令和6年論文式試験|鑑定理論の過去問解説
令和6年論文式試験の出題傾向
令和6年(2024年)の論文式試験・鑑定理論科目は、基準の条文を単に書き写すだけでなく、その趣旨や背景を論理的に説明する力が求められたことが特徴です。また、演習問題では計算過程の正確性と手順の明示が例年以上に重視される出題でした。
本記事では、具体的な問題の引用は避けつつ、出題傾向と効果的な答案作成法について分析します。
令和6年論文式試験の概要
試験の基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 試験日 | 2024年8月(3日間のうち1日目・2日目) |
| 鑑定理論の構成 | 論文問題(1日目)+演習問題(2日目) |
| 論文問題の試験時間 | 2時間 |
| 演習問題の試験時間 | 2時間 |
| 出題数 | 論文2問+演習2問 |
論文式試験の位置づけ
論文式試験は不動産鑑定士試験の最終関門であり、短答式と比較して以下の違いがあります。
| 項目 | 短答式 | 論文式 |
|---|---|---|
| 形式 | 五肢択一 | 記述式 |
| 求められる能力 | 正誤判断力 | 論述力・構成力 |
| 合格率 | 約33% | 約15% |
| 学習量の目安 | 基準の正確な暗記 | 暗記+論述練習 |
鑑定理論(論文)の出題テーマ分析
令和6年の出題テーマ
令和6年の論文問題は、以下のような分野から出題されました。
問題1の出題領域 – 鑑定評価の基本的事項に関する論述 – 価格の種類の定義と適用場面の説明 – 各価格の種類が設けられている趣旨・理由の論述
問題2の出題領域 – 評価手法の適用に関する論述 – 三方式の意義とそれぞれの手法の関係性 – 試算価格の調整(reconciliation)における留意事項
出題の特徴
令和6年の論文問題の最大の特徴は、「なぜそのような規定があるのか」を問う出題が含まれていたことです。
従来は「基準の条文を正確に書き出す」ことが求められる出題が中心でしたが、令和6年は条文の暗記に加え、その規定の趣旨や背景を自分の言葉で論理的に説明する力が問われました。
答案構成のポイント
題意の把握
論文式試験で最も重要なのは、問題が何を求めているかを正確に把握することです。
| 問いの形式 | 求められている内容 |
|---|---|
| 「〜について述べよ」 | 基準の条文を正確に引用しつつ説明 |
| 「〜の趣旨を述べよ」 | 規定の目的・背景を論理的に説明 |
| 「〜を比較して述べよ」 | 共通点と相違点を整理して論述 |
| 「〜の場合どうなるか」 | 条文の適用場面を具体的に説明 |
よくある失敗 – 問われていないことまで書いてしまう(時間の浪費) – 題意を読み違え、別のテーマについて書いてしまう – 「趣旨を述べよ」に対して条文だけを書き出してしまう
条文の引用方法
答案における基準の条文引用は、以下の形式が望ましいとされています。
- 正確な引用:一字一句違わず条文を書くことが理想
- キーワードの網羅:完全な暗記が難しい場合でも、重要なキーワードは必ず含める
- 引用の位置づけ:条文引用の後に、自分の言葉での解説を加える
趣旨の説明方法
「趣旨を述べよ」という問いに対しては、以下の構成が有効です。
- 結論:規定の趣旨を一文で述べる
- 背景:なぜその規定が必要なのかを説明する
- 具体例:実際の鑑定評価においてどのような場面で適用されるかを示す
- 帰結:規定がなかった場合にどのような問題が生じるかを補足する
模範的な答案の構成例
論述問題の答案構成テンプレート
以下は、鑑定理論の論文問題における一般的な答案構成の例です。
冒頭部分
1. ○○の意義
不動産鑑定評価基準によれば、○○とは「〜〜〜」をいう。
展開部分
2. ○○の趣旨
○○が設けられている趣旨は、〜〜にある。
すなわち、〜〜であるため、○○という規定が必要とされている。
具体的説明
3. ○○の適用場面
○○は、具体的には以下のような場面で適用される。
第一に、〜〜の場合である。
第二に、〜〜の場合である。
結論部分
4. まとめ
以上のように、○○は〜〜という観点から重要な規定であり、
鑑定評価においては〜〜に留意する必要がある。
答案の書き方の注意点
- 段落番号を振る:「1.」「2.」と番号を付けることで読みやすくなる
- 適度な改行:詰め込みすぎず、適度に段落を分ける
- キーワードの強調:重要な用語は正確に記述する
- 字数の配分:各問題に均等に時間と字数を配分する
演習問題の出題傾向と計算手順
令和6年の演習問題
演習問題では、具体的な不動産の鑑定評価を行う設問が出題されました。
出題された計算手法 – 原価法による積算価格の算定 – 取引事例比較法による比準価格の算定 – 収益還元法(直接還元法またはDCF法)による収益価格の算定 – 試算価格の調整と鑑定評価額の決定
計算手順の明示が重要
令和6年の演習では、計算過程を丁寧に示すことが特に重視されていました。
| 評価される点 | 具体的な内容 |
|---|---|
| 計算過程の明示 | 途中計算を省略せず、一つひとつの手順を示す |
| 適用手法の根拠 | なぜその手法を適用したかの理由を付記する |
| 補正・修正の説明 | 事情補正・時点修正等の根拠を明記する |
| 最終値の決定理由 | 試算価格の調整過程と最終判断の根拠を論述する |
演習でよくあるミス
- 計算ミス:焦りから生じる四則演算の間違い(電卓の打ち間違い等)
- 手順の飛ばし:事情補正や時点修正を忘れる
- 単位の間違い:㎡単価と総額の混同、年額と月額の混同
- 調整過程の省略:試算価格を求めた後、調整理由を書かない
時間配分の検証
論文問題の時間配分
論文問題(2時間、2問)の推奨時間配分は以下の通りです。
| 時間 | 作業内容 |
|---|---|
| 最初の10分 | 全問を読み、答案構成を考える |
| 10〜55分 | 問題1の答案を記述する(45分) |
| 55〜100分 | 問題2の答案を記述する(45分) |
| 100〜120分 | 見直し・加筆修正(20分) |
演習問題の時間配分
演習問題(2時間、2問)の推奨時間配分は以下の通りです。
| 時間 | 作業内容 |
|---|---|
| 最初の10分 | 問題を読み、計算の方針を決める |
| 10〜60分 | 問題1の計算と記述(50分) |
| 60〜110分 | 問題2の計算と記述(50分) |
| 110〜120分 | 計算の検算・見直し(10分) |
時間が足りなくなった場合の対処
- 計算結果だけでも書く:途中で時間切れになりそうな場合、最終的な計算結果だけでも記入する
- キーワードを列挙する:論述が書ききれない場合、要点をキーワードで列挙する
- 前半の問題に時間をかけすぎない:1問目で完璧を目指すより、2問目にも確実に着手する
次年度に向けた対策
論文対策のポイント
| 対策項目 | 具体的な方法 |
|---|---|
| 条文暗記 | 基準の重要条文を繰り返し書いて暗記する |
| 趣旨の理解 | 各規定がなぜ設けられているかを自分の言葉で説明できるようにする |
| 答案練習 | 週1回以上、実際に手書きで答案を書く練習をする |
| 時間管理 | 本番と同じ時間制限で模擬演習を行う |
演習対策のポイント
- 計算パターンの習得:原価法、取引事例比較法、収益還元法の計算手順を体に染み込ませる
- 電卓操作の練習:電卓の操作スピードを上げ、正確性を高める
- 過去問の反復:令和5年の論文式を含め、過去5年分の演習問題を繰り返し解く
論文式と短答式の学習バランス
論文式試験の受験生は、短答式試験免除期間中であることが多いですが、短答式の学習で培った知識は論文式の基礎になります。条文暗記は短答式・論文式共通の学習であるため、効率的に学習を進めましょう。
まとめ
令和6年論文式試験・鑑定理論の分析ポイントを整理します。
- 条文の暗記だけでなく「趣旨」を論じる力が問われた
- 答案構成は「意義→趣旨→具体的説明→まとめ」の型を身につける
- 題意の正確な把握が最も重要(問いに正面から答える)
- 演習問題では計算過程の明示が例年以上に重視された
- 時間配分は各問45〜50分を目安とし、見直し時間を確保する
- 計算ミスを防ぐため、電卓操作の練習と検算の習慣が不可欠
- 答案練習は実際に手書きで書くことが最も効果的
論文式試験は合格率約15%の難関ですが、正しい答案の「型」を身につけ、繰り返し練習することで着実に実力を伸ばすことができます。直近5年の出題傾向も確認し、計画的に対策を進めましょう。