更地で取引されることは稀であり、ほとんどが建物付きで取引される
- 更地の取引事例がない用途地域 — 工業専用地域等、更地取引が存在しない地域
- 取引事例比較法の検証手段として — 更地の比準価格を別の角度から検証したい場合
配分法を適用する際は、複数の取引事例から配分法による土地価格を算出し、それらを比較考量して最終的な土地価格を判断します。1件の事例だけに依拠することは避けるべきです。
配分法と開発法の比較
| 項目 | 配分法 | 開発法 |
|---|---|---|
| 分類 | 取引事例比較法の応用 | 独自の手法 |
| 出発点 | 複合不動産の取引価格 | 開発後の販売総額 |
| 控除するもの | 建物の価格 | 建築費・付帯費用・開発利益 |
| 適用場面 | 更地の取引事例が乏しい場合 | 大規模画地、素地 |
| 前提条件 | 複合不動産の取引事例が必要 | 最有効使用の建物を想定 |
| 精度の鍵 | 建物価格の推定精度 | 販売総額・建築費の見積もり精度 |
開発法の留意事項
想定する建物の設定
開発法では、最有効使用の建物を想定します。想定する建物が合理的でなければ、算出される土地価格も合理性を欠きます。
考慮すべき事項は以下の通りです。
- 用途地域・容積率等の法的規制 — 建築可能な規模の上限
- 近隣地域の標準的使用 — 周辺の開発動向との整合性
- 需要の見通し — 分譲マンションか、賃貸か、商業施設かの判断
開発利益の設定
開発利益は、開発事業に伴うリスクに対する報酬です。設定に当たっては以下を考慮します。
- 販売総額に対する利益率として設定する方法が一般的
- 通常販売総額の10〜15%程度が目安
- 市場リスクが高い場合は高めに、需要が旺盛な地域では低めに設定
開発期間と金利
開発には時間がかかるため、開発期間中の資金コスト(金利) を考慮する必要があります。
- 用地取得から販売完了までの期間
- 借入金利率
- 資金投下のタイミング
計算例:金利の考慮
用地取得費5億円を全額借入(金利2.0%)で賄い、開発期間が2年間の場合。
金利コスト = 5億円 × 2.0% × 2年 = 2,000万円
(実際には資金投下のタイミングに応じて計算するが、簡便法として表示)
大規模開発ほど開発期間が長くなるため、金利負担が土地価格に与える影響は大きくなります。
開発法と取引事例比較法の整合性
開発法で求めた価格は、取引事例比較法で求めた比準価格と整合的であるべきです。両者に大きな乖離がある場合は、以下の点を再検討する必要があります。
- 想定した建物の設定は合理的か
- 販売総額の見積もりは市場実態に即しているか
- 建築費や開発利益率は妥当か
- 取引事例の選択に問題はないか
複数の手法による検証は鑑定評価の基本原則であり、開発法の結果を単独で採用するのではなく、他の手法との比較検討が不可欠です。
試験での出題ポイント
短答式試験
- 配分法の定義と取引事例比較法との関係
- 開発法の適用場面(大規模画地、素地)
- 開発法で控除する項目の正誤判定
- 配分法と開発法の違い
論文式試験
- 開発法の計算構造と意義を論述する問題
- 大規模画地の評価における開発法の位置づけ
- 配分法の意義と留意事項の論述
- 更地の評価において適用すべき手法の体系的説明
暗記のポイント
- 配分法: 複合不動産の取引価格 − 建物価格 = 土地価格
- 開発法: 販売総額 − 建築費 − 付帯費用 − 開発利益 = 土地価格
- 開発法は標準的な面積より大きい土地に特に有効
- 開発法では最有効使用の建物を想定する
- 配分法は取引事例比較法の一種として位置づけられる
まとめ
配分法と開発法は、更地の取引事例が直接入手しにくい場面で土地価格を求めるための重要な手法です。配分法は複合不動産の取引価格から建物部分を控除するアプローチであり、開発法は最有効使用の開発を想定して逆算するアプローチです。
特に開発法は、大規模画地やマンション用地の評価において実務的にも非常に重要な手法です。試験では計算構造の理解と、適用場面の判断が問われます。
配分法と開発法は、いずれも直接的な取引事例が乏しい場面における重要な補助手法として、鑑定評価の実務と試験の双方で高い重要性を持っています。
関連記事として、取引事例比較法の全体像や最有効使用の判定も併せて確認してください。