併合と分割の概要

不動産の併合とは、隣接する複数の不動産を一体として利用すること、分割とは、一体の不動産を分けて利用することをいいます。併合・分割は、不動産の最有効使用を変化させ、個別の価格の合計とは異なる価格(限定価格)を生じさせる点が鑑定評価上の重要な論点です。不動産鑑定士試験では、併合・分割の際の増分価値の配分方法限定価格との関係が頻繁に出題されます。

併合とは、価格を異にする二以上の不動産の全部又は一部を合わせて一つの不動産とすることをいい、分割とは、一つの不動産の一部を分離して独立の不動産とすることをいう。

― 不動産鑑定評価基準 総論第5章第3節


併合の鑑定評価

併合の意義

併合は、隣接する不動産を一体として利用することで、個々の不動産では実現できなかった利用形態が可能になる場合に行われます。併合によって最有効使用が変化し、合計価格以上の価値(増分価値)が生じることがあります。

併合の典型例

場面 併合前 併合後 効果
隣地の取得 50坪の画地 + 隣接30坪の画地 80坪の一体画地 容積率の有効活用が可能に
無道路地の解消 道路に面する土地 + 背後の無道路地 道路に面する大きな画地 無道路地の利用価値が大幅に向上
不整形地の解消 不整形な土地 + 隣接地 整形に近い画地 建築効率が向上

増分価値とは

増分価値とは、併合後の不動産全体の価格が、併合前の各不動産の正常価格の合計を超える部分をいいます。

【増分価値の計算例】

併合前:
  土地A(正常価格): 5,000万円
  土地B(正常価格): 3,000万円
  合計            : 8,000万円

併合後:
  一体画地の正常価格 : 9,500万円

増分価値 = 9,500万円 − 8,000万円 = 1,500万円

この1,500万円の増分価値が、併合によって新たに生じた価値です。


併合と限定価格

限定価格が求められる場面

併合を目的として隣接地を取得する場合、取得する側にとっては正常価格を超える支払いが経済合理的に正当化される場合があります。この場合に求められる価格が限定価格です。

限定価格とは、市場性を有する不動産について、不動産と取得する他の不動産との併合又は不動産の一部を取得する際の分割等に基づき正常価格と同一の市場概念の下において形成されるであろう市場価値と乖離することにより、市場が相対的に限定される場合における取得部分の当該市場限定に基づく適正な経済価値を適正に表示する価格をいう。

― 不動産鑑定評価基準 総論第5章第3節

限定価格の求め方

限定価格は、正常価格に増分価値の配分額を加算して求めます。

【限定価格の計算例】

土地Aの所有者が隣接する土地Bを取得する場合

土地Bの正常価格      : 3,000万円
増分価値             : 1,500万円
増分価値の配分(土地B分): 750万円(増分価値を1/2ずつ配分と仮定)

土地Bの限定価格 = 3,000万円 + 750万円 = 3,750万円

この例では、土地Aの所有者は土地Bに対して、正常価格の3,000万円ではなく最大3,750万円まで支払う経済合理性があることを示しています。

増分価値の配分方法

増分価値の配分方法には、主に以下の方法があります。

配分方法 内容 適用場面
面積按分 各土地の面積比で配分 土地の質が同程度の場合
価格按分 各土地の正常価格比で配分 価格差がある土地同士の場合
均等配分 等しく配分 増分価値への貢献が同等の場合
貢献度配分 増分価値への貢献度で配分 一方の土地の貢献が明らかに大きい場合

実務では、当事者間の交渉力も考慮されますが、鑑定評価では客観的な基準に基づく配分が求められます。


分割の鑑定評価

分割の意義

分割とは、一つの不動産の一部を切り離して独立した不動産とすることです。分割は併合と逆の効果をもたらし、分割後の各不動産の価格の合計が、分割前の全体の価格を下回る場合があります。

分割による価値の減少

分割によって最有効使用が変化し、全体の価値が減少する場合を分割損と呼びます。

【分割損の計算例】

分割前:
  一体画地(100坪)の正常価格 : 10,000万円

分割後:
  土地C(60坪)の正常価格 : 5,500万円
  土地D(40坪)の正常価格 : 3,500万円
  合計                   : 9,000万円

分割損 = 10,000万円 − 9,000万円 = 1,000万円

分割と限定価格

分割においても限定価格が問題になります。例えば、大規模画地の一部を隣接地の所有者が取得する場合、取得部分の限定価格を求めることがあります。

分割の場合は併合とは逆に、分割後の残地の価値が減少するリスクがあるため、分割の合理性を慎重に判断する必要があります。


最有効使用の判定との関係

併合・分割と最有効使用

併合・分割の鑑定評価において最も重要なのは、最有効使用の判定が変わるかどうかです。

ケース 最有効使用の変化 評価上の影響
併合により高度利用が可能に 変化あり 増分価値が発生
併合しても利用形態は同じ 変化なし 増分価値は発生しない
分割しても各画地の利用は適切 変化少 分割損は小さい
分割により一方が無道路地に 変化大 大きな分割損が発生

具体例:最有効使用の変化

例1:中層マンション用地の併合

併合前:
  土地E(150㎡)→ 最有効使用:戸建住宅用地(容積率200%)
  土地F(100㎡)→ 最有効使用:戸建住宅用地(容積率200%)

併合後:
  一体画地(250㎡)→ 最有効使用:中層共同住宅用地(容積率200%をフル活用)

250㎡に一体化することで、中層共同住宅の建築が合理的になり、土地の効用が最高度に発揮されます。

例2:分割により無道路地が発生するケース

分割前:
  一体画地(200㎡)→ 前面道路に10m接道、最有効使用:共同住宅用地

分割後:
  前面部分(120㎡)→ 道路に面する画地(建築可能)
  背後部分( 80㎡)→ 無道路地(建築基準法上の接道義務を満たさず建築不可)

この場合、背後部分は建築不可となるため著しく価値が低下し、大きな分割損が発生します。


併合・分割に関連する基準の規定

対象確定条件としての位置づけ

併合・分割を前提とした鑑定評価は、対象確定条件の設定として位置づけられます。鑑定評価の条件の体系において、「併合後の一体画地として評価する」または「分割後の各画地として評価する」という条件は、対象不動産の物的範囲を確定する条件です。

隣接不動産との関係

対象不動産の確定に当たっては、対象不動産の物的確認を行うとともに、権利の態様の確認を行わなければならない。

― 不動産鑑定評価基準 総論第8章第1節

併合を前提とする場合、隣接不動産の所有者・権利関係を確認し、併合の実現可能性を判断することが重要です。相手方が売却に応じる見込みがなければ、併合を前提とした評価自体が合理性を欠くことになります。


併合・分割と正常価格の関係

正常価格との乖離

併合・分割の場面では、取得部分の取引価格が正常価格と乖離することがあります。これは、市場が限定されること(取得者が隣地所有者に限られる等)に起因します。

基準はこのような価格を限定価格として定義しており、正常価格と限定価格の関係を理解することが重要です。

価格 定義 併合の場合の関係
正常価格 合理的な市場で形成される価格 一般的な買主が支払う価格
限定価格 市場が限定される場合の価格 隣地所有者が支払う正当化される上限

正常価格と限定価格の数値比較

【正常価格と限定価格の比較例】

土地X(隣地所有者が取得する場合)

正常価格   : 3,000万円(一般市場での価格)
限定価格   : 3,750万円(増分価値750万円を加算)

差額 = 750万円(増分価値の配分額)

この差額は、隣地所有者だからこそ享受できる併合の利益を反映したものです。第三者にとっては3,000万円の価値しかない土地が、隣地所有者にとっては3,750万円の価値を持つことを示しています。


実務での活用場面

法人間取引

企業が事業拡大のために隣接地を取得する場面は、併合の鑑定評価の典型例です。限定価格を算定することで、取得価格の妥当性を客観的に示すことができます。

相続時の遺産分割

複数の相続人が土地を分割する際、分割方法によって各画地の価値が変わるため、分割の鑑定評価が重要になります。公平な分割を実現するために、各分割案の価格を比較検討します。

区画整理・再開発

土地区画整理事業や市街地再開発事業では、従前の権利を換地・権利変換する際に、併合・分割の考え方が適用されます。


試験での出題ポイント

短答式試験

  • 併合・分割の定義: 基準の条文に基づく正確な定義
  • 限定価格との関係: 併合時に限定価格が求められる根拠
  • 増分価値の概念: 併合後の全体価格と各正常価格の合計の差
  • 対象確定条件との関係: 併合・分割が対象確定条件として位置づけられること

論文式試験

  • 増分価値の配分方法の論述: 面積按分・価格按分・貢献度配分等の比較
  • 最有効使用の変化の分析: 併合・分割により最有効使用がどう変わるかの具体的検討
  • 限定価格を求める手順: 正常価格の算定→増分価値の計算→配分→限定価格の決定

暗記のポイント

  1. 併合の定義: 二以上の不動産の全部又は一部を合わせて一つの不動産とすること
  2. 分割の定義: 一つの不動産の一部を分離して独立の不動産とすること
  3. 増分価値: 併合後の全体価格 − 各正常価格の合計
  4. 限定価格: 正常価格 + 増分価値の配分額
  5. 最有効使用の変化が増分価値発生の前提条件

まとめ

不動産の併合・分割は、最有効使用を変化させ、増分価値(または分割損)を生じさせる重要な論点です。併合の場合は限定価格が問題となり、増分価値の適正な配分方法が鑑定評価の核心になります。分割の場合は各画地の最有効使用への影響を慎重に判断する必要があります。

関連する論点として、限定価格の詳細最有効使用の判定の記事もあわせて学習してください。併合・分割は鑑定評価の条件設定と密接に関連しますので、鑑定評価の条件の体系も参照することをお勧めします。