開発法の適用手順と留意点
開発法の適用手順の概要
開発法とは、更地の鑑定評価において用いられる手法の一つで、対象地に最有効使用の建物を建築することを想定し、開発完了後の不動産価格から建設費用・付帯費用等を控除して更地価格を求める方法です。不動産鑑定士試験では、開発法の適用手順、各項目の査定方法、適用が有効な場面が頻出論点として出題されます。
開発法は、更地の鑑定評価について、当該土地に建物の建築を想定し、当該複合不動産の価格から当該建物の建築費等を控除して求めるものである。
― 不動産鑑定評価基準 各論第1章第1節
開発法の基本的な考え方
開発法とは
開発法は、不動産の開発(建築・造成)を前提として、完成後の価格(開発完了後の複合不動産価格)から、開発に要する費用を差し引いて土地の価格を逆算する手法です。
デベロッパー(開発事業者)が土地を購入して建物を建てる場合の「いくらまでなら土地を買えるか」という発想に基づいています。
基本算式
更地価格 = 開発完了後の不動産価格 − 建設費用 − 付帯費用 − 資金調達費用 − 開発利益
この算式を別の視点で整理すると以下のようになります。
開発完了後の不動産価格 = 土地取得費 + 建設費用 + 付帯費用 + 資金調達費用 + 開発利益
つまり、開発後の不動産価格がわかっている場合に、そこから逆算して「土地に帰属する価値」を求めるのが開発法です。
開発法の適用手順
開発法は、以下の手順で適用します。
手順1:最有効使用の判定
まず、対象地の最有効使用を判定します。対象地にどのような建物を建築するのが最も合理的かを検討し、想定する建物の用途・規模・構造を決定します。
| 検討項目 | 内容 |
|---|---|
| 法令上の制限 | 用途地域、容積率、建ぺい率、高さ制限等 |
| 物理的な条件 | 地形、地盤、敷地面積、間口・奥行 |
| 市場の需要 | 地域における需要の強い用途 |
| 経済的な合理性 | 開発の採算性が確保できるか |
手順2:開発完了後の不動産価格の査定
想定した建物が完成した状態での複合不動産の価格(マンションの場合は各住戸の分譲価格の合計)を査定します。
査定方法としては以下が考えられます。
- 取引事例比較法: 類似の新築マンション・建売住宅等の取引事例から比準
- 収益還元法: 賃貸用不動産の場合は、完成後の収益価格を査定
- 分譲価格の査定: マンション素地の場合は、各住戸の分譲価格を査定して合計
手順3:建設費用の査定
想定した建物の建設費用(建築工事費)を査定します。
建設費用 = 建築工事費単価 × 延床面積
建築工事費には、本体工事費のほか、電気・給排水等の設備工事費、外構工事費等が含まれます。
手順4:付帯費用の査定
開発に伴う付帯費用を査定します。
| 項目 | 内容 | 目安 |
|---|---|---|
| 設計・監理費 | 建築設計料、工事監理費 | 建設費の5〜10% |
| 開発許可関連費 | 各種申請費用、調査費用 | 数百万円程度 |
| 広告宣伝費 | 分譲マンションの場合の販売費 | 分譲総額の3〜5% |
| 販売手数料 | 仲介手数料等 | 分譲総額の3%程度 |
| 登記費用・公租公課 | 各種登記費用、事業期間中の税金 | 個別に査定 |
手順5:資金調達費用の査定
開発事業に必要な資金の調達コスト(借入金利息等)を査定します。
資金調達費用 = 投下資本額 × 借入金利 × 開発期間(年)
投下資本の投入タイミングを考慮して、平均投下資本額を算定するのが一般的です。
手順6:開発利益の査定
事業リスクに対する適正な報酬として開発利益を控除します。
開発利益 = 投下資本総額 × 開発利益率
開発利益率は、事業のリスクの大きさに応じて設定され、一般的に10〜20%程度とされています。
計算例:戸建住宅用地の場合
【前提条件】
・対象地: 第1種低層住居専用地域、200m²
・想定建物: 木造2階建住宅(延床面積120m²)
・開発期間: 6ヶ月(0.5年)
・借入金利: 3.0%
【開発完了後の不動産価格の査定】
類似の新築戸建住宅の取引事例から比準
→ 開発完了後の価格: 50,000,000円
【建設費用】
建築工事費: 250,000円/m² × 120m² = 30,000,000円
【付帯費用】
設計・監理費: 30,000,000 × 8% = 2,400,000円
登記費用等: = 300,000円
公租公課(期間中): = 150,000円
──────────────────────────────────
付帯費用合計: 2,850,000円
【資金調達費用】
平均投下資本 × 金利 × 期間
≒ (30,000,000 + 2,850,000) × 0.5 × 3.0% × 0.5年
≒ 246,000円
【開発利益】
(30,000,000 + 2,850,000) × 15% = 4,928,000円
【更地価格(開発法)】
50,000,000 − 30,000,000 − 2,850,000 − 246,000 − 4,928,000
= 11,976,000円
≒ 12,000,000円
1m²あたり: 12,000,000 ÷ 200 = 60,000円/m²
計算例:マンション素地の場合
【前提条件】
・対象地: 商業地域、500m²
・想定建物: RC造10階建マンション(延床面積3,000m²、住戸数40戸)
・販売可能面積: 2,400m²(レンタブル比80%)
・開発期間: 2年
・借入金利: 2.5%
【開発完了後の不動産価格の査定】
分譲住戸の平均販売単価: 800,000円/m²
分譲総額: 800,000 × 2,400 = 1,920,000,000円
【建設費用】
建築工事費: 400,000円/m² × 3,000m² = 1,200,000,000円
【付帯費用】
設計・監理費: 1,200,000,000 × 7% = 84,000,000円
広告宣伝費: 1,920,000,000 × 4% = 76,800,000円
販売手数料: 1,920,000,000 × 3% = 57,600,000円
開発許可関連: = 5,000,000円
登記・公租公課: = 3,000,000円
──────────────────────────────────────
付帯費用合計: 226,400,000円
【資金調達費用】
(1,200,000,000 + 226,400,000) × 0.5 × 2.5% × 2年
≒ 35,660,000円
【開発利益】
投下資本 × 開発利益率
(1,200,000,000 + 226,400,000) × 12% = 171,168,000円
【更地価格(開発法)】
1,920,000,000 − 1,200,000,000 − 226,400,000 − 35,660,000 − 171,168,000
= 286,772,000円
≒ 287,000,000円
1m²あたり: 287,000,000 ÷ 500 = 574,000円/m²
開発法の適用が有効な場面
開発法の適用が特に有効とされる場面は以下の通りです。
- 大規模な更地: マンション素地、戸建分譲用地等
- 造成前の素地: 宅地見込地、農地転用予定地
- 再開発用地: 老朽建物の取壊しと再建築が見込まれる土地
- 取引事例が乏しい地域: 取引事例比較法の適用が困難な場合の補完手法
開発法の限界
一方、開発法には以下の限界もあります。
- 想定する建物の内容によって結果が大きく異なる
- 開発利益率の査定に恣意性が入りやすい
- 小規模な宅地には適用が困難(開発の余地が小さい)
- 原価法や取引事例比較法と異なる結論が出ることがある
開発法と他の手法との関係
原価法との違い
| 項目 | 開発法 | 原価法 |
|---|---|---|
| アプローチ | 完成後の価格から逆算(トップダウン) | 費用を積み上げ(ボトムアップ) |
| 求めるもの | 土地の価格 | 建物及びその敷地の積算価格 |
| 減価修正 | 不要(新築を想定) | 必要(既存建物の減価を反映) |
取引事例比較法との補完関係
開発法は、取引事例比較法で求めた比準価格の検証手段としても活用されます。特にマンション素地など、更地としての取引事例が少ない場合に、開発法による価格を比準価格と比較検討することで評価の精度を高めることができます。
試験での出題ポイント
短答式試験
- 開発法の定義と基本算式の正誤判定
- 開発法の適用が有効な不動産の種類
- 控除する項目(建設費用・付帯費用・資金調達費用・開発利益)の範囲
- 開発法と原価法の違い
論文式試験
- 開発法の意義・手順を基準の文言に即して記述
- 更地の鑑定評価における開発法の位置づけ
- 開発完了後の不動産価格の査定方法
暗記のポイント
- 基本算式: 更地価格 = 開発完了後の価格 − 建設費用 − 付帯費用 − 資金調達費用 − 開発利益
- 適用場面: 大規模更地、マンション素地、宅地見込地
- 最有効使用の判定: 法令上の制限、物理的条件、市場需要、経済的合理性を総合判断
- 開発利益: 事業リスクに対する適正な報酬として控除
- 基準の位置: 各論第1章(更地の鑑定評価)に規定
まとめ
開発法は、更地の鑑定評価において開発完了後の不動産価格から建設費用等を控除して土地価格を逆算する手法です。マンション素地や大規模な宅地見込地の評価に特に有効であり、取引事例比較法や収益還元法と併用して適用されます。試験では、基本算式の各項目の意味と査定方法、適用が有効な場面について問われるため、計算例を含めて理解を深めておきましょう。