最終還元利回りとは

最終還元利回り(ターミナル・キャップレート)とは、DCF法において、保有期間終了時点の不動産の価格(復帰価格)を求めるために用いる還元利回りです。不動産鑑定士試験では、DCF法の重要な構成要素として頻出の概念です。

DCF法は、連続する複数の期間に発生する純収益及び復帰価格を、その発生時期に応じて現在価値に割り引き、それぞれを合計する方法である。

― 不動産鑑定評価基準 総論第7章第1節


わかりやすく言うと

DCF法では「何年間かその不動産を持ち続けた後、最後に売却する」というシナリオを想定します。最後に売る時の価格を「復帰価格」と呼びますが、この復帰価格を計算するときに使う利回りが最終還元利回りです。

計算式はシンプルで、復帰価格 = 保有期間終了時の純収益 ÷ 最終還元利回り です。


身近な具体例

例1: 10年保有するオフィスビル

投資家がオフィスビルを購入し、10年間保有した後に売却するとします。 – 11年目(売却時点の翌期)の予想純収益: 5,000万円 – 最終還元利回り: 5%

復帰価格 = 5,000万円 ÷ 5% = 10億円

この10億円を、さらに10年分の割引率で現在価値に割り引いたものが、DCF法における復帰価格の現在価値となります。

例2: 最終還元利回りの水準と物件価格への影響

同じ純収益5,000万円でも、最終還元利回りが変わると復帰価格は大きく変動します。

最終還元利回り 復帰価格 影響
4% 12.5億円 低い利回り → 高い復帰価格
5% 10億円 基準ケース
6% 約8.3億円 高い利回り → 低い復帰価格

わずか1%の違いで復帰価格は数億円単位で変動するため、最終還元利回りの設定は非常に重要です。


鑑定評価における位置づけ

最終還元利回りは、DCF法における以下の場面で使用されます。

  • 復帰価格の算定: 保有期間終了時の不動産価格を「純収益 ÷ 最終還元利回り」で計算する
  • DCF法の結果への影響: 最終還元利回りの設定が収益価格に大きな影響を与える
  • 証券化対象不動産の評価: J-REIT等の鑑定評価では、最終還元利回りの設定根拠の開示が求められる

最終還元利回りと還元利回りの関係

項目 還元利回り(キャップレート) 最終還元利回り
使用する手法 直接還元法 DCF法
目的 初年度の純収益から価格を求める 保有期間終了時の復帰価格を求める
水準の関係 通常、還元利回りよりやや高めに設定
高めになる理由 保有期間経過に伴う建物の経年劣化リスクを反映

一般に、最終還元利回りは直接還元法の還元利回りよりも0.5%〜1.0%程度高く設定されます。これは、保有期間の経過に伴い建物が経年劣化し、不確実性が増すことを反映しています。


関連する用語との違い

用語 意味 違いのポイント
最終還元利回り 復帰価格を求めるための利回り DCF法の「出口」で使用
還元利回り 純収益を直接還元して価格を求める利回り 直接還元法で使用
割引率 将来の収益を現在価値に割り引く率 DCF法の「割引計算」で使用
復帰価格 保有期間終了時の不動産の予想売却価格 最終還元利回りで算出される

試験での出題ポイント

短答式試験

  • 最終還元利回りと還元利回りの関係: 「最終還元利回りは還元利回りより低く設定される」→ 誤り(通常は高めに設定)
  • 復帰価格の算定式: 純収益 ÷ 最終還元利回り = 復帰価格の関係が正確に理解されているか

論文式試験

  • 「DCF法の手順を述べ、最終還元利回りと割引率の違いを論述せよ」
  • 最終還元利回りが還元利回りよりも高くなる理由を論理的に説明できるかがポイント

まとめ

最終還元利回りは、DCF法において復帰価格を算定するためのキーパラメータであり、収益価格に大きな影響を与えます。還元利回り(直接還元法)との違い、割引率との違いを明確に区別し、最終還元利回りが通常やや高めに設定される理由を理解しておくことが試験対策の鍵です。