地域要因とは|6つの用途的地域ごとの要因一覧
地域要因とは
地域要因とは、一般的要因の相関結合によって規模・構成等の内容やその機能等にわたる各地域の特性を形成し、その地域に属する不動産の価格の形成に全般的に影響を与える要因をいいます。不動産鑑定士試験では、6つの用途的地域ごとに異なる地域要因を正確に把握することが求められます。
地域要因とは、一般的要因の相関結合によって規模、構成等の内容と機能等にわたる各地域の特性を形成し、その地域に属する不動産の価格の形成に全般的な影響を与える要因をいう。
― 不動産鑑定評価基準 総論第3章第2節
わかりやすく言うと
地域要因は、ある特定の地域に属する不動産全体の価格水準を左右する要因です。たとえば「駅から徒歩5分の住宅地」と「駅から徒歩30分の住宅地」では、同じ広さの土地でも価格が大きく異なります。この差を生み出しているのが地域要因です。
一般的要因が市場全体に作用するマクロ要因であるのに対し、地域要因は特定の地域に固有のメソ(中間的な)レベルの要因です。
6つの用途的地域と主な地域要因
1. 住宅地域
人が住むための地域です。居住の快適性に関する要因が中心となります。
| 主な地域要因 | 具体例 |
|---|---|
| 日照・通風の状態 | 南向き傾斜地は日照良好で高評価 |
| 交通施設の整備 | 最寄り駅まで徒歩10分以内かどうか |
| 商業施設の配置 | スーパー・病院・学校が近接しているか |
| 上下水道・ガス等の整備 | 都市ガスが通っているか、下水道が整備されているか |
| 公共施設・公園等の配置 | 公園が多いほど居住環境の評価が高い |
| 街路の幅員・配置 | 幅員4m以上の道路が整備されているか |
| 騒音・大気汚染等 | 幹線道路沿いは騒音が大きく、住環境として不利 |
2. 商業地域
商業活動が行われる地域です。収益性・集客力に関する要因が重視されます。
| 主な地域要因 | 具体例 |
|---|---|
| 商業施設の種類・規模・集積度 | 百貨店・専門店が集積する繁華街か |
| 顧客の流動性・商業背後地 | 通行量が多く、広い商圏を持つか |
| 交通施設との接近性 | ターミナル駅に近接しているか |
| 駐車施設の整備 | 郊外型商業地域では駐車場の有無が集客に直結 |
| 繁華性の程度 | 人通りの多さ、看板・照明の密度 |
| 経営者の創意と資力 | テナントの質・集客力 |
3. 工業地域
工場等が立地する地域です。生産活動の効率性に関する要因が重視されます。
| 主な地域要因 | 具体例 |
|---|---|
| 交通施設の整備 | 高速IC・港湾・鉄道貨物駅への近接性 |
| 労働力確保の難易 | 工場労働者の通勤圏内か |
| 動力資源・用排水の利便性 | 工業用水の供給が十分か |
| 関連産業との近接性 | サプライチェーンを形成する企業が近いか |
| 行政上の助成・規制 | 工業団地の指定、環境規制の程度 |
4. 農地地域
農業が営まれる地域です。農業生産力に関する要因が中心です。
| 主な地域要因 | 具体例 |
|---|---|
| 日照・温度・降水量 | 稲作に適した温暖湿潤な気候か |
| 土壌・地勢の状態 | 肥沃な土壌で平坦な耕作地か |
| 農道の整備・集荷施設 | 農産物の出荷インフラが整っているか |
| 灌漑排水の状態 | 用水路が整備されているか |
| 行政上の助成・規制 | 農業振興地域の指定、転用規制の程度 |
5. 林地地域
森林が形成されている地域です。林業生産力に関する要因が中心です。
| 主な地域要因 | 具体例 |
|---|---|
| 日照・降水量 | 樹木の成長に適した気候条件か |
| 標高・地勢 | 急傾斜地は伐採・搬出が困難 |
| 林道の整備 | 木材の搬出路が整備されているか |
| 木材の搬出施設 | 集材場・製材所へのアクセス |
| 行政上の助成・規制 | 保安林指定の有無 |
6. 宅地見込地地域
農地や林地から宅地への転換が見込まれる地域です。転換後の利用可能性が重視されます。
| 主な地域要因 | 具体例 |
|---|---|
| 付近の土地の利用状況の推移 | 周辺で宅地開発が進行しているか |
| 宅地化の程度 | 造成・インフラ整備の進捗状況 |
| 交通施設の新設・変更の動向 | 新駅の計画、道路拡幅の予定 |
| 法的規制の変更の動向 | 市街化調整区域から市街化区域への編入見込み |
身近な具体例
例1: 駅前再開発と商業地域
ある地方都市の駅前で大規模再開発が行われ、商業施設・オフィスビル・タワーマンションが建設されました。繁華性が向上し、顧客の流動性が高まった結果、周辺の商業地の地価は大幅に上昇しました。これは商業地域の地域要因のうち「商業施設の集積度」と「繁華性の程度」が変化したことによるものです。
例2: 新駅開業と住宅地域
郊外に新しい鉄道駅が開業すると、交通施設の整備という地域要因が大きく改善されます。それまで「駅から遠い不便な住宅地」だった地域が「駅徒歩圏の住宅地」に変わり、土地の需要が急増して地価が上昇します。
関連用語との比較
| 用語 | 影響範囲 | 分析手法 |
|---|---|---|
| 一般的要因 | 不動産市場全体 | 社会・経済の動向分析 |
| 地域要因 | 特定の地域全体 | 地域分析 |
| 個別的要因 | 個々の不動産 | 個別分析 |
地域要因の分析は地域分析として体系化されており、近隣地域の範囲判定や類似地域の選定の前提となります。
試験での出題ポイント
短答式試験
- 用途的地域ごとの地域要因の分類: 「交通施設の整備は住宅地域の地域要因に含まれるが、商業地域の地域要因には含まれない」→ 誤り(どちらにも含まれる)
- 地域要因と個別的要因の区別: 「個々の画地の形状は地域要因である」→ 誤り(個別的要因)
論文式試験
- 「住宅地域と商業地域それぞれの地域要因を挙げ、両者の違いについて論述せよ」
- 住宅地域は居住快適性、商業地域は収益性という根本的な差を軸に展開する
暗記のポイント
- 6つの用途的地域の名称: 住宅・商業・工業・農地・林地・宅地見込地
- 住宅地域の要因キーワード: 日照・通風、交通、商業施設、上下水道、公園、街路、騒音
- 商業地域の要因キーワード: 集積度、顧客流動性、背後地、交通、繁華性
まとめ
地域要因は、特定の地域に属する不動産の価格を全般的に左右する要因であり、6つの用途的地域ごとに異なる内容を持ちます。価格形成要因の理解において、一般的要因と個別的要因をつなぐ中間レベルの要因として極めて重要です。試験では住宅地域と商業地域の地域要因の違いが頻出するため、それぞれの特徴を具体例とともに押さえておきましょう。