不整形地・無道路地の評価の基本

不整形地と無道路地は、不動産鑑定士試験の鑑定理論において、画地条件の中でも特に減価要因として重要な類型です。不整形地は形状が整っていないことによる利用効率の低下が減価の根拠であり、無道路地は道路に接していないことによる建築制限等が大幅な減価要因となります。いずれも想定整形地や標準的な画地との比較により減価の程度を判定する点が共通しています。

宅地についての個別的要因の主なものを例示すれば、次のとおりである。

― 不動産鑑定評価基準 総論第3章第2節


不整形地の基本的理解

不整形地とは

不整形地とは、形状が長方形(整形)ではない画地の総称です。典型的な不整形地には以下のような形状があります。

形状 特徴 減価の程度
三角地 三角形の画地 大きい(利用効率が著しく低い)
L字型地 L字型の画地 やや大きい
台形地 台形の画地 比較的小さい
多角形地 五角形以上の画地 形状による
帯状地 極端に細長い画地 大きい

不整形地の減価要因

不整形地が減価要因となる理由は、形状の不整により土地の有効利用が妨げられることにあります。

減価の理由 具体的内容
建物配置の制約 整形の建物を効率的に配置できない
有効利用面積の減少 登記面積に対して実際に利用可能な面積が少ない
建築コストの増大 不整形に合わせた設計が必要となり建築費が増加
日照・通風の問題 形状によっては日照や通風が阻害される
外構・造園の制約 駐車場等の外構計画が制約される

不整形地の評価手法

想定整形地との比較

不整形地の評価において最も基本的な考え方は、想定整形地との比較です。想定整形地とは、対象不整形地を含む最小の整形地(通常は長方形)を想定したものです。

不整形地の評価額 = 想定整形地の評価額 × 不整形地補正率

不整形度の判定方法

不整形度は、以下の方法で判定します。

かげ地割合による方法

かげ地割合 =(想定整形地の面積 − 不整形地の面積)÷ 想定整形地の面積

かげ地割合が大きいほど、不整形の程度が大きいと判断されます。

かげ地割合 不整形の程度 補正の目安
10%未満 軽微 小さい補正
10%~30% 中程度 中程度の補正
30%~50% 著しい 大きい補正
50%以上 極めて著しい 非常に大きい補正

有効宅地部分の考え方

有効宅地部分とは、不整形地のうち建物の敷地として実際に有効利用できる部分をいいます。不整形地の評価においては、有効宅地部分の面積と配置が重要な判定要素となります。

概念 内容
有効宅地部分 建物の敷地等として実質的に利用可能な部分
無効部分(デッドスペース) 形状上利用が困難な部分(鋭角部分、極端に狭い部分等)

有効宅地部分の割合が高い不整形地(例:台形で底辺が長い場合)は、三角地のように有効宅地部分の割合が低い不整形地に比べて、減価の程度が小さくなります。


各種不整形地の評価

三角地

三角地は、不整形地の中でも最も利用効率が低い類型の一つです。鋭角部分は実質的に利用不可能であり、建物の配置が著しく制約されます。

評価上の留意点 内容
角度 鋭角が小さいほど減価が大きい
面積 面積が大きいほど有効利用の余地が増える
道路との関係 底辺が道路に面している場合は比較的利用しやすい

三角地の減価は、かげ地割合で50%近くになることもあり、整形地に比べて大幅な減価が必要です。

L字型地

L字型地は、二つの長方形が直角に接合したような形状の画地です。

  • 二つの部分にそれぞれ建物を配置できる場合は減価が小さい
  • 接合部分が狭い場合は一体利用が困難で減価が大きい
  • 分割利用が合理的な場合は、分割後の画地それぞれの価格を基に評価

台形地

台形地は、不整形地の中では比較的減価が小さい類型です。

  • 底辺(長い方の辺)が道路に面していれば利用効率は比較的高い
  • 間口と奥行のバランスが大きく崩れなければ、整形地に近い利用が可能
  • かげ地割合が小さい台形は、補正率も小さくなる

無道路地の評価

無道路地とは

無道路地は、道路に全く接していない画地です。建築基準法上の接道義務(幅員4m以上の道路に2m以上接する)を満たさないため、原則として建物の建築ができないという重大な制約があります。

建築物の敷地は、道路に二メートル以上接しなければならない。

― 建築基準法 第43条第1項

無道路地の評価の考え方

無道路地の評価は、最有効使用の判定が出発点となります。

状況 最有効使用 評価の考え方
接道可能な場合 隣接地の一部取得等で接道し宅地利用 接道後の価格 − 接道に要する費用
43条ただし書き許可が得られる場合 建築可能な宅地 許可取得の可能性を考慮して減価
接道不可能な場合 資材置場、駐車場等の暫定利用 宅地として利用できない分を大幅に減価

無道路地の具体的な評価方法

無道路地の評価方法として、以下のアプローチが考えられます。

方法1:接道費用控除法

無道路地の価格 = 接道を確保した場合の価格 − 接道確保に要する費用

接道確保に要する費用としては、隣接地の通路部分の取得費用(限定価格での取得を想定)や、通路の整備費用等が含まれます。

方法2:比準法

類似の無道路地の取引事例がある場合は、取引事例に基づく比準価格を求めることも考えられます。ただし、無道路地の取引事例は極めて少ないため、適用は限定的です。

方法3:収益還元法的アプローチ

無道路地を駐車場・資材置場等として暫定利用する場合の収益に基づいて収益価格を求める方法です。ただし、暫定利用の収益は宅地利用に比べて著しく低いため、価格は大幅に低くなるのが一般的です。

無道路地と袋地の違い

無道路地と袋地は混同されやすいため、区別を明確にしておく必要があります。

項目 無道路地 袋地
道路への接面 全く接していない 他の宅地に囲まれて道路に出るのが困難
接道義務 満たさない 満たさない場合が多い
通行権 民法上の囲繞地通行権がある場合あり 同様
建築の可否 原則不可 通路幅員次第

なお、民法上の囲繞地通行権(公道に至るための他の土地の通行権)が認められる場合でも、建築基準法上の接道義務とは別の問題であるため、建築の可否は別途判断が必要です。


不整形地・無道路地と最有効使用

最有効使用の判定への影響

不整形地・無道路地の最有効使用の判定においては、形状や接道条件による制約を前提として最有効使用を判定します。

画地条件 最有効使用への影響
軽度の不整形 標準的使用と同様の最有効使用が可能
著しい不整形 建物の配置が制約され、最有効使用の水準が低下
無道路地 建築不可の場合、暫定利用が最有効使用

隣接地との併合の可能性

不整形地や無道路地では、隣接地との併合が最有効使用となる場合があります。

  • 不整形地が隣接地と併合されることで整形地となる場合
  • 無道路地が隣接地と併合されることで接道義務を満たす場合

このような場合、併合後の土地の価格と併合前の各土地の価格の差額(増分価値)が発生し、限定価格の問題として整理されます。


実務における不整形度の判定

建物配置計画による検証

不整形地の減価の程度を判定する実務的な方法として、建物配置計画(建築プラン)による検証があります。

  1. 対象不整形地に、当該地域の標準的な建物を配置する計画を作成
  2. 整形地の場合に可能な建物配置と比較
  3. 延べ床面積の差建築コストの差等から減価を定量化

近隣の取引事例との比較

不整形地の減価は、近隣の類似条件の取引事例がある場合は、取引事例から実証的に把握することも重要です。同一地域内で整形地と不整形地の取引事例を比較し、形状の違いによる実際の価格差を分析します。


試験での出題ポイント

短答式試験

不動産鑑定士の短答式試験では、以下の論点が問われます。

  • 不整形地の減価要因:形状の不整による利用効率の低下
  • かげ地割合の計算方法:(想定整形地の面積 − 不整形地の面積)÷ 想定整形地の面積
  • 無道路地の接道義務:建築基準法第43条、幅員4m以上の道路に2m以上接する
  • 有効宅地部分の概念:実際に有効利用できる部分の面積

論文式試験

論文式試験では、以下のテーマが出題される可能性があります。

  • 不整形地の評価における想定整形地の考え方
  • 無道路地の評価方法の体系的説明
  • 不整形地・無道路地と最有効使用の関係
  • 隣接地との併合と限定価格

暗記のポイント

  1. 不整形地の減価根拠 — 形状の不整による利用効率の低下
  2. かげ地割合 — (想定整形地面積 − 不整形地面積)÷ 想定整形地面積
  3. 有効宅地部分 — 建物の敷地として実質的に利用可能な部分
  4. 無道路地の接道義務 — 建築基準法第43条、幅員4m以上の道路に2m以上接する
  5. 無道路地の評価 — 接道確保した場合の価格から接道確保費用を控除する方法が基本

まとめ

不整形地と無道路地は、画地条件の中でも減価要因として大きな影響を持つ類型です。不整形地は想定整形地との比較によりかげ地割合や有効宅地部分の分析を行い、減価の程度を定量的に判定します。無道路地は建築基準法上の接道義務との関係で建築の可否が問われ、接道確保の可能性によって評価方法が大きく異なります。画地条件の基本最有効使用の判定とあわせて体系的に理解を深めましょう。