自然公園法の概要|特別地域と普通地域
自然公園法の概要
自然公園法は、不動産鑑定士試験の行政法規科目で出題される法律の一つです。最も重要なポイントは、自然公園の地域区分(特別保護地区・特別地域・普通地域)ごとに行為規制の厳しさが異なることを正確に理解することです。
自然公園法による規制は、公園区域内の不動産の鑑定評価において利用制限による減価要因として価格形成に直接的な影響を与えます。特に特別保護地区や第1種特別地域では、建築行為が原則として認められないため、不動産の利用可能性が著しく制約されます。
本記事では、自然公園法の目的から公園の種類、地域区分と行為規制、鑑定評価との関連、試験での出題ポイントまでを体系的に解説します。
自然公園法の目的
自然公園法は、優れた自然の風景地を保護するとともに、その利用の増進を図ることを目的とする法律です。
この法律は、優れた自然の風景地を保護するとともに、その利用の増進を図ることにより、国民の保健、休養及び教化に資するとともに、生物の多様性の確保に寄与することを目的とする。
― 自然公園法 第1条
自然公園法の特徴は、保護と利用の両立を目指している点にあります。単に自然を保護するだけでなく、国民の保健・休養・教化のために自然を活用することも重視しています。
自然公園の種類
自然公園法に基づく自然公園は、以下の3種類に分類されます。
| 種類 | 指定権者 | 箇所数 | 面積(概数) | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| 国立公園 | 環境大臣 | 34箇所 | 約219万ha | わが国を代表する優れた自然の風景地 |
| 国定公園 | 環境大臣(都道府県の申出) | 58箇所 | 約149万ha | 国立公園に準ずる優れた自然の風景地 |
| 都道府県立自然公園 | 都道府県知事 | 311箇所 | 約197万ha | 都道府県を代表する優れた自然の風景地 |
自然公園の総面積は約565万ヘクタールで、国土面積の約15%を占めています。この広大な区域に自然公園法の規制が及ぶため、不動産鑑定士として行為規制の内容を理解しておくことは重要です。
国立公園の管理体系
国立公園は、環境大臣が公園計画に基づいて管理します。管理の実施は環境省の直轄で行われますが、都道府県知事等に管理の一部を委任できます。
国定公園は、環境大臣が指定しますが、管理は都道府県が行う点が国立公園との違いです。
地域区分と行為規制
地域区分の体系
自然公園法では、公園区域内を保護の必要性に応じて以下の地域に区分し、段階的な規制を設けています。
| 地域区分 | 規制の厳しさ | 規制方式 |
|---|---|---|
| 特別保護地区 | 最も厳しい | 許可制 |
| 第1種特別地域 | 非常に厳しい | 許可制 |
| 第2種特別地域 | 厳しい | 許可制 |
| 第3種特別地域 | やや厳しい | 許可制 |
| 普通地域 | 比較的緩やか | 届出制 |
特別地域と普通地域の最大の違いは、規制方式が「許可制」か「届出制」かという点です。この違いは試験で頻出の論点です。
特別保護地区の行為規制
特別保護地区は、特別地域内で特に優れた自然環境を保護するために指定される区域です。最も厳格な規制が課されます。
特別保護地区内で以下の行為を行う場合は、環境大臣の許可(国定公園の場合は都道府県知事の許可)が必要です。
- 建築物その他の工作物の新築・改築・増築
- 木竹の伐採
- 土石の採取、鉱物の掘採
- 河川・湖沼の水位・水量の増減
- 植物の採取・損傷
- 動物の捕獲・殺傷、卵の採取・損傷
- 落葉・落枝の採取
- 火入れ、たき火
- 車馬・動力船の使用、航空機の着陸
特別保護地区では、落葉の採取や火入れまでもが規制対象となる点が特徴的です。
特別地域の行為規制
特別地域内で以下の行為を行う場合は、環境大臣の許可(国定公園の場合は都道府県知事の許可)が必要です(自然公園法第20条第3項)。
| 行為 | 第1種 | 第2種 | 第3種 |
|---|---|---|---|
| 建築物の新築・改築・増築 | 原則不許可 | 一定規模以下は許可 | 比較的許可されやすい |
| 木竹の伐採 | 原則不許可 | 択伐に限り許可 | 一定面積以下で許可 |
| 土石の採取 | 原則不許可 | 制限あり | 制限あり |
| 広告物の設置 | 不許可 | 制限あり | 制限あり |
| 土地の形質変更 | 原則不許可 | 制限あり | 制限あり |
第1種特別地域は、特別保護地区に準じた厳しい規制が課されます。現在の景観を維持するために、原則として建築行為が認められません。
第2種特別地域は、農林漁業活動について一定の配慮がなされ、小規模な建築行為等は許可される場合があります。
第3種特別地域は、特別地域の中で最も規制が緩やかであり、風致の維持に支障がない範囲で一定の行為が許可されます。
普通地域の行為規制
普通地域は、特別地域に指定されていない公園区域内の地域です。普通地域では特別地域と異なり、届出制が採用されています。
以下の行為を行おうとする者は、行為の着手の日の30日前までに環境大臣(国定公園の場合は都道府県知事)に届出をしなければなりません(自然公園法第33条第1項)。
- 一定規模を超える建築物その他の工作物の新築・改築・増築
- 特別地域内の河川・湖沼の水位・水量に影響を及ぼすおそれのある行為
- 広告物の設置
- 土石の採取、鉱物の掘採
- 土地の形質変更
- 海面の埋立て・干拓
届出を受けた場合、環境大臣(都道府県知事)は風景の保護のために必要な限度において、必要な措置を命じ、または禁止・制限することができます。
海域公園地区
自然公園法は、陸域だけでなく海域の保護も定めています。海域公園地区は、国立公園または国定公園の海域の景観を保護するために指定される地区です。
海域公園地区内では、以下の行為に環境大臣(国定公園の場合は都道府県知事)の許可が必要です。
- 海底の形質変更
- 鉱物・土石の採取
- 熱帯魚・サンゴ等の捕獲・採取
- 工作物の新築・改築
自然公園法と鑑定評価
地域区分と不動産価格への影響
自然公園法による規制は、不動産の価格形成要因として重要な意味を持ちます。地域区分によって影響の程度は大きく異なります。
| 地域区分 | 価格への影響 | 影響の程度 |
|---|---|---|
| 特別保護地区 | 利用がほぼ不可能なため、極めて大きな減価要因 | 非常に大 |
| 第1種特別地域 | 建築行為が原則不可のため、大きな減価要因 | 大 |
| 第2種特別地域 | 一定の建築制限による減価 | 中 |
| 第3種特別地域 | 比較的軽微な制限による影響 | 小〜中 |
| 普通地域 | 届出制のため影響は限定的 | 小 |
鑑定評価上の留意点
不動産鑑定士が自然公園区域内の土地を評価する際には、以下の点に留意する必要があります。
- 地域区分の確認:対象地がどの地域区分に該当するかを正確に調査する
- 許可の取得可能性:建築行為等の許可が得られる見込みがあるかどうかを検討する
- 最有効使用の判定:行為規制を踏まえた上で、対象地の最有効使用を判定する
- 観光価値との関係:自然公園に指定されていることが周辺地域の観光価値を高め、間接的に地価にプラスの影響を与える場合もある
特に、規制によるマイナスの影響と、自然公園としてのブランド価値によるプラスの影響の両面を考慮することが求められます。
試験での出題ポイント
短答式試験
短答式試験では、以下の論点が頻出です。
- 自然公園の3種類:国立公園・国定公園・都道府県立自然公園の区分と指定権者
- 地域区分の種類:特別保護地区・第1種〜第3種特別地域・普通地域
- 許可制と届出制の違い:特別地域は許可制、普通地域は届出制
- 許可権者:国立公園は環境大臣、国定公園は都道府県知事
- 届出の期限:普通地域では行為着手の30日前まで
- 特別保護地区の規制対象:落葉採取や火入れまで含まれる
論文式試験
論文式試験では、以下のテーマでの出題が想定されます。
- 自然公園法の地域区分制度の趣旨と行為規制の段階構造
- 自然公園法による規制が不動産の鑑定評価に与える影響
- 都市計画法の用途地域制度との比較(面的規制の体系)
暗記のポイント
- 自然公園は3種類:国立公園(環境大臣指定)・国定公園(環境大臣指定・都道府県管理)・都道府県立自然公園
- 地域区分は5段階:特別保護地区 > 第1種 > 第2種 > 第3種 特別地域 > 普通地域
- 規制方式:特別地域は許可制、普通地域は届出制
- 許可権者:国立公園は環境大臣、国定公園は都道府県知事
- 届出期限:行為着手の30日前
- 国立公園の数:34箇所(2024年時点)
まとめ
自然公園法は、国立公園・国定公園・都道府県立自然公園の3種類の自然公園を設定し、地域区分に応じた段階的な行為規制を課す法律です。特別地域では許可制、普通地域では届出制が採用されており、特別保護地区や第1種特別地域では建築行為が原則として認められません。
不動産鑑定士試験では、地域区分ごとの規制の違い、許可制と届出制の区別、許可権者の区分が問われます。鑑定評価においては、対象地の地域区分を正確に把握し、利用制限が価格形成要因として与える影響を適切に評価することが重要です。