令和6年短答式試験の出題傾向

令和6年(2024年)の短答式試験・鑑定理論科目は、不動産鑑定評価基準の留意事項からの出題が増加し、各論からの出題比率が前年より高まったことが特徴でした。従来の総論中心の出題傾向から変化が見られ、基準全体の正確な理解が一層求められる内容となりました。

本記事では、具体的な問題の引用は避けつつ、出題傾向と効果的な対策について分析します。

令和6年短答式試験の概要

試験の基本情報

項目 内容
試験日 2024年5月(第2日曜日)
試験科目 鑑定理論、行政法規
試験時間 鑑定理論:2時間
出題形式 五肢択一式
出題数 40問
合格基準 総合点でおおむね7割以上

合格率と難易度の推移

令和6年の短答式試験は、前年(令和5年)と比較してやや難化したとの声が多く聞かれました。合格率は例年並みの約32〜35%前後で推移しています。

年度 合格率(概算) 難易度の印象
令和4年 約33% 標準
令和5年 約36% やや易化
令和6年 約33% やや難化

出題傾向の分析

分野別の出題割合

令和6年の鑑定理論40問の出題分野を大別すると、以下のような傾向が見られました。

分野 出題数(概算) 前年比
総論(価格の種類、三方式等) 約18問 やや減少
各論(不動産の種別、類型別評価) 約12問 増加
留意事項 約6問 増加
その他(鑑定評価の基本事項等) 約4問 横ばい

総論からの出題

総論からは依然として多くの問題が出題されていますが、鑑定評価基準の基本で学ぶ基礎的な事項だけでなく、より踏み込んだ内容が問われる傾向が見られました。

頻出だった分野価格の種類に関する問題(正常価格・限定価格・特定価格・特殊価格の定義と適用場面) – 三方式の意義と適用に関する問題 – 最有効使用の判定に関する問題 – 地域分析・個別分析の手法に関する問題

各論からの出題増加

令和6年の特徴的な傾向として、各論からの出題が前年に比べて増加しました。

各論は範囲が広いため、受験生の間で正答率にばらつきが出やすい分野です。

留意事項からの出題増加

もう一つの注目すべき傾向は、不動産鑑定評価基準の「留意事項」からの出題が増加したことです。留意事項は基準本文の解釈・補足を示すものですが、細かな文言の正誤を問う問題が出題されており、基準本文だけでなく留意事項まで含めた正確な学習が必要です。

特徴的な出題パターン

新傾向の問題

令和6年では、以下のような新しい切り口の問題が見られました。

  • 複合的な知識を要する問題:一つの選択肢の中に複数分野の知識を組み合わせた出題
  • 「正しいものの組み合わせ」型:個別の正誤判断だけでなく、複数の肢の組み合わせを問う形式
  • 留意事項の文言の微妙な言い換え:基準の文言とわずかに異なる表現で正誤を判断させる問題

引っかけパターンの傾向

試験では、以下のような引っかけが多用されていました。

パターン 具体的な手口
文言のすり替え 「しなければならない」を「することができる」に変更
適用場面の入れ替え 正常価格の説明を限定価格の文脈で使用
条件の追加・省略 基準に規定されている条件の一部を省略して正しいように見せる
原則と例外の逆転 例外的な取扱いを原則として記述する

正答率が低かった問題の分析

正答率が低かった分野

受験者の間で特に正答率が低かったとされるのは、以下の分野です。

  • 証券化対象不動産の評価DCF法の詳細な適用手順に関する問題
  • 借地権と底地の評価:権利の態様に応じた評価手法の使い分け
  • 留意事項の細部:普段の学習で見落としがちな細かな規定

正答率が低くなる原因

正答率が低い問題には共通した特徴があります。

  • 基準の条文を「なんとなく」理解している状態では対応できない細かな文言の問題
  • 学習の優先順位が低い分野(証券化、特殊な権利の評価等)からの出題
  • 複数の知識を横断的に問うため、個別分野の理解だけでは不十分な問題

学習上の示唆

条文の正確な暗記の重要性

令和6年の出題傾向から明らかなのは、基準の条文を「正確に」記憶していることが合否を分けるということです。

効果的な暗記法として以下が挙げられます。

  • 音読学習:基準の条文を声に出して読む(聴覚記憶の活用)
  • 書写学習:重要な条文を繰り返し書く
  • 比較学習:似た概念(正常価格と正常賃料等)を並べて違いを確認する
  • 穴埋め練習:条文の一部を隠して空欄を埋める練習

留意事項への対応

留意事項からの出題増加に対応するため、以下のアプローチが有効です。

  • 基準本文を学習する際に、対応する留意事項も必ずセットで確認する
  • 留意事項で「特に留意すべき」とされている事項をリストアップする
  • 短答式の鑑定理論対策で紹介している学習法を活用する

各論対策の強化

各論からの出題増加を踏まえ、以下の分野を重点的に学習することを推奨します。

  • 宅地の評価手法:更地、建付地、借地権、底地、区分地上権
  • 建物の評価手法:建物及びその敷地の評価、区分所有建物の評価
  • 農地・林地の評価:農地の類型と評価手法の違い
  • 賃料の評価正常賃料と限定賃料、継続賃料の求め方

次年度受験生へのアドバイス

優先順位をつけた学習計画

令和6年の分析を踏まえ、次年度の受験生には以下の優先順位での学習を推奨します。

優先度 分野 学習の目安
最優先 総論(価格の種類、三方式、最有効使用) 基準・留意事項を完全暗記
各論(宅地・建物の評価) 主要な評価手法を理解・暗記
留意事項全般 基準本文と対応づけて学習
各論(農地・林地等の特殊な不動産) 基本的な枠組みを理解
証券化対象不動産 DCF法の手順を中心に理解

過去問の活用法

過去問は最も効率的な学習ツールです。過去問の出題傾向分析も参照しつつ、以下の方法で活用しましょう。

  • まず年度別に解く:本番の時間配分を体感する
  • 次にテーマ別に解く:同じ分野の問題を横断的に解いて理解を深める
  • 誤答した問題を基準に戻って確認:なぜ間違えたのかを基準の条文レベルで分析する
  • 令和5年の出題](/articles/kakomon-2023-tantou)との比較:出題傾向の変化を自分で分析する

まとめ

令和6年短答式試験・鑑定理論の分析ポイントを整理します。

  • 留意事項からの出題が増加しており、基準本文だけの学習では不十分
  • 各論からの出題比率が上昇し、不動産の種別・類型ごとの評価手法の理解が重要に
  • 条文の正確な暗記が合否を分ける最大のポイント
  • 引っかけは「文言のすり替え」「適用場面の入れ替え」「原則と例外の逆転」が定番
  • 正答率が低い分野(証券化、借地権等)の対策が差をつける
  • 過去問は「年度別」と「テーマ別」の両方で活用するのが効果的

出題傾向は年々少しずつ変化していますが、基準の正確な理解という本質は変わりません。基準と留意事項を繰り返し読み込み、過去問で実戦力を養いましょう。