建付減価と市場性減価の違い
建付減価と市場性減価の違い
建付減価とは、建物と敷地の適応関係が悪いことに起因する減価であり、市場性減価とは、不動産の市場における売却可能性の低さに起因する減価です。不動産鑑定士試験では、どちらも原価法における減価修正の項目として問われますが、減価の原因がまったく異なる点が重要です。
わかりやすく言うと
- 建付減価: 「この土地にこの建物は合っていない」ことによる価値の低下
- 市場性減価: 「この不動産は売りにくい」ことによる価値の低下
建付減価は不動産の物理的・機能的な不適合が原因であり、市場性減価は市場における流動性の低さが原因です。
建付減価とは
定義と原因
建付減価は、建物と敷地の最有効使用が一致していないことによって生じる減価です。
建物及びその敷地に係る減価修正を行うに当たっては、[中略] 建物等と敷地の適応の状態を十分に把握すべきである。
― 不動産鑑定評価基準 総論第7章第1節
建付減価が生じるケース
| ケース | 具体例 |
|---|---|
| 敷地に対して建物が過小 | 容積率500%の商業地に2階建ての古い木造住宅が建っている |
| 敷地に対して建物が過大 | 低層住宅地に不釣り合いな大型マンションが建っている |
| 用途の不適合 | 住宅地に工場が残存している |
| 配置の不適合 | 敷地内での建物の配置が非効率で、残地が有効活用されていない |
建付減価の本質
建付減価の本質は、最有効使用との乖離です。もしその敷地を更地として最有効使用できれば得られたはずの価値と、現状の建付地としての価値の差が建付減価となります。
市場性減価とは
定義と原因
市場性減価は、不動産が持つ市場における売却困難性に起因する減価です。原価法で求めた積算価格が、市場で実際に成立する価格よりも高くなる場合に認識されます。
市場性減価が生じるケース
| ケース | 具体例 |
|---|---|
| 需要が極めて少ない | 過疎地域の大規模な工場跡地で買い手がほとんどいない |
| 用途が特殊すぎる | 特殊な設備を持つ工場で、汎用性が低い |
| 規模が市場に合わない | 市場では50坪程度の需要が中心なのに300坪の一団地 |
| 法的制約が大きい | 市街化調整区域にあり、開発許可が必要で転用が困難 |
| 心理的瑕疵 | 事故物件など、心理的な抵抗から買い手が限定される |
市場性減価の本質
市場性減価の本質は、原価法で算定した再調達原価ベースの価格と、市場で実現可能な価格との乖離です。コストアプローチでは物理的に健全でも、市場で買い手がつかなければ価格は低くなります。
両者の比較表
| 項目 | 建付減価 | 市場性減価 |
|---|---|---|
| 原因 | 建物と敷地の不適合 | 市場における売却困難性 |
| 着眼点 | 最有効使用との乖離 | 需要の量・流動性 |
| 判断基準 | 建物と敷地の物理的・機能的関係 | 市場動向・需給バランス |
| 解消方法 | 建替え・用途変更・取壊し | 値下げ・分割・用途転換 |
| 関連する手法 | 原価法の減価修正 | 原価法の減価修正(市場修正) |
身近な具体例
例1: 建付減価のケース
駅前の容積率600%の商業地に、築50年の2階建て木造アパートが建っています。周辺はオフィスビルやマンションが建ち並ぶ中、このアパートは明らかに敷地の潜在力を活かしきれていません。更地として売却すれば高値が付くものの、現状のアパートが建っている状態(建付地)では、建物の取壊し費用を差し引く必要があるうえ、最有効使用との乖離分が建付減価として認識されます。
例2: 市場性減価のケース
地方の山間部にある元保養所の建物があります。建物自体はRC造で躯体に問題はなく、原価法で計算すると相応の積算価格が算出されます。しかし、そもそも買い手がほとんど存在しない立地であるため、実際の市場で成立する価格は積算価格を大幅に下回ります。この積算価格と市場実勢との差額が市場性減価です。
減価の3要因との関係
鑑定評価基準では、減価の要因を物理的減価・機能的減価・経済的減価の3つに分類しています。建付減価と市場性減価はこの3要因とは別の切り口の概念です。
| 減価の分類 | 建付減価との関係 | 市場性減価との関係 |
|---|---|---|
| 物理的減価 | 直接の関係なし | 直接の関係なし |
| 機能的減価 | 建物と敷地の不適合は機能的減価に含まれる場合がある | 直接の関係なし |
| 経済的減価 | 建付減価は経済的観点からの減価でもある | 市場性の低さは経済的減価に含まれる場合がある |
減価の3要因との関係も含めて理解しておくと、論文式試験で体系的な論述が可能になります。
試験での出題ポイント
短答式試験
- 両者の区別: 「建付減価とは、不動産の市場性が低いことにより生じる減価をいう」→ 誤り(それは市場性減価の説明)
- 建付減価の原因: 「建付減価は建物の物理的劣化により生じる」→ 誤り(建物と敷地の不適合により生じる)
論文式試験
- 「原価法における減価修正について、建付減価と市場性減価の違いを説明し、それぞれの具体例を挙げて論述せよ」
- 最有効使用の概念と関連づけて論じることが高得点のポイント
暗記のポイント
- 建付減価: 建物と敷地の不適合 → 最有効使用との乖離が本質
- 市場性減価: 売却困難性 → 積算価格と市場実勢の乖離が本質
- 両者は減価の原因がまったく異なる: 物理的不適合 vs 市場の流動性
まとめ
建付減価は建物と敷地の不適合による減価、市場性減価は市場における売却困難性による減価であり、原因と着眼点がまったく異なります。原価法の減価修正において正確に区別できることが求められるほか、最有効使用の概念との関連も含めて体系的に理解しておくことが重要です。