論文式・鑑定理論の攻略法とは

論文式試験の鑑定理論は、論文2問と演習1問の計3問で構成されます。論文問題では、不動産鑑定評価基準の条文を正確に引用したうえで、その趣旨を説明し、具体的な事例に当てはめる能力が問われます。短答式で覚えた条文を「書ける」レベルまで引き上げることが合格の鍵です。

出題形式と配点

項目 内容
論文問題 2問(各50点、計100点)
演習問題 1問(100点)
合計 200点
試験時間 論文:120分、演習:120分(別日程の場合あり)

論文2問と演習1問は同じ「鑑定理論」科目として合算されます。鑑定理論は論文式試験全体の中で最も配点が高く、合否を大きく左右する科目です。

答案の書き方:3段構成が基本

第1段階:条文の引用

まず、問われているテーマに関連する基準の条文を正確に引用します。

正常価格とは、市場性を有する不動産について、現実の社会経済情勢の下で合理的と考えられる条件を満たす市場で形成されるであろう市場価値を表示する適正な価格をいう。

― 不動産鑑定評価基準 総論第5章第3節

このように、条文をそのまま引用する(または要約して引用する)ことで、知識の正確性を示します。

第2段階:趣旨の説明

次に、その条文の趣旨(なぜそのような規定があるのか)を説明します。

  • なぜその規定が設けられているのか
  • どのような問題を防止・解決するためか
  • 鑑定評価の体系の中でどのような位置づけか

第3段階:当てはめ(事例への適用)

最後に、問題で問われている具体的な事例や論点に対して、条文と趣旨を踏まえた結論を述べます。

答案構成の具体例

たとえば「最有効使用の意義と判定基準について述べよ」という問題の場合:

  1. 条文引用:最有効使用の定義を基準から引用
  2. 趣旨説明:最有効使用が鑑定評価の前提となる理由を説明
  3. 判定基準最有効使用の判定における客観的・合理的な要件を具体的に述べる
  4. 具体例:建物と敷地の最有効使用が異なる場合の取扱いなどを論じる

頻出論点

三方式の意義と適用

三方式(原価法・取引事例比較法・収益還元法)の意義、適用方法、適用が困難な場合の対応は、最も出題頻度の高い論点の一つです。

各論の類型別評価

各不動産類型(更地、建付地、借地権、貸家及びその敷地など)の評価方法は頻出です。

類型 出題頻度 主要論点
更地 三方式の適用、最有効使用
貸家及びその敷地 収益還元法の適用、自用との比較
借地権 借地権価格の求め方
区分所有建物 敷地利用権との一体評価
底地 借地権との関係

証券化対象不動産の評価

証券化対象不動産の鑑定評価は、近年の出題頻度が高まっている論点です。

  • DCF法の適用が原則
  • 収益費用の査定における留意点
  • エンジニアリング・レポートの活用
  • 鑑定評価報告書の記載事項

継続賃料の評価

賃料の評価、特に継続賃料の評価も重要な出題分野です。

  • 差額配分法
  • 利回り法
  • スライド法
  • 賃貸事例比較法
  • 継続賃料と新規賃料の関係

時間配分

論文式の鑑定理論(論文2問)の時間配分は以下のとおりです。

段階 時間 内容
問題の読み込み 各5分 出題意図の把握
答案構成 各10分 骨格(見出し・キーワード)の作成
答案執筆 各40分 実際の記述
見直し 各5分 誤字脱字・論理の確認

合計120分のうち、答案構成の段階が最も重要です。いきなり書き始めると、途中で論理が破綻したり、重要な論点を書き漏らしたりするリスクがあります。

答案構成のコツ

  • 問題用紙の余白に箇条書きで骨格を作る
  • 条文のキーワードを列挙する
  • 結論を先に決めてから、理由づけを考える
  • 時間が足りない場合は、箇条書きでポイントだけでも記述する

答案練習の方法

ステップ1:答案構成の練習

まずは制限時間を設けずに、過去問の答案構成を作る練習を行います。

  1. 問題を読み、出題意図を把握する
  2. 関連する条文を列挙する
  3. 答案の骨格(見出し構成)を作る
  4. 模範答案と比較し、不足している論点を確認する

ステップ2:時間を意識した練習

答案構成に慣れたら、実際に答案を書く練習を行います。

  • 最初は時間無制限で丁寧に書く
  • 次に90分(1問あたり45分)で書く
  • 最終的に60分(1問あたり30分)で書けるようにする

ステップ3:添削を受ける

可能であれば、答案の添削を受けることを強く推奨します。

  • 予備校の答練講座を利用する
  • 合格者に添削を依頼する
  • 添削が難しい場合は、模範答案と自分の答案を厳密に比較する

試験での出題ポイント

短答式試験

短答式の鑑定理論は条文の正誤判定が中心であるため、論文式の学習とは別に、肢別問題集での反復演習が必要です。ただし、論文式の準備過程で条文の理解が深まるため、相乗効果が期待できます。

論文式試験

論文式の鑑定理論で高得点を取るためのポイントは以下のとおりです。

  • 条文の正確な引用:一字一句の正確さが評価される
  • 論理的な構成:条文→趣旨→当てはめの流れを崩さない
  • 網羅性:出題者が期待する論点を漏らさない
  • 具体例の提示:抽象的な説明だけでなく、具体的な場面を示す
  • 字の読みやすさ:丁寧な字で書くことも評価に影響する

暗記のポイント

論文式の鑑定理論で暗記すべき重要事項は以下のとおりです。

  • 基準の章立て構造:総論(第1章〜第8章)と各論(第1章〜第3章)の体系を完全に把握
  • 定義規定の完全暗記:価格の4類型、三方式、最有効使用など主要な定義文をそのまま書けるようにする
  • 論文で使えるフレーズ:「〜の観点から」「〜に鑑みれば」「〜を踏まえ」など、論文で使う接続表現
  • 類型別評価の手順:各不動産類型ごとの評価手順を箇条書きで暗記
  • 頻出テーマの答案骨格:過去10年分の出題テーマについて、答案の骨格パターンを暗記

鑑定評価基準の暗記術も参考にしてください。

まとめ

論文式の鑑定理論は、鑑定士試験の中核をなす最重要科目です。

  • 出題形式:論文2問(各50点)+演習1問(100点)=計200点
  • 答案の書き方:条文引用→趣旨説明→当てはめの3段構成
  • 頻出論点:三方式、類型別評価、証券化対象不動産、継続賃料
  • 時間配分:答案構成に10分、執筆に40分が目安
  • 練習法:答案構成→時間付き執筆→添削のステップアップ

条文を「覚える」段階から「書ける」段階へ、さらに「論じられる」段階へと引き上げていくことが、論文式合格の鍵です。民法会計学経済学など他の論文科目とのバランスも考えながら、計画的に学習を進めましょう。