高度利用と低度利用の価格格差とは

高度利用地と低度利用地の価格格差は、最有効使用の概念を実務的に応用した重要な論点です。不動産鑑定士試験においては、最有効使用に対して現況の利用度がどの程度であるかが土地の価格にどう影響するかを理論的に説明する能力が求められます。最有効使用を実現している土地は高い価格を形成し、最有効使用を実現していない低度利用地は建付減価等により価格が低下する傾向にあります。

最有効使用とは、客観的にみて、良識と通常の使用能力を持つ人が対象不動産についての最適な使用方法を判定するにあたり、事実上使用可能な範囲の中から、社会的、法的、経済的に許容される最も合理的な使用をいう。

― 不動産鑑定評価基準 総論第5章第4節


高度利用と低度利用の概念

最有効使用との関係

土地の利用度は、最有効使用を基準として判定されます。最有効使用に対して現況の利用がどの程度合致しているかにより、高度利用と低度利用に分類されます。

利用度 定義 具体例
最有効使用 社会的・法的・経済的に最も合理的な使用 商業地で指定容積率を十分に活用した商業ビル
高度利用 最有効使用に近い水準の利用 指定容積率の90%程度を活用した建物
低度利用 最有効使用を大幅に下回る水準の利用 商業地で平屋の店舗や駐車場
未利用 全く利用されていない状態 空地・遊休地

利用度の判定要素

利用度は、複数の要素を総合的に考慮して判定します。

判定要素 内容
容積率の活用状況 指定容積率に対して現況の容積率がどの程度か
建物の用途 地域の最有効使用に適合した用途か
建物の規模 最有効使用に対して過大か過小か
建物の品質 地域の標準的な品質水準を満たしているか
建物の経過年数 経済的残耐用年数がどの程度残っているか

建付地と建付減価

建付地とは

建付地とは、建物等の用に供されている敷地をいいます。建付地は更地とは異なり、現存する建物と一体として利用されている状態の土地です。

建付地とは、建物等の用に供されている敷地で、建物等及びその敷地が同一の所有者に属している宅地をいう。

― 不動産鑑定評価基準 総論第2章

建付減価の概念

建付減価とは、建付地の価格が更地の価格を下回る場合の差額をいいます。建付減価が生じるのは、現在の建物の利用が最有効使用ではない場合です。

建付減価 = 更地の価格 − 建付地の価格

建付減価が生じる場面

建付減価は、以下のような場面で生じます。

場面 内容 減価の理由
低度利用 商業地で平屋の建物が存在 最有効使用(高層ビル等)との乖離
用途の不適合 住宅地域で工場が存在 地域の用途に適合しない
老朽建物 建替えが必要な建物が存在 取壊費用が必要
過大な建物 需要に対して規模が過大 維持管理費の非効率

高度利用地の評価

高度利用地の特徴

高度利用地は、最有効使用に近い水準で利用されている土地です。以下の特徴があります。

  • 容積率が十分に活用されている
  • 地域の標準的使用に適合した建物が建築されている
  • 建付減価が生じない、あるいは極めて小さい

高度利用地の場合、建付地の価格は更地の価格に近い水準となります。これは、最有効使用が実現されているため、現存する建物を取り壊して別の建物を建築する合理性がないからです。

都市計画法上の高度利用地区

なお、都市計画法に基づく高度利用地区は、都市計画で定められる地区の一種であり、本記事で論じている利用度としての「高度利用」とは区別する必要があります。高度利用地区は、土地の合理的かつ健全な高度利用と都市機能の更新を図るために定められる地区であり、容積率の最低限度建ぺい率の最高限度等が定められます。


低度利用地の評価

低度利用地の特徴

低度利用地は、最有効使用を大幅に下回る水準で利用されている土地です。

特徴 具体例
容積率の未活用 指定容積率400%の地域で平屋の建物
用途の不適合 商業地で個人住宅
暫定利用 将来の再開発までの一時的な駐車場利用
遊休地 利用計画がなく放置されている土地

低度利用地の建付減価の算定

低度利用地の建付減価は、以下の要素を考慮して算定します。

考慮要素 内容
取壊費用 現存建物の取壊しに要する費用
立退費用 テナントや居住者がいる場合の立退費用
機会損失 取壊し・再建築に要する期間中の逸失利益
建物の残存価値 取壊す建物の残存価値(マイナス要因を軽減)
建付減価 = 取壊費用 + 立退費用 + 機会損失 − 建物の残存価値

ただし、現存建物に一定の収益性がある場合は、その収益を考慮する必要があります。低度利用であっても、取壊して再建築するまでの期間中に得られる収益がある場合は、直ちに建付減価が生じるとは限りません

低度利用の程度と建付減価の関係

低度利用の程度 建付減価 評価上の取扱い
軽度(容積率の80%程度活用) 小さいか生じない 更地価格と大きな差はない
中度(容積率の50%程度活用) 中程度 取壊し・再建築の合理性を検討
著しい(容積率の20%以下) 大きい 取壊し・再建築が最有効使用となる可能性

更地価格と建付地価格の関係

基本的な関係式

更地の価格建付地の価格の関係は、最有効使用の実現度合いによって以下のように整理されます。

最有効使用を実現している場合:建付地の価格 ≒ 更地の価格
最有効使用を実現していない場合:建付地の価格 < 更地の価格

建付地の鑑定評価

建付地の鑑定評価については、鑑定評価基準に以下の規定があります。

建付地の鑑定評価額は、更地の価格をもとに当該建付地の更地としての最有効使用との格差、更地化の難易の程度等敷地と建物等との関連における個別的要因を考慮して求めるものとする。

― 不動産鑑定評価基準 各論第1章

この規定から明らかなように、建付地の評価は更地の価格を基礎として、最有効使用との格差(建付減価)を考慮して行います。

更地化の難易

鑑定評価基準が「更地化の難易の程度」を考慮するとしているのは、現存建物の取壊しが容易であるか否かが建付減価の大きさに影響するためです。

更地化の容易さ 建付減価への影響
容易(小規模木造建物等) 取壊費用が小さく、建付減価は小さい
困難(大規模RC建物等) 取壊費用が大きく、建付減価は大きい
極めて困難(テナント入居中のビル等) 立退費用も加わり、建付減価がさらに大きい

高度利用の促進と鑑定評価

再開発と高度利用

市街地再開発事業等により、低度利用地を高度利用地に転換することは、都市計画上の重要な政策目標です。鑑定評価においても、再開発の可能性が土地の価格に影響を与える場合があります。

  • 再開発計画が具体化している地域では、将来の高度利用の可能性が土地の価格に織り込まれる
  • 再開発事業の施行区域に含まれる土地は、事業の進捗に応じて価格が変動する
  • 高度利用地区の指定がある地域では、容積率の緩和等により高度利用のインセンティブが働く

容積率と価格の関係

高度利用と低度利用の議論は、容積率と土地価格の関係と密接に関連しています。指定容積率が高い地域ほど高度利用の余地が大きく、現況の利用度との格差が土地の潜在的価値を示す指標となります。


試験での出題ポイント

短答式試験

不動産鑑定士の短答式試験では、以下の論点が問われます。

  • 最有効使用の定義と判定基準
  • 建付地と更地の違い
  • 建付減価が生じる場面とその理由
  • 高度利用地と低度利用地の概念

論文式試験

論文式試験では、以下のテーマが出題される可能性があります。

  • 最有効使用と利用度の関係の理論的論述
  • 建付減価の概念と算定方法
  • 低度利用地の更地価格との関係
  • 建付地の鑑定評価の手順(更地価格を基礎とする考え方)

暗記のポイント

  1. 最有効使用 — 事実上使用可能な範囲の中から、社会的・法的・経済的に許容される最も合理的な使用
  2. 建付減価 — 建付地の価格が更地の価格を下回る場合の差額
  3. 建付地の評価 — 更地の価格をもとに、最有効使用との格差、更地化の難易の程度等を考慮
  4. 高度利用 — 最有効使用に近い水準の利用、建付減価が小さいか生じない
  5. 低度利用 — 最有効使用を大幅に下回る利用、取壊費用・立退費用等が建付減価の構成要素

まとめ

高度利用地と低度利用地の価格格差は、最有効使用の概念を中核とする鑑定理論の実践的応用です。最有効使用を実現している高度利用地は更地価格に近い建付地価格を形成し、低度利用地は建付減価により更地価格を下回ります。建付減価の構成要素(取壊費用、立退費用、機会損失等)を理解し、利用度に応じた適切な減価を行う能力が鑑定評価の実務で求められます。建付地の評価最有効使用の判定事例とあわせて学習を進めましょう。