個別的要因とは|土地と建物の要因完全一覧
個別的要因とは
個別的要因とは、不動産に個別性を生じさせ、その価格を個別的に形成する要因をいいます。不動産鑑定士試験では、土地の個別的要因と建物の個別的要因を正確に区別し、それぞれの内容を具体的に把握することが求められます。
個別的要因とは、不動産に個別性を生じさせ、その価格を個別的に形成する要因をいう。
― 不動産鑑定評価基準 総論第3章第3節
わかりやすく言うと
個別的要因は、まったく同じ地域にある不動産でも、個々の物件で価格が異なる理由を説明する要因です。たとえば、同じ住宅地にある2つの土地でも、一方が整形地で南向き、もう一方が不整形で北向きであれば、当然価格は異なります。この差を生むのが個別的要因です。
価格形成要因の3分類(一般的要因・地域要因・個別的要因)のうち、最もミクロなレベルに位置し、個々の不動産の価格を直接的に左右します。
土地の個別的要因
宅地の個別的要因
宅地の個別的要因は、その土地固有の物理的条件や利用条件です。
| 個別的要因 | 内容・影響 |
|---|---|
| 地勢・地質・地盤 | 高台の安定した地盤は高評価、軟弱地盤は減価 |
| 地積(面積) | 標準的な面積から乖離すると単価に影響 |
| 形状 | 整形地は高評価、不整形地(旗竿地・三角地等)は減価 |
| 間口・奥行の関係 | 間口が狭く奥行が深い土地は使いにくく減価 |
| 接面街路の状態 | 幅員・舗装・系統の良い道路に面するほど高評価 |
| 接面街路との高低差 | 道路より低い土地は浸水リスク、高すぎると造成コスト |
| 角地・準角地・二方路地 | 角地は二面採光・出入りの利便性で高評価 |
| 日照・通風・乾湿 | 南面する開放的な土地は高評価 |
| 上下水道・ガス等の整備 | インフラが未整備だと開発コストがかかる |
| 公法上の規制 | 用途地域・建ぺい率・容積率・高度地区等の制限 |
| 有害物質の貯蔵・埋蔵 | 土壌汚染が存在すると大幅に減価 |
農地・林地の個別的要因
| 個別的要因 | 内容 |
|---|---|
| 日照・乾湿・雨量 | 農業・林業の生産性に直結 |
| 土壌・土層の状態 | 肥沃な土壌ほど農地として高評価 |
| 傾斜・地勢 | 平坦な農地は機械化が容易で高評価 |
| 灌漑排水の状態 | 水の供給・排水が整っているか |
| 災害の危険性 | 崖崩れ・浸水リスクの有無 |
建物の個別的要因
建物の個別的要因は、その建物固有の物理的状態や利用条件です。
| 個別的要因 | 内容・影響 |
|---|---|
| 建築(新築・増改築等)の年次 | 新しいほど高評価、古いほど減価が大きい |
| 面積・高さ・構造・材質 | RC造はS造・木造より耐用年数が長い |
| 設計・設備の機能性 | エレベーター・空調等の充実度 |
| 施工の質と量 | 手抜き工事は大きな減価要因 |
| 耐震性・耐火性 | 新耐震基準適合か旧耐震基準か |
| 維持管理の状態 | 適切に管理された建物は減価が少ない |
| 有害物質の使用 | アスベスト等の有害物質は撤去コストが減価となる |
| 建物とその敷地との適応の状態 | 敷地に対して過大・過小な建物は最有効使用に合致しない |
建物及びその敷地の個別的要因
建物とその敷地を一体として見たときの要因です。
| 個別的要因 | 内容 |
|---|---|
| 敷地内の建物・駐車場等の配置 | 効率的な配置になっているか |
| 建物と敷地の規模の対応関係 | 敷地に対して建物が過小であれば最有効使用に適合していない可能性 |
| 修繕計画・管理の良否 | 長期修繕計画の有無・管理組合の運営状況 |
| 賃貸経営管理の良否 | テナント構成・空室率・賃料水準 |
身近な具体例
例1: 整形地と旗竿地
同じ住宅地にある2つの50坪の土地を考えます。一方は間口10m・奥行16.5mの整形地、もう一方は間口2mの旗竿地(路地状部分が長い)です。整形地は建物プランの自由度が高く、駐車スペースも確保しやすいのに対し、旗竿地は建物が奥に引っ込み、日照や通風にも制約があります。同じ面積・同じ地域でも、形状という個別的要因によって2割以上の価格差が生じることがあります。
例2: 旧耐震と新耐震のマンション
1980年築(旧耐震基準)と1982年築(新耐震基準)のマンションでは、わずか2年の築年差でも価格に大きな差が出ます。旧耐震基準の建物は耐震補強が必要となる可能性があり、住宅ローンの審査でも不利になることがあるため、「耐震性」という個別的要因が大きく影響するのです。
関連用語との比較
試験での出題ポイント
短答式試験
- 土地と建物の要因の区別: 「建物の耐震性は土地の個別的要因である」→ 誤り(建物の個別的要因)
- 公法上の規制の位置づけ: 容積率・用途地域は「個別的要因」に分類される(地域要因と混同しやすい)
論文式試験
- 「個別的要因の意義を述べ、土地と建物それぞれの主な個別的要因を挙げて解説せよ」
- 「建物及びその敷地の個別的要因について、最有効使用との関連で論述せよ」
暗記のポイント
- 個別的要因の定義文: 「不動産に個別性を生じさせ、その価格を個別的に形成する要因」
- 宅地の主要要因: 地積・形状・接道・日照・公法上の規制・有害物質
- 建物の主要要因: 築年・構造・設備・耐震性・維持管理・有害物質
まとめ
個別的要因は、同じ地域の不動産であっても個々の物件で価格が異なる理由を説明する要因です。土地の要因(形状・接道・地積等)と建物の要因(築年・構造・耐震性等)を体系的に理解し、価格形成要因の全体像の中で正確に位置づけることが試験対策の基本です。個別的要因の分析は地域分析と並ぶ鑑定評価の重要な手続きであり、確実に押さえておきましょう。