不動産の類型とは

不動産鑑定士試験において、不動産の類型は鑑定評価の前提となる基礎知識です。類型とは、不動産の権利の態様に基づく分類であり、同じ物理的な土地であっても、設定されている権利関係によって異なる類型に分類されます。

鑑定評価基準では、不動産の利用には有形的利用と権利の態様があるとされており、有形的利用に基づく分類が種別、権利の態様に基づく分類が類型です。

不動産の類型は、その有形的利用及び権利関係の態様に応じて、宅地についてはさらに、更地、建付地、借地権、底地、区分地上権等に分けられる。

― 不動産鑑定評価基準 総論第2章第2節

本記事では、類型の全体像を体系的に整理し、所有と利用の関係から各類型の意味を解説します。


類型の全体像

鑑定評価基準に規定されている不動産の類型を一覧で整理します。

宅地に関する類型

類型 定義の要点
更地 建物等がなく、使用収益を制約する権利のない宅地
建付地 建物等の敷地となっている宅地(所有者同一)
借地権 建物所有を目的とする地上権又は賃借権
底地 借地権が付着した宅地の所有権
区分地上権 地下又は上空の一定層のみを目的とする地上権

建物に関する類型

類型 定義の要点
建物及びその敷地 建物と敷地が同一所有者に属する複合不動産
借地権付建物 借地上に建てられた建物と借地権の複合
区分所有建物及びその敷地 マンション等の区分所有に係る建物とその敷地

更地の概念

更地は、不動産の類型のうち最も基本的なものです。

更地とは、建物等の定着物がなく、かつ、使用収益を制約する権利の付着していない宅地をいう。

― 不動産鑑定評価基準 総論第2章第2節

更地の概念で重要なのは、以下の2つの条件を同時に満たす必要があるという点です。

  1. 建物等の定着物がないこと
  2. 使用収益を制約する権利が付着していないこと

したがって、建物がない空き地であっても、借地権や地上権等が設定されていれば更地には該当しません。更地は、所有者が自由に使用・収益・処分できる状態の宅地であり、不動産の類型の中で最も利用の自由度が高いものです。

更地の価格と最有効使用

更地の価格は、その土地の最有効使用を前提として形成されます。更地には使用収益を制約する権利がないため、利用可能性が最も広く、最有効使用の判定が価格形成に直接的な影響を与えます。

更地の評価においては、取引事例比較法、収益還元法、原価法(造成地等の場合)を適用し、必要に応じて開発法を適用して試算価格を求めます。


建付地の概念

建付地は、建物の敷地として利用されている宅地です。

建付地とは、建物等の用に供されている敷地で、建物等及びその敷地が同一の所有者に属している宅地をいう。

― 不動産鑑定評価基準 総論第2章第2節

建付地は、以下の条件を満たす宅地です。

  1. 建物等の敷地として利用されていること
  2. 建物等と敷地が同一の所有者に属していること

ここで重要なのは、所有者の同一性が要件となっている点です。土地と建物の所有者が異なる場合は、建付地ではなく底地(又は借地権)に分類されます。

建付地と更地の関係

建付地は、更地に建物が建てられた状態の宅地と捉えることができます。しかし、建付地の価格は必ずしも更地の価格と一致するとは限りません。

建付地の価格が更地の価格を下回る場合があります。これは、既存建物の存在が土地の最有効使用を制約する場合に生じます。例えば、商業地域にある老朽化した戸建住宅の敷地は、建物が存在することで最有効使用(商業ビルの建設等)が制約されており、更地の場合よりも価格が低くなることがあります。このような価格差を建付減価といいます。

建付地の評価では、更地の価格を基礎として建付減価の有無と程度を判定します。


借地権の概念

借地権は、他人の土地を利用する権利としての類型です。

借地権とは、借地借家法(廃止前の借地法を含む。)に基づく借地権(建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権)をいう。

― 不動産鑑定評価基準 総論第2章第2節

借地権は、土地の所有者と利用者が分離している場合に生じる類型です。借地権者は土地を利用して建物を所有する権利を持ち、土地所有者は地代を受け取る権利を持ちます。

借地権と底地の関係

借地権と底地は表裏一体の関係にあります。一つの土地に借地権が設定されると、土地所有者の権利は底地となります。

更地の価格 ≒ 借地権の価格 + 底地の価格

ただし、実際には借地権の価格と底地の価格の合計は、更地の価格を下回ることが一般的です。これは、権利の分化によって個々の権利の市場性が低下するためであり、この現象を限定価格の問題と関連づけて理解する必要があります。

借地権の評価では、借地権割合法、取引事例比較法、収益還元法等が適用されます。


底地の概念

底地は、借地権が設定された土地の所有権です。

底地とは、宅地について借地権の付着している場合における当該宅地の所有権をいう。

― 不動産鑑定評価基準 総論第2章第2節

底地の所有者は、地代を収受する権利と、借地権消滅後に土地の完全な使用収益を回復する権利を持ちます。しかし、借地権が存続している間は自ら土地を使用・収益することができないため、底地の市場性は更地に比べて著しく低くなります。

底地の価格形成

底地の価格は、以下の要素によって形成されます。

  • 地代収入:現行の地代と将来の地代改定の見通し
  • 借地権消滅の可能性:借地契約の残存期間、借地権の消滅時期の予測
  • 一時金収入:契約更新時の更新料、名義変更時の承諾料等
  • 市場性の制約:底地の買い手が限定される(主に借地権者が取得する場合が多い)

区分地上権の概念

区分地上権は、地下又は上空の一定の範囲のみを利用する権利です。

地下鉄のトンネルや高架道路の建設のように、土地の上空又は地下の特定の層のみを利用する場合に設定されます。区分地上権が設定されると、所有者は設定された範囲について利用が制約されますが、それ以外の範囲は引き続き利用可能です。


建物及びその敷地

建物及びその敷地は、建物とその敷地である土地を一体として捉えた類型です。これは複合不動産の最も基本的な類型であり、実務においても最も評価頻度の高い類型の一つです。

建物及びその敷地の類型には、所有関係の違いにより以下のものがあります。

類型 所有関係
自用の建物及びその敷地 所有者が自ら使用
貸家及びその敷地 建物を他人に賃貸
賃貸用不動産 賃貸を目的として経営

自用の建物及びその敷地の評価では、土地と建物を一体として評価するほか、土地と建物をそれぞれ評価したうえで合算する方法もあります。


借地権付建物

借地権付建物は、借地上に建てられた建物と借地権を一体として捉えた類型です。

借地権付建物の価格は、借地権の価格と建物の価格を合わせたものですが、両者を単純に合算したものとは限りません。借地権と建物が一体として市場で取引される場合には、一体としての市場価格が形成されます。


区分所有建物及びその敷地

区分所有建物及びその敷地は、マンション等の区分所有に係る建物の専有部分と共用部分、及びその敷地に関する権利を一体として捉えた類型です。

区分所有建物の評価では、専有部分の面積・階数・位置等の個別的要因に加え、管理の状態、修繕積立金の状況、管理組合の運営状態等も重要な価格形成要因となります。


類型の体系と所有・利用の関係

類型の全体像を、所有と利用の関係から整理します。

完全所有の類型

所有者が完全な権利を持ち、自由に使用・収益・処分できる類型です。

  • 更地:建物なし、権利制約なし → 最も自由度が高い
  • 建付地:建物あり、所有者同一 → 建物による制約あり

権利が分化した類型

一つの不動産に複数の権利が設定され、所有と利用が分離している類型です。

  • 借地権:利用権(借地権者側)
  • 底地:所有権(土地所有者側)
  • 区分地上権:空間の一部のみの利用権

複合不動産の類型

土地と建物を一体として捉える類型です。

  • 建物及びその敷地:土地・建物同一所有者
  • 借地権付建物:建物所有+借地権
  • 区分所有建物及びその敷地:区分所有

所有と利用の分離の図式

所有と利用の関係を図式化すると以下のようになります。

【所有と利用が一致】
  更地 ← 所有者が自由に利用可能
  建付地 ← 所有者が自己の建物として利用
  自用の建物及びその敷地 ← 所有者が自ら使用

【所有と利用が分離】
  底地(所有者側) ←→ 借地権(利用者側)
  貸家及びその敷地(所有者側) ←→ 借家権(利用者側)

この所有と利用の分離の度合いが、各類型の市場性と価格水準に大きな影響を与えます。一般に、所有と利用が一致している類型のほうが市場性が高く、分離している類型は市場性が限定されます。


類型の判定と鑑定評価

鑑定評価を行うにあたっては、対象不動産の類型を正確に判定することが不可欠の前提です。類型の判定を誤ると、適用すべき評価手法や価格形成要因の分析が根本から誤ることになります。

類型判定の手順

  1. 物的状態の確認:建物等の有無、土地の利用状況
  2. 権利関係の確認:登記簿の調査、契約内容の確認
  3. 所有関係の確認:土地と建物の所有者が同一か否か
  4. 権利制約の確認:借地権、地上権、区分地上権等の有無
  5. 類型の判定:上記を総合して適切な類型を判定

試験での出題ポイント

短答式試験

短答式試験では、類型に関して以下の論点が頻出です。

  • 各類型の定義の正誤問題(特に更地と建付地の区別)
  • 更地の2つの条件:「定着物がない」と「権利の付着がない」の両方を満たすこと
  • 借地権と底地の関係:表裏一体であること
  • 建付地の所有者同一要件:土地と建物の所有者が異なる場合は建付地ではない
  • 類型と評価手法の対応関係

論文式試験

論文式試験では、以下のような出題が考えられます。

  • 不動産の類型の体系を述べ、各類型の定義と相互関係を論じる
  • 更地と建付地の概念の異同を論じる
  • 借地権と底地の価格の関係を論じる
  • 所有と利用の分離が類型に与える影響を論じる

暗記のポイント

  1. 更地の定義:「建物等の定着物がなく、かつ、使用収益を制約する権利の付着していない宅地」
  2. 建付地の定義:「建物等の用に供されている敷地で、建物等及びその敷地が同一の所有者に属している宅地」
  3. 借地権の定義:「建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権」
  4. 底地の定義:「借地権の付着している場合における当該宅地の所有権」
  5. 更地の価格 ≒ 借地権の価格 + 底地の価格(ただし合計は更地以下が一般的)

まとめ

不動産の類型は、権利の態様に基づく分類であり、更地・建付地・借地権・底地・区分地上権等の宅地に関する類型と、建物及びその敷地・借地権付建物・区分所有建物及びその敷地等の複合不動産に関する類型があります。所有と利用の関係を軸に整理することで、各類型の意味と相互関係を体系的に理解できます。

類型の理解は、鑑定評価の出発点であり、不動産の種別とあわせて正確に押さえておく必要があります。各類型の個別の評価手法については、更地の評価建付地の評価借地権の評価の各記事を参照してください。