論文式・演習科目の対策|計算問題の解き方
論文式・演習科目の攻略法とは
論文式試験の演習科目(鑑定理論・演習)は、100点満点の計算問題です。実際の鑑定評価書の作成を模した問題が出題され、三方式による試算価格の算出と調整が求められます。計算手順を正確に定型化し、過去問を繰り返し解くことで、安定した高得点が狙える科目です。
他の論文科目が「書く力」を問うのに対して、演習科目は「計算する力」を問う科目であり、練習量がそのまま得点に反映されるため、努力が報われやすい科目といえます。
出題形式と配点
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 出題数 | 1問(大問形式) |
| 配点 | 100点 |
| 試験時間 | 120分 |
| 持ち込み可能 | 電卓(プログラム機能なし) |
| 解答形式 | 計算過程と結果を記述 |
演習科目では電卓の持ち込みが認められています。12桁以上の電卓を使用することを推奨します。
出題パターン
パターン1:更地の評価
更地の鑑定評価は最も基本的な出題パターンです。
パターン2:貸家及びその敷地の評価
貸家及びその敷地の評価は、収益還元法が重視される出題パターンです。
- DCF法による収益価格の算出
- 直接還元法による収益価格の算出
- 原価法による積算価格の算出
- 取引事例比較法による比準価格の算出(可能な場合)
- 試算価格の調整
パターン3:継続賃料の評価
継続賃料の評価も出題されることがあります。
- 差額配分法
- 利回り法
- スライド法
- 賃貸事例比較法
- 試算賃料の調整
パターン4:借地権・底地の評価
借地権や底地の評価が出題されることもあります。
- 借地権価格の求め方
- 底地価格の求め方
- 更地価格との関係
計算手順の整理
原価法の計算手順
- 再調達原価の算出 – 土地:素地価格+造成費+付帯費用 – 建物:直接工事費+間接工事費+一般管理費+利潤
- 減価修正 – 耐用年数に基づく方法(定額法が一般的) – 観察減価法 – 両者の併用
- 積算価格の算出 – 積算価格 = 再調達原価 − 減価額
原価法は、価格時点における対象不動産の再調達原価を求め、この再調達原価について減価修正を行って対象不動産の試算価格を求める手法である。
― 不動産鑑定評価基準 総論第7章第1節
取引事例比較法の計算手順
- 取引事例の選択(問題文で与えられる)
- 事情補正:特殊な事情がある場合の補正
- 時点修正:取引時点から価格時点への地価変動率を適用
- 標準化補正:取引事例の個別的要因を標準的な画地条件に補正
- 地域要因の比較:事例の所在する地域と対象不動産の所在する地域の比較
- 個別的要因の比較:標準的な画地条件から対象不動産の個別性への補正
- 比準価格の算出
計算式は以下のとおりです。
比準価格 = 取引価格 ×(事情補正)×(時点修正)×(標準化補正)×(地域要因比較)×(個別的要因比較)
収益還元法の計算手順
直接還元法
- 純収益の算出 – 総収益(賃料収入等)− 総費用(維持管理費、公租公課等)
- 還元利回りの決定
- 収益価格の算出 – 収益価格 = 純収益 ÷ 還元利回り
DCF法
- 保有期間中のキャッシュフローの算出(各年度の純収益)
- 復帰価格の算出(保有期間終了時の売却価格)
- 割引率の決定
- 現在価値の算出
収益価格 = Σ(各年度の純収益 ÷ (1+割引率)^n)+ 復帰価格 ÷ (1+割引率)^N
試算価格の調整
三方式で求めた試算価格を調整して、最終的な鑑定評価額を決定します。
調整の着眼点
- 各手法の適用において採用した資料の特性と限界
- 各手法に共通する一般的要因の分析の適否
- 単価と総額との関連の適否
- 対象不動産の市場の特性と各手法の適合性
調整の記述例
調整部分は文章で記述する必要があるため、計算力だけでなく記述力も求められます。
電卓の使い方のコツ
推奨電卓
- 12桁以上の一般電卓
- GT(グランドトータル)機能付き
- メモリー機能(M+、M-、MR)付き
電卓テクニック
| テクニック | 使用場面 |
|---|---|
| メモリー機能 | DCF法の各年度の現在価値を累計 |
| GT機能 | 複数の計算結果の合計 |
| 定数計算 | 同じ割引率で複数年度の現在価値を計算 |
| 検算 | 計算結果を別ルートで検証 |
よくある計算ミス
- 小数点の位置ミス:割合(%)と小数の変換ミス
- 端数処理ミス:四捨五入の桁数を間違える
- 累乗の計算ミス:(1+r)^n の計算ミス
- 単位の混同:円/㎡と総額の混同
試験での出題ポイント
短答式試験
短答式の鑑定理論では計算問題は出題されませんが、三方式の計算手順に関する知識は条文問題として出題されることがあります。演習の学習を通じて三方式の理解が深まることで、短答式の得点向上にもつながります。
論文式試験
演習科目で高得点を取るためのポイントは以下のとおりです。
- 計算過程を丁寧に記述する:結果だけでなく、計算過程も採点対象
- 部分点を意識する:途中で計算ミスをしても、正しい手順を踏んでいれば部分点が期待できる
- 単位を明記する:円/㎡、円、%などの単位を必ず書く
- 端数処理を指示に従う:問題文の指示(四捨五入の桁数など)に必ず従う
- 試算価格の調整を書く:計算だけでなく、調整の文章も配点がある
過去問演習の重要性
演習科目は、過去問の演習が最も効果的な対策です。
過去問の活用法
- 過去10年分を2周以上:同じ問題を繰り返すことで計算手順が定着する
- 時間を計って解く:本番と同じ120分で通して解く練習を行う
- 計算ミスの原因を分析する:どの段階でミスが発生したかを記録する
- 模範解答と比較する:計算過程の記述方法を模範解答から学ぶ
出題パターンの傾向
近年の出題パターンを分析すると、以下の傾向が見られます。
- DCF法の出題頻度が増加している
- 証券化対象不動産の評価に関連する出題がある
- 複数の類型を組み合わせた出題(更地+貸家及びその敷地など)がある
暗記のポイント
演習科目における暗記すべき重要事項をまとめます。
- 三方式の計算公式:各方式の基本公式を完全に暗記する
- DCF法の現在価値計算式:複利現価率と年金現価率の使い分け
- 減価修正の計算式:定額法・定率法の計算式
- 事情補正・時点修正の順序:取引事例比較法の補正順序を正確に暗記
- 調整の着眼点4項目:試算価格の調整で記述すべき4つの着眼点
- 総費用の内訳項目:収益還元法で控除する費用項目の一覧(維持管理費、修繕費、公租公課、損害保険料、空室等損失相当額など)
まとめ
演習科目は、練習量が得点に直結する科目です。
- 出題形式:大問1問・100点・120分・電卓持ち込み可
- 出題パターン:更地、貸家及びその敷地、継続賃料、借地権・底地
- 計算手順:原価法→取引事例比較法→収益還元法の順で計算
- 試算価格の調整:計算結果だけでなく、文章での記述も必要
- 過去問演習:過去10年分を2周以上解くことが合格の目安
鑑定理論の論文対策と合わせて、鑑定理論全体で200点中120点以上を目標にしましょう。演習科目で安定して高得点を取れるようになれば、合格は大きく近づきます。