不動産の価格の特徴|一般財との違い
不動産の価格の特徴
不動産の価格は、一般の商品(一般財)の価格とは大きく異なる特徴を持っています。個別性が強い、市場が不完全である、取引が非公開であるといった不動産固有の性質により、不動産の価格は一般財のように市場で自然に形成される明確な「相場」が存在しにくく、専門家による鑑定評価が必要とされます。不動産鑑定士試験では、これらの特徴が鑑定評価の必要性と結びつけて出題されます。
不動産の価格は、一般に、土地とその定着物との結合によって有機的にその効用を発揮するもの(以下「不動産」という。)の経済価値を貨幣額をもって表示したものである。
― 不動産鑑定評価基準 総論第1章
一般財の価格との比較
一般財の価格形成
一般の商品(食品、家電、衣類等)の価格は、以下の特徴を持っています。
- 同質性: 同じ商品は基本的に同じ品質・性能
- 大量供給: 工場で大量生産が可能
- 公開市場: スーパーやネット通販で誰でも購入可能
- 即時取引: 購入決定から入手まで短時間
- 価格の透明性: 値札やウェブサイトで価格が公開されている
不動産の価格形成
これに対し、不動産の価格は以下の特徴を持っています。
| 特徴 | 一般財 | 不動産 |
|---|---|---|
| 個別性 | 同質の商品が多数存在 | 一つとして同じものがない |
| 供給 | 大量生産が可能 | 供給は限定的(特に土地) |
| 市場 | 公開された市場で取引 | 相対取引が中心 |
| 取引情報 | 価格が公開されている | 取引価格は非公開が多い |
| 取引期間 | 短期間で完結 | 交渉から引渡しまで長期間 |
| 取引頻度 | 日常的に何度も取引 | 一生に数回程度 |
| 専門知識 | 特段不要 | 法律・税金等の知識が必要 |
不動産の価格の5つの特徴
特徴1:価格の個別性
不動産は一つとして同じものが存在しない個別性を持っています。位置(場所)が異なる以上、同じ土地は二つと存在しません。建物も構造、設計、築年数、維持管理状態等が個々に異なります。
この個別性により、不動産の価格は個別に判定する必要があり、一般財のように「定価」を設定することができません。
不動産の価格は、その不動産の効用、相対的稀少性及び有効需要の三者の相関結合によって生ずる不動産の経済価値を、貨幣額をもって表示したものである。
― 不動産鑑定評価基準 総論第4章
特徴2:価格の多元性
不動産の価格は、一つの正解が存在するものではなく、評価の目的や条件によって異なる価格が成立し得ます。同じ不動産であっても、正常価格、限定価格、特定価格、特殊価格など、求める価格の種類によって金額が異なります。
特徴3:価格の相対性
不動産の価格は、周辺環境や市場状況に左右される相対的なものです。同じ不動産でも、周辺に大型商業施設ができれば価値が上昇し、迷惑施設ができれば価値が下落します。不動産の価格は、価格形成要因(一般的要因・地域要因・個別的要因)の変化に応じて常に変動しています。
特徴4:価格の非公開性
不動産の取引価格は、当事者間の交渉で決まり、原則として一般に公開されません。株式市場のように取引価格がリアルタイムで公開される市場は存在せず、取引当事者以外が正確な取引価格を把握することは困難です。
この非公開性が、不動産の「適正な価格」の判断を難しくしており、専門家による鑑定評価の必要性を生み出しています。
特徴5:価格の長期形成性
不動産の取引は、物件の調査、交渉、契約、引渡しまでに長期間を要します。この間に市場環境が変化する可能性もあり、いわゆる「時価」を確定することが困難です。また、不動産は取引頻度が低いため、直近の取引事例が存在しない場合も多くあります。
不動産の価格を形成する三要素
基準では、不動産の価格は以下の三者の相関結合によって形成されるとしています。
| 要素 | 内容 | 具体例 |
|---|---|---|
| 効用 | 不動産がもたらす有用性 | 住める、事業ができる、収益が得られる |
| 相対的稀少性 | 供給の限定性 | 土地は増やせない、立地の希少性 |
| 有効需要 | 購買力を伴った需要 | 経済環境、金利、人口動態 |
これら三要素が相互に影響し合いながら不動産の価格が形成されるため、価格の判定にあたっては三要素のすべてを総合的に分析する必要があります。
三要素と価格の関係
効用が高い + 稀少性が高い + 有効需要が強い → 価格が高い
効用が低い + 稀少性が低い + 有効需要が弱い → 価格が低い
不動産の価格の特徴と鑑定評価の必要性
なぜ鑑定評価が必要か
不動産の価格が持つ上記の特徴(個別性、多元性、相対性、非公開性、長期形成性)は、一般人が不動産の適正な価格を判断することを極めて困難にしています。
| 不動産の特徴 | 鑑定評価の対応 |
|---|---|
| 個別性 | 個々の不動産の価格形成要因を分析 |
| 多元性 | 評価目的に応じた適切な価格の種類を判定 |
| 相対性 | 地域分析・個別分析により市場を把握 |
| 非公開性 | 取引事例の収集・分析により市場実態を把握 |
| 長期形成性 | 価格時点を設定し、時点修正を適用 |
基準が定める鑑定評価の社会的意義
不動産の鑑定評価は、不動産の適正な価格の形成に資するため、不動産の鑑定評価に関する理論及び手法を駆使して、合理的かつ実証的に不動産の経済価値を判定し、その結果を価額に表示するものである。
― 不動産鑑定評価基準 総論第1章
鑑定評価は、不動産市場の不完全性を補完し、適正な価格の形成に資する社会的役割を担っています。
不動産の価格と諸原則の関係
不動産の価格の特徴は、不動産の価格に関する諸原則と深く結びついています。
| 諸原則 | 価格の特徴との関連 |
|---|---|
| 需要と供給の原則 | 有効需要と相対的稀少性の関係 |
| 代替の原則 | 類似不動産との比較による価格形成 |
| 変動の原則 | 価格の相対性・長期形成性 |
| 最有効使用の原則 | 効用の最大化と価格水準 |
| 均衡の原則 | 価格形成要因のバランス |
試験での出題ポイント
短答式試験
- 不動産の価格の特徴(個別性・多元性等)の正誤判定
- 一般財との違いに関する出題
- 効用・相対的稀少性・有効需要の三要素
- 鑑定評価の社会的意義との関連
論文式試験
- 不動産の価格の特徴を列挙し、鑑定評価の必要性と結びつけて論述
- 価格形成の三要素の相関関係を説明
- 不動産市場の不完全性と鑑定評価の役割
暗記のポイント
- 価格形成の三要素: 効用、相対的稀少性、有効需要の相関結合
- 5つの特徴: 個別性、多元性、相対性、非公開性、長期形成性
- 鑑定評価の意義: 不動産の適正な価格の形成に資する
- 一般財との違い: 同質性なし、公開市場なし、取引頻度低い
- 基準の定義: 不動産の経済価値を貨幣額をもって表示したもの
まとめ
不動産の価格は、個別性、多元性、相対性、非公開性、長期形成性という一般財にはない特徴を持ち、効用・相対的稀少性・有効需要の三要素の相関結合によって形成されます。これらの特徴が鑑定評価の必要性を生み出しており、不動産鑑定士が専門家として不動産の適正な価格を判定する社会的役割の根拠となっています。価格形成要因や不動産の価格に関する諸原則と合わせて、不動産の価格に関する基礎理論を体系的に理解しておきましょう。