特殊な画地条件とは

特殊な画地条件とは、標準的な整形地と比較して利用上の制約や劣位性を有する画地の条件をいいます。代表的なものとして、無道路地(道路に接しない土地)、不整形地(形状が整っていない土地)、崖地(急傾斜地を含む土地)、袋地(路地状部分でのみ道路に接する土地)等があります。不動産鑑定士試験では、これらの特殊条件が個別的要因としてどのように評価に反映されるかが重要な出題テーマです。

個別的要因とは、不動産に個別性を生じさせ、その価格を個別的に形成する要因をいう。

― 不動産鑑定評価基準 総論第3章第3節


個別的要因としての画地条件

画地条件の位置づけ

画地条件は、土地の個別的要因の中でも最も基本的かつ重要な要因群です。基準では、宅地の個別的要因として以下が列挙されています。

宅地の個別的要因の主なものを例示すれば、次のとおりである。 一 地勢、地質、地盤等 二 接面街路の幅員、構造等の状態 三 接面街路との高低差 四 隣接不動産等の利用の状態 五 日照、通風及び乾湿

― 不動産鑑定評価基準 総論第3章第3節

標準的画地との比較

特殊な画地条件の評価は、近隣地域の標準的画地を基準として、個別的要因の格差を判定する方法で行います。

【個別的要因の格差率による評価】

標準的画地の価格(標準価格): 100万円/㎡
対象地の個別的要因の格差率 : △20%(劣る)

対象地の価格 = 100万円/㎡ × (1 − 0.20) = 80万円/㎡

無道路地の評価

無道路地とは

無道路地とは、道路に全く接していない土地をいいます。建築基準法第43条により、建築物の敷地は道路に2m以上接しなければならない(接道義務)とされているため、無道路地は原則として建物の建築ができません

無道路地の評価方法

無道路地は、以下の方法で評価することが一般的です。

方法 内容
通路開設費用控除法 道路までの通路を開設するための費用を控除して求める
隣接地との併合前提 隣接する道路に面する土地と併合する前提で限定価格を求める
格差率法 標準的画地の価格に対する格差率を適用する

通路開設費用控除法の計算例

【無道路地の評価例】

■ 対象地の概要
  面積    : 200㎡
  接道状況 : 無道路地(道路まで隣地を介して8m)
  用途地域 : 第一種中高層住居専用地域

■ 道路に面すると仮定した場合の価格
  標準的画地の価格 : 50万円/㎡
  対象地が道路に面すると仮定した場合 : 50万円/㎡ × 200㎡ = 10,000万円

■ 通路開設費用
  通路幅2m × 奥行8m = 16㎡の土地取得が必要
  隣地の取得費用 : 50万円/㎡ × 16㎡ = 800万円
  造成費用等    : 100万円

■ 無道路地の評価額
  10,000万円 − 800万円 − 100万円 = 9,100万円
  ※ さらに無道路地としてのリスク(通路確保の不確実性)を考慮して減価
  減価率10%を適用 → 9,100万円 × 0.90 = 8,190万円

不整形地の評価

不整形地とは

不整形地とは、形状が正方形や長方形(整形)でない土地をいいます。三角形、旗竿形、L字形など、様々な不整形パターンがあります。

不整形地の減価要因

減価要因 内容
建築効率の低下 整形に比べて有効に建物を配置しにくい
デッドスペースの発生 建物に利用できない無駄な部分が生じる
建築コストの増加 不整形に合わせた設計・施工が必要
利用制限 形状により実現可能な建物の規模・用途が制限される

蔭地割合による評価

不整形地の評価では、蔭地割合(かげちわりあい)を用いる方法が実務的です。蔭地割合とは、対象地を含む最小の整形地(想定整形地)に対する、対象地以外の部分(蔭地)の面積割合をいいます。

【蔭地割合の計算例】

想定整形地の面積 : 300㎡(10m × 30m)
対象地の面積     : 230㎡(不整形のため70㎡が蔭地)

蔭地割合 = (300㎡ − 230㎡) ÷ 300㎡ = 23.3%

蔭地割合が大きいほど不整形の程度が著しく、減価率も大きくなります。

蔭地割合 減価率の目安
10%未満 2〜5%
10〜20% 5〜15%
20〜30% 10〜25%
30%以上 20〜40%

崖地の評価

崖地とは

崖地(がけち)とは、急傾斜面を含む土地をいいます。宅地造成等規制法では、傾斜度が30度を超える土地を崖地としています。

崖地の減価要因

減価要因 内容
有効宅地面積の減少 崖部分は宅地として利用不可
擁壁等の工事費用 安全確保のための擁壁の築造・維持費用
法的規制 宅地造成等規制法、がけ条例等による建築制限
災害リスク 崖崩れ・土砂災害のリスク

崖地の評価方法

【崖地の評価例】

■ 対象地の概要
  全体面積   : 500㎡
  平坦部面積 : 350㎡
  崖地面積   : 150㎡(傾斜度40度)

■ 評価方法
  標準的画地(平坦地)の価格 : 40万円/㎡

  方法1:有効面積法
    平坦部のみを有効宅地面積として評価
    40万円/㎡ × 350㎡ = 14,000万円
    ※ 崖地部分の管理費用等を考慮してさらに減価

  方法2:造成費控除法
    全体を平坦地とした場合の価格 − 造成費用
    40万円/㎡ × 500㎡ = 20,000万円
    造成費(擁壁工事等): ▲3,500万円
    崖地の評価額 = 16,500万円

袋地(路地状敷地)の評価

袋地とは

袋地(旗竿地とも呼ばれる)は、道路に面する間口が狭い路地状部分(通路部分)を通じて奥の敷地に至る形状の土地です。接道義務は満たしているものの、利用上の制約があります。

袋地の減価要因

  • 間口が狭い: 車両の出入りが困難、日照・通風に影響
  • 路地状部分は有効利用しにくい: 通路以外の用途に使いにくい
  • 建築計画の制約: 建物の配置・規模に制限
  • 防災上の問題: 避難路が狭い

袋地の評価例

【袋地の評価例】

■ 対象地の概要
  全体面積      : 250㎡
  路地状部分    : 幅2m × 奥行10m = 20㎡
  有効敷地部分  : 230㎡

■ 標準的画地の価格 : 35万円/㎡

■ 格差率の算定
  路地状部分の減価 : △20%(通路部分の利用制限)
  有効敷地部分の減価 : △5%(奥まった位置による)

■ 袋地の評価
  有効敷地部分 : 35万円 × 0.95 × 230㎡ = 7,648万円
  路地状部分   : 35万円 × 0.80 × 20㎡ =  560万円
  合計 : 8,208万円
  (標準価格ベース 35万円 × 250㎡ = 8,750万円 → 約6%の減価)

その他の特殊な画地条件

間口狭小地

間口が極端に狭い土地は、建物の配置や車両の出入りに制約があるため、減価の対象となります。

間口幅 減価の程度
4m以上 ほぼなし
3〜4m 軽微な減価(2〜5%)
2〜3m 中程度の減価(5〜15%)
2m未満 大きな減価(接道義務不充足の可能性)

奥行長大地

奥行が間口に対して過大な土地は、奥の部分の利用効率が低下するため減価が生じます。間口と奥行の比率(奥行比)が大きいほど減価率は大きくなります。

高低差のある土地

道路との高低差がある土地は、出入りの不便さ、擁壁の必要性、建築コストの増加等により減価の対象となります。道路より低い場合は排水の問題も加わります。


特殊な画地条件の複合

複数の条件が重なる場合

実務では、複数の特殊条件が重なる画地を評価する場面があります。例えば、不整形かつ崖地を含む無道路地のような場合です。

【複合条件の評価例】

対象地の特殊条件:
  (1) 不整形(蔭地割合15%)→ 減価率 △10%
  (2) 崖地を含む(面積の20%が崖地)→ 減価率 △8%
  (3) 間口狭小(間口3m)→ 減価率 △5%

標準的画地の価格 : 50万円/㎡
対象地の面積     : 200㎡

方法1:各格差率を累積(乗法的に適用)
  50万円 × (1−0.10) × (1−0.08) × (1−0.05) = 39.3万円/㎡
  → 200㎡ × 39.3万円 = 7,866万円

方法2:各格差率を加算(加法的に適用)
  50万円 × (1−0.10−0.08−0.05) = 38.5万円/㎡
  → 200㎡ × 38.5万円 = 7,700万円

累積方式(乗法)と加算方式(加法)では若干の差が生じますが、一般的に乗法的な適用がより合理的とされています。各減価要因は独立して作用するためです。

特殊条件の相殺

場合によっては、プラスの条件とマイナスの条件が相殺されることもあります。例えば、形状は不整形だが角地で二方路に面している場合、角地としてのプラスと不整形のマイナスが部分的に相殺されます。


試験での出題ポイント

短答式試験

  • 個別的要因の例示: 基準が列挙する宅地の個別的要因の正確な把握
  • 無道路地の特徴: 接道義務を満たさない → 原則建築不可
  • 不整形地の概念: 蔭地割合、建築効率の低下
  • 画地条件と最有効使用の関係: 画地条件が最有効使用の判定に与える影響

論文式試験

  • 特殊な画地条件の減価方法の論述: 格差率法、費用控除法、有効面積法等の比較
  • 無道路地の評価方法の具体的な説明: 通路開設費用控除法の手順と留意点
  • 個別分析における画地条件の位置づけ: 地域分析との関係を踏まえた体系的な説明

暗記のポイント

  1. 主な特殊条件: 無道路地、不整形地、崖地、袋地、間口狭小地、奥行長大地
  2. 無道路地: 接道義務不充足 → 原則建築不可 → 通路開設費用控除法等で評価
  3. 不整形地: 蔭地割合で不整形の程度を測定 → 建築効率の低下分を減価
  4. 崖地: 有効宅地面積の減少+造成費用+災害リスクを考慮

まとめ

特殊な画地条件は、土地の個別的要因として価格に大きな影響を与えます。無道路地は接道義務の不充足により建築制限を受け、不整形地は建築効率の低下により減価が生じ、崖地は有効面積の減少と造成費用が問題となります。いずれも標準的画地との比較において格差率を判定し、適切な減価を行うことが求められます。

関連する論点として、個別的要因(土地)の詳細や、更地の鑑定評価における個別分析の手法もあわせて確認してください。土壌汚染のある不動産の評価も画地条件に関連する重要なテーマです。