土地残余法による更地価格の求め方|計算例付き
土地残余法とは
土地残余法は、収益還元法の一手法であり、建物及びその敷地の純収益から建物に帰属する純収益を控除し、残余の純収益を土地の還元利回りで還元して更地の収益価格を求める方法です。不動産鑑定士試験では、建物残余法との違い、計算手順、適用の留意点が問われます。
土地残余法は、建物及びその敷地が一体として生み出す純収益から、建物に帰属する純収益を控除した残余の純収益を土地の還元利回りで還元して、対象地の試算価格を求める方法である。
― 不動産鑑定評価基準 各論第1章第1節
土地残余法の基本的な考え方
残余法とは
残余法とは、複合不動産(土地+建物)が生み出す純収益を、土地と建物のそれぞれに配分し、一方の構成要素に帰属する純収益から当該構成要素の価格を求める手法です。残余法には以下の2つがあります。
| 手法 | 求めるもの | 控除するもの |
|---|---|---|
| 土地残余法 | 土地の価格 | 建物に帰属する純収益 |
| 建物残余法 | 建物の価格 | 土地に帰属する純収益 |
土地残余法の位置づけ
土地残余法は、更地の鑑定評価において収益還元法を適用する方法の一つです。更地は単独では収益を生まないため、建物の建築を想定して収益価格を求める必要があり、その方法として土地残余法が用いられます。
土地残余法の基本算式
算式
土地の収益価格 = (複合不動産の純収益 − 建物に帰属する純収益) ÷ 土地の還元利回り
これを分解すると以下のようになります。
(1) 複合不動産の純収益 = 総収益 − 総費用
(2) 建物に帰属する純収益 = 建物価格 × 建物の還元利回り
(3) 土地に帰属する純収益 = (1) − (2)
(4) 土地の収益価格 = (3) ÷ 土地の還元利回り
建物に帰属する純収益の考え方
建物に帰属する純収益は、建物の再調達原価(または現在の建物価格)に建物の還元利回りを乗じて求めます。ここでいう建物の還元利回りには、建物の償却分(減価償却費相当)が含まれる場合と含まれない場合があり、適用にあたっては留意が必要です。
建物に帰属する純収益 = 建物価格 × (建物の純還元利回り + 償却率)
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| 建物の純還元利回り | 建物への投資に対する収益率(償却前) |
| 償却率 | 建物の経済的耐用年数に基づく年間償却率 |
計算例1:事務所ビル用地の場合
【前提条件】
・対象地: 商業地域の更地 300m²
・想定建物: RC造5階建事務所ビル
延床面積: 900m²
賃貸可能面積: 720m²(レンタブル比80%)
建物価格(再調達原価): 360,000,000円
経済的耐用年数: 50年
【総収益の査定】
支払賃料: 4,000円/m²・月 × 720m² × 12 = 34,560,000円
共益費: 600円/m²・月 × 720m² × 12 = 5,184,000円
駐車場収入: 30,000円/台・月 × 10台 × 12 = 3,600,000円
一時金運用益: = 500,000円
一時金償却額: = 1,200,000円
──────────────────────────────────────
潜在総収益: 45,044,000円
空室等損失: 45,044,000 × 5% = 2,252,000円
──────────────────────────────────────
有効総収益: 42,792,000円
【総費用の査定】
維持管理費: = 3,500,000円
水道光熱費: = 2,800,000円
修繕費: = 2,500,000円
公租公課: = 4,200,000円
損害保険料: = 400,000円
──────────────────────────────────────
総費用: 13,400,000円
【複合不動産の純収益】
42,792,000 − 13,400,000 = 29,392,000円
【建物に帰属する純収益】
建物の純還元利回り: 4.0%
償却率: 1/50年 = 2.0%
建物に帰属する純収益 = 360,000,000 × (4.0% + 2.0%)
= 360,000,000 × 6.0%
= 21,600,000円
【土地に帰属する純収益】
29,392,000 − 21,600,000 = 7,792,000円
【土地の収益価格】
土地の還元利回り: 3.5%
7,792,000 ÷ 3.5% = 222,629,000円
≒ 223,000,000円
1m²あたり: 223,000,000 ÷ 300 ≒ 743,000円/m²
計算例2:住宅用地の場合
【前提条件】
・対象地: 住居地域の更地 200m²
・想定建物: 木造2階建共同住宅
延床面積: 200m²
賃貸可能面積: 180m²(レンタブル比90%)
戸数: 6戸(各30m²)
建物価格(再調達原価): 30,000,000円
経済的耐用年数: 30年
【複合不動産の純収益】
賃料収入: 70,000円/戸・月 × 6戸 × 12 = 5,040,000円
共益費: 5,000円/戸・月 × 6戸 × 12 = 360,000円
駐車場収入: 10,000円/台・月 × 4台 × 12 = 480,000円
一時金関連: = 200,000円
──────────────────────────────────
潜在総収益: 6,080,000円
空室等損失: 6,080,000 × 8% = 486,000円
──────────────────────────────────
有効総収益: 5,594,000円
総費用:
維持管理費: 400,000円
修繕費: 350,000円
公租公課: 500,000円
損害保険料: 100,000円
──────────────────────────────────
総費用: 1,350,000円
純収益: 5,594,000 − 1,350,000 = 4,244,000円
【建物に帰属する純収益】
建物の純還元利回り: 5.0%
償却率: 1/30年 ≒ 3.3%
建物に帰属する純収益 = 30,000,000 × (5.0% + 3.3%)
= 30,000,000 × 8.3%
= 2,490,000円
【土地に帰属する純収益】
4,244,000 − 2,490,000 = 1,754,000円
【土地の収益価格】
土地の還元利回り: 4.0%
1,754,000 ÷ 4.0% = 43,850,000円
≒ 44,000,000円
1m²あたり: 44,000,000 ÷ 200 = 220,000円/m²
土地残余法の適用上の留意点
建物価格の査定の重要性
土地残余法では、建物価格の査定が結果を大きく左右します。建物価格が高く見積もられると建物帰属の純収益が増加し、土地の収益価格は低下します。逆に建物価格が低いと土地の価格は上昇します。
【感度分析の例】
複合不動産の純収益: 29,392,000円(固定)
建物価格 300,000,000円の場合:
建物帰属純収益: 300,000,000 × 6% = 18,000,000円
土地帰属純収益: 29,392,000 − 18,000,000 = 11,392,000円
土地価格: 11,392,000 ÷ 3.5% ≒ 325,000,000円
建物価格 360,000,000円の場合:
建物帰属純収益: 360,000,000 × 6% = 21,600,000円
土地帰属純収益: 29,392,000 − 21,600,000 = 7,792,000円
土地価格: 7,792,000 ÷ 3.5% ≒ 223,000,000円
→ 建物価格が20%変わると、土地価格は約1億円変動
還元利回りの設定
土地と建物では、還元利回りの水準が異なることに留意が必要です。
| 対象 | 還元利回りの特徴 |
|---|---|
| 土地 | 非償却資産のため純粋な投資利回り。一般に低い |
| 建物 | 償却資産のため償却率を含む。一般に高い |
最有効使用との整合性
土地残余法で想定する建物は、対象地の最有効使用に合致するものでなければなりません。最有効使用と異なる建物を想定すると、土地の価格を適切に把握できなくなります。
土地残余法と開発法の比較
| 項目 | 土地残余法 | 開発法 |
|---|---|---|
| アプローチ | 収益面から土地価格を求める | 費用面から土地価格を逆算する |
| 基礎とするもの | 複合不動産の純収益 | 開発完了後の不動産価格 |
| 控除するもの | 建物に帰属する純収益 | 建設費用・付帯費用・開発利益 |
| 適用場面 | 賃貸用不動産の想定が合理的な場合 | 分譲を想定する場合(マンション素地等) |
両手法とも更地の鑑定評価に用いられますが、アプローチが異なるため、両者を併用して検証することが望ましいとされています。
試験での出題ポイント
短答式試験
- 土地残余法の定義と算式の正誤判定
- 建物に帰属する純収益の求め方(建物価格 × 還元利回り)
- 土地残余法と建物残余法の違い
- 土地と建物の還元利回りの関係
論文式試験
- 土地残余法の意義・手順を基準の文言に即して記述
- 更地の鑑定評価における収益還元法の適用方法
- 土地残余法の適用上の留意点(建物価格の査定の重要性等)
暗記のポイント
- 基本算式: 土地の収益価格 = (複合不動産の純収益 − 建物帰属純収益) ÷ 土地の還元利回り
- 建物帰属純収益: 建物価格 × (建物の純還元利回り + 償却率)
- 土地は非償却資産: 土地の還元利回りに償却率は含まない
- 建物は償却資産: 建物の還元利回りには償却率を含む
- 最有効使用: 想定する建物は最有効使用に合致すること
まとめ
土地残余法は、複合不動産の純収益から建物に帰属する純収益を控除し、残余を土地の還元利回りで還元して更地の収益価格を求める手法です。建物価格の査定精度が結果に大きく影響するため、原価法で求めた建物の積算価格と整合させることが重要です。開発法との併用による検証も含め、更地の鑑定評価における各手法の位置づけを体系的に理解しておきましょう。