林地の鑑定評価とは

不動産鑑定士試験において、林地の鑑定評価では4つの種別に応じた評価手法の使い分けと、立木(りゅうぼく)の取扱いが最も重要なポイントです。林地は農地と同様に取引事例比較法が中心的手法となりますが、立木との一体評価が求められる場面が多く、素材生産方式や山元立木価格といった林業特有の概念の理解が不可欠です。

林地の鑑定評価は、林地の種別に応じ、当該林地の存する地域の標準的使用及び標準的画地に係る林地の正常価格を基に、各画地の個別的要因を比較考量して行うものとする。

― 不動産鑑定評価基準 各論第1章第1節


林地の種別と特徴

林地は不動産鑑定評価基準において、以下の4種別に分類されます。農地の種別と同様に、所在地域と利用状況に応じて分類が異なります。

林地の種別一覧

種別 所在地域 特徴 価格形成の中心
都市近郊林地 都市周辺 宅地化圧力が高い 宅地見込地としての要素
農村林地 農村地域 農業との兼業利用 農村の経済環境
林業本場林地 林業地域 林業経営が主体 林業収益性
山村奥地林地 山村奥地 交通不便、経営条件が劣る 林業収益性(低位)

都市近郊林地

都市近郊林地は、都市の拡大に伴い宅地化の影響を受ける林地です。

  • 林業収益よりも宅地見込地としての価格が上回ることが多い
  • 都市計画法の規制や開発許可の可否が価格に大きく影響する
  • レクリエーション利用(キャンプ場、別荘地等)の需要も価格形成要因となる

農村林地

農村林地は、農村地域に所在し、農業と林業の兼業が行われることが多い林地です。

  • 薪炭林としての利用や農業用資材の供給源としての価値がある
  • 農村の経済環境や人口動態が価格に影響する
  • 農地との一体的な利用関係を考慮する必要がある

林業本場林地

林業本場林地は、林業経営が主たる産業として成立している地域の林地です。

  • 林業収益に基づく評価が中心的な手法となる
  • 樹種、林齢、蓄積量等の林業的条件が重要な個別的要因
  • 木材市場へのアクセス(林道、搬出路の整備状況)が価格に影響する

山村奥地林地

山村奥地林地は、交通条件が劣り、林業経営の条件が最も厳しい林地です。

  • 搬出コストが高く、林業収益性が低い
  • 保安林指定等の法規制を受けることが多い
  • 水源涵養等の公益的機能が評価されることもある

立木の取扱い

林地の鑑定評価において、立木の取扱いは最も特徴的かつ重要な論点です。

素材生産方式

素材生産方式とは、立木を伐採して素材(丸太)として販売する場合の価格を基に立木の価値を求める方法です。

  • 山元立木価格 = 素材価格 – 伐採費 – 搬出費 – 運搬費 – 利潤
  • 素材価格は、木材市場における丸太の取引価格を基礎とする
  • 樹種、径級、品質により素材価格は大きく異なる

山元立木価格の構造

山元立木価格の算定構造を整理すると以下のとおりです。

項目 内容
素材価格(市場価格) 木材市場での丸太の売買価格
(-)伐採費 立木を伐倒・玉切りする費用
(-)搬出費 伐採現場から林道端まで運ぶ費用
(-)運搬費 林道端から木材市場まで運ぶ費用
(-)利潤 素材生産業者の適正利潤
= 山元立木価格 山元(伐採現場)における立木の価格

立木の評価方法

立木の評価方法としては、以下の手法があります。

手法 適用対象 考え方
素材生産方式 伐期に達した立木 山元立木価格を基に求める
費用価方式 幼齢林・中齢林 造林から現在までの投下費用の複利合計を基に求める
市場逆算方式 伐期の立木 素材価格から生産費用を控除して求める(素材生産方式と類似)

山元立木価格の具体的な計算例

スギ材を例に、山元立木価格の計算プロセスを示します。

項目 単価(m3あたり) 金額
素材価格(木材市場でのスギ丸太の価格) 12,000円/m3
(-)伐採費 3,000円/m3
(-)搬出費(架線集材等) 2,500円/m3
(-)運搬費(林道端→木材市場) 1,500円/m3
(-)素材生産業者の利潤 1,000円/m3
= 山元立木価格 4,000円/m3

この山元立木価格に蓄積量(m3/ha)を乗じることで、ヘクタールあたりの立木価格を求めることができます。例えば、蓄積量が300m3/haのスギ林であれば、立木価格は4,000円 × 300 = 120万円/haと算定されます。

費用価方式の考え方

幼齢林や中齢林など、まだ伐期に達していない立木については、費用価方式を適用します。

費用価 = 造林費の複利元利合計 + 保育費の複利元利合計 + 管理費の複利元利合計
  • 造林費:植栽、下刈り、除伐等の初期投資費用
  • 保育費:枝打ち、間伐等の費用
  • 管理費:森林の維持管理に要する経常的費用
  • 各費用を複利計算で価格時点まで引き直すことで、投下資本の現在価値を求める

林地と立木の一体評価

実務上、林地と立木は一体として取引されることが多く、一体評価が原則となります。

一体評価の考え方

  • 林地価格 + 立木価格 = 山林の総合価格(素地価格+立木価格)
  • 取引事例比較法を適用する場合、立木を含めた山林全体の取引事例を収集する
  • 林地のみの価格(素地価格)は、立木価格を控除して求めることもある

素地価格と立木価格の関係

  • 幼齢林の場合:立木価格は低く、素地価格の割合が高い
  • 伐期に近い林分の場合:立木価格が大きく、総合価格に占める割合が高い
  • 皆伐直後の場合:立木がないため、素地価格のみで評価する

森林法等の法規制

林地の鑑定評価では、森林法をはじめとする法規制が価格形成に影響を与えます。

森林法の主な規制

  • 保安林制度:保安林に指定された林地は伐採・転用が制限され、価格が低位にとどまる
  • 林地開発許可制度:地域森林計画対象民有林において、1ヘクタールを超える開発には都道府県知事の許可が必要
  • 伐採届出制度:立木の伐採には事前届出が義務づけられている

その他の関連法規

  • 自然公園法:国立公園・国定公園内の林地は開発行為が制限される
  • 自然環境保全法:自然環境保全地域内での開発が制限される
  • 都市計画法:都市近郊林地では開発許可の要否が価格に影響する

法規制と価格への影響

法規制 制限内容 価格への影響
保安林指定 伐採・転用制限 大幅な価格低下
林地開発許可 1ha超の開発に許可必要 開発可能性に影響
自然公園指定 開発行為の制限 用途制限による価格低下

保安林の種類と価格への影響の程度

保安林は森林法に基づき指定され、17種類あります。試験で問われやすい主なものを整理します。

種類 目的 制限の厳しさ
水源涵養保安林 水源の涵養 厳しい(最も指定面積が大きい)
土砂流出防備保安林 土砂流出の防備 厳しい
防風保安林 風害の防備 中程度
保健保安林 保健・休養 やや緩い

保安林に指定された林地は、立木の伐採には都道府県知事の許可が必要であり、転用にも大きな制限があります。そのため、宅地見込地としての評価はできず、林地としての価格も大幅に低下します。


試験での出題ポイント

林地の鑑定評価に関する試験対策のポイントを整理します。

論文式試験での頻出論点

  • 林地の4種別の特徴と評価手法の違い:各種別における価格形成の特徴を論述できるようにする
  • 立木の取扱いと山元立木価格:素材生産方式による立木価格の算定プロセスを正確に理解する
  • 林地と立木の一体評価:一体評価の考え方と、素地価格と立木価格の関係を整理する

短答式試験での注意点

  • 林地の4種別を正確に覚える(都市近郊林地、農村林地、林業本場林地、山村奥地林地)
  • 山元立木価格の算定構造(素材価格から何を控除するか)
  • 保安林の伐採制限と転用制限の内容
  • 林地開発許可制度の面積要件(1ヘクタール超
  • 農地の種別との対比で整理すると記憶に定着しやすい

暗記のポイント

  1. 林地の4種別:都市近郊林地 → 農村林地 → 林業本場林地 → 山村奥地林地(都市から遠ざかる順)
  2. 山元立木価格:素材価格 – 伐採費 – 搬出費 – 運搬費 – 利潤
  3. 立木の3つの評価方法:素材生産方式(伐期林)、費用価方式(幼齢林)、市場逆算方式
  4. 一体評価の原則:林地価格 + 立木価格 = 山林の総合価格
  5. 林地開発許可:1ヘクタール(10,000m2)超の開発に都道府県知事の許可
  6. 農地との対比:農地は2種別(都市近郊農地、農村農地)、林地は4種別

他の論点との関連


まとめ

林地の鑑定評価は、4つの種別(都市近郊林地、農村林地、林業本場林地、山村奥地林地)に応じた評価手法の適用が求められます。林地特有の論点として、立木の取扱いが重要であり、素材生産方式による山元立木価格の算定や、林地と立木の一体評価の考え方を正確に理解する必要があります。また、森林法の保安林制度や林地開発許可制度など、法規制が価格形成に与える影響も見逃せません。試験対策としては、農地の評価との対比を意識しながら、林地固有の概念を体系的に整理しておくことが効果的です。