建付地の配分法と控除法|価格の求め方
建付地の価格を求める方法の概要
建付地とは、建物等の用に供されている宅地で建物等と結合している状態における当該宅地をいいます。不動産鑑定士試験において、建付地の価格を求める方法として配分法(割合法)と控除法は頻出の論点です。これらの方法は、更地の価格と並んで土地の価格評価の基礎を成すものであり、複合不動産(建物とその敷地)の取引価格や収益価格から土地部分の価格を把握する手法として重要な位置づけにあります。
建付地とは、建物等の用に供されている宅地で、建物等及びその敷地が同一の所有者に属している場合における当該宅地をいう。
― 不動産鑑定評価基準 総論第2章
建付地評価の基本的な考え方
建付地の特徴
建付地は、更地とは異なり既に建物が存在している状態の土地です。このため、建付地の評価には以下のような特徴があります。
| 特徴 | 内容 |
|---|---|
| 建物との結合 | 建物と土地が一体として効用を発揮している |
| 最有効使用との関係 | 現況の建物が最有効使用に合致しているかが価格に影響する |
| 減価の可能性 | 現況建物が最有効使用に合致しない場合、更地価格を下回ることがある |
| 独立鑑定評価の制約 | 建付地は複合不動産の構成要素であり、単独で取引されることは限定的 |
建付地価格の求め方の体系
鑑定評価基準及び留意事項では、建付地の価格を求める方法として以下の体系を示しています。
建付地の鑑定評価額は、更地の価格をもとに当該建付地の更地としての最有効使用との格差、更地化の難易の程度等敷地と建物等との関連を考慮して求めた価格を標準とし、配分法に基づく比準価格及び土地残余法による収益価格を比較考量して決定するものとする。
― 不動産鑑定評価基準 各論第1章第1節
この規定から、建付地の評価は更地価格をベースとする方法を標準としつつ、配分法と土地残余法を補助的に活用する構造であることがわかります。本記事では、このうち配分法と控除法に焦点を当てて解説します。
配分法(割合法)の概要
配分法とは
配分法とは、複合不動産(建物とその敷地)の取引価格から、土地と建物の構成割合(内訳割合)を用いて土地部分の価格を把握する方法です。「割合法」とも呼ばれます。
留意事項では、配分法について以下のように規定しています。
配分法は、複合不動産の取引事例について、土地と建物等の各構成部分の価格の割合によりそれぞれの価格を求める方法である。
― 不動産鑑定評価基準に関する実務指針(留意事項) 各論第1章
配分法の基本式
建付地の価格 = 複合不動産の取引価格 × 土地割合
ここで、土地割合とは複合不動産の価格に占める土地価格の構成比をいいます。
たとえば、建物とその敷地(複合不動産)の取引価格が1億円、土地割合が60%の場合、配分法による建付地の価格は以下のとおりです。
建付地の価格 = 100,000,000円 × 60% = 60,000,000円
土地割合の査定方法
配分法の精度は土地割合の査定精度に大きく依存します。土地割合の査定方法には以下のようなものがあります。
| 方法 | 内容 | 特徴 |
|---|---|---|
| 近隣地域の土地割合の援用 | 類似の複合不動産における土地割合を参考にする | 市場データに基づく客観性がある |
| 原価法的アプローチ | 土地の更地価格と建物の再調達原価から割合を算定 | 積算価格ベースの割合が得られる |
| 収益法的アプローチ | 土地に帰属する収益と建物に帰属する収益の割合から算定 | 収益性に基づく割合が得られる |
| 取引事例の分析 | 複合不動産の取引事例から土地割合を分析 | 直接的な市場データが得られる |
実務上は、複数の方法を併用して土地割合を査定することが望ましいとされています。
配分法の適用場面と留意点
適用が有効な場面
配分法は、以下のような場面で特に有効です。
- 更地の取引事例が少ない地域:都心部の商業地など、更地の取引がほとんどない地域では、複合不動産の取引事例から配分法で土地価格を把握することが有用
- 建物の再調達原価の把握が困難な場合:特殊な建物や古い建物で再調達原価の査定が困難な場合に、市場の取引割合から土地価格を把握できる
- 市場における土地割合のデータが豊富な場合:当該地域の複合不動産の取引が活発で、土地割合に関する信頼性の高いデータが得られる場合
適用上の留意点
配分法を適用する際には、以下の点に留意する必要があります。
- 土地割合は一定ではない:建物の築年数、規模、用途によって土地割合は大きく異なるため、対象不動産の特性に応じた割合を設定する必要がある
- 建物の経年による影響:建物の経年減価が進むと、相対的に土地割合は上昇する傾向がある
- 立地による差異:都心部と郊外では土地割合が大きく異なる(都心部は土地割合が高い傾向)
- 市場環境の変化:不動産市況の変動により土地割合も変動するため、価格時点に即した割合を設定する必要がある
土地割合の変動要因
| 要因 | 土地割合が高くなる場合 | 土地割合が低くなる場合 |
|---|---|---|
| 立地 | 都心・駅近 | 郊外・駅遠 |
| 建物の築年数 | 築古(減価が進行) | 新築・築浅 |
| 建物のグレード | 標準的な建物 | 高仕様・特殊建物 |
| 容積率の消化 | 低層利用(未消化) | 高層利用(充分に消化) |
| 地価水準 | 高い | 低い |
控除法の概要
控除法とは
控除法とは、複合不動産の取引価格から建物の価格を控除して土地部分の価格を把握する方法です。配分法が「割合」で按分するのに対し、控除法は建物の価格を直接算定して差し引く点が異なります。
控除法は、複合不動産の取引事例について、当該取引事例に係る建物等の価格を控除して土地の価格を求める方法である。
― 不動産鑑定評価基準に関する実務指針(留意事項) 各論第1章
控除法の基本式
建付地の価格 = 複合不動産の取引価格 − 建物の価格
ここで、建物の価格は原価法(積算法)により求めるのが一般的です。具体的には、建物の再調達原価を求め、そこから減価修正を行って建物の現在価格を算定します。
たとえば、複合不動産の取引価格が1億円、建物の積算価格(再調達原価−減価額)が3,500万円の場合、控除法による建付地の価格は以下のとおりです。
建付地の価格 = 100,000,000円 − 35,000,000円 = 65,000,000円
建物価格の算定方法
控除法における建物価格の算定は、以下のプロセスで行います。
- 再調達原価の査定:建物を再建築する場合の価格を、建築費指数や類似建物の建築費データから査定
- 減価修正:物理的減価、機能的減価、経済的減価を考慮して減価額を算定
- 建物現在価格の算定:再調達原価 − 減価額 = 建物現在価格
建物現在価格 = 再調達原価 × (1 − 減価率)
= 再調達原価 × 残価率
控除法の適用場面と留意点
適用が有効な場面
控除法は、以下のような場面で特に有効です。
- 建物の再調達原価が明確な場合:標準的な構造・仕様の建物で、再調達原価の査定が比較的容易な場合
- 建物の築年数が明確な場合:減価修正の根拠となる築年数・経過年数が明確で、減価率の査定が容易な場合
- 更地の取引事例が少ないが複合不動産の取引がある地域:配分法と同様に、複合不動産の取引データから土地価格を把握できる
適用上の留意点
控除法を適用する際には、以下の点に特に注意が必要です。
- 建物価格の査定精度が結果を左右する:控除法では建物価格を差し引くため、建物価格の査定誤差がそのまま土地価格の誤差となる
- 再調達原価の査定の困難さ:特殊な建物、大規模な建物、古い建物では再調達原価の査定が困難な場合がある
- 減価修正の不確実性:物理的減価は比較的客観的に把握できるが、機能的減価や経済的減価は主観的な判断要素を含む
- 付帯費用の取扱い:取引価格に含まれる仲介手数料、登記費用等の付帯費用の取扱いに注意が必要
控除法特有のリスク
控除法には、「引き算の誤差」が発生するリスクがあります。
【リスクの例】
複合不動産の取引価格:100,000,000円
建物の積算価格(真の値):35,000,000円
建物の積算価格(査定値):40,000,000円(5,000,000円の過大評価)
控除法による土地価格:100,000,000 − 40,000,000 = 60,000,000円
真の土地価格:100,000,000 − 35,000,000 = 65,000,000円
土地価格の誤差:5,000,000円(約7.7%の誤差)
このように、建物価格の査定誤差がそのまま同額の土地価格の誤差となるため、建物価格の査定精度を高めることが控除法の信頼性の鍵となります。
配分法と控除法の比較
両者の違いと使い分け
配分法と控除法は、いずれも複合不動産の取引価格から土地価格を把握する方法ですが、アプローチが異なります。
| 比較項目 | 配分法(割合法) | 控除法 |
|---|---|---|
| アプローチ | 割合による按分 | 建物価格の控除 |
| 必要データ | 土地割合のデータ | 建物の再調達原価・減価率 |
| 精度に影響する要素 | 土地割合の査定精度 | 建物価格の査定精度 |
| 適用しやすい場面 | 土地割合のデータが豊富な場合 | 建物価格の査定が容易な場合 |
| リスク | 割合の変動リスク | 引き算の誤差リスク |
併用の重要性
実務上は、配分法と控除法を併用することが望ましいとされています。両者の結果を照らし合わせることで、各方法の査定結果の妥当性を相互に検証できます。
たとえば、配分法で60,000,000円、控除法で65,000,000円という結果が得られた場合、両者の乖離が約8%であることから、概ね整合していると判断できます。一方、配分法で60,000,000円、控除法で80,000,000円のように大きな乖離がある場合は、いずれかの方法の前提条件に問題がある可能性があるため、再検証が必要です。
建付地評価の全体像における位置づけ
更地価格ベースの方法との関係
建付地の鑑定評価では、更地価格をベースとする方法が標準です。具体的には、更地価格に建付減価を行って建付地の価格を求めます。
建付地の価格 = 更地の価格 × (1 − 建付減価率)
建付減価は、現況の建物が最有効使用に合致しない場合に生じるものです。現況建物が最有効使用に合致している場合は、原則として建付減価はなく、建付地の価格は更地の価格と等しくなります。
配分法と控除法は、この更地価格ベースの方法を補完する位置づけにあります。更地の直接的な取引事例が乏しい場合に、複合不動産の取引データから土地価格を間接的に把握する方法として活用されます。
建付地の原価法的評価との関連
建付地の市場性を反映した原価の考え方とも関連があります。原価法で複合不動産の積算価格を求める際に、土地部分と建物部分の内訳を把握する必要がありますが、この内訳把握の手法として配分法・控除法の考え方が応用されます。
試験での出題ポイント
短答式試験
- 配分法の定義(割合による按分)と控除法の定義(建物価格の控除)の違い
- 配分法の基本式:建付地価格 = 複合不動産価格 × 土地割合
- 控除法の基本式:建付地価格 = 複合不動産価格 − 建物価格
- 建付地の評価方法の体系(更地価格ベースが標準、配分法・土地残余法を比較考量)
論文式試験
- 配分法と控除法のそれぞれの特徴・適用場面・留意点を論述させる問題
- 配分法における土地割合の査定方法を複数の観点から説明させる問題
- 控除法における建物価格査定の誤差が土地価格に与える影響を論述させる問題
- 建付地の評価方法全体の体系と各方法の位置づけを論述させる問題
暗記のポイント
- 配分法の基本式:建付地価格 = 複合不動産価格 × 土地割合
- 控除法の基本式:建付地価格 = 複合不動産価格 − 建物価格
- 配分法の鍵:土地割合の査定精度
- 控除法の鍵:建物価格(再調達原価・減価修正)の査定精度
- 建付地評価の標準:更地価格ベースの方法が標準、配分法と土地残余法を比較考量
まとめ
建付地の価格を求める配分法と控除法は、複合不動産の取引価格から土地部分の価格を間接的に把握する手法です。配分法は土地割合による按分、控除法は建物価格の直接控除という異なるアプローチを採りますが、いずれも更地の取引事例が乏しい場面で有効に機能します。建付地の評価全体としては更地価格をベースとする方法が標準であり、配分法と控除法はその補完的な位置づけにあります。両方法の特性と限界を理解し、必要に応じて併用することが、更地評価とともに土地評価の信頼性を高める鍵となります。
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