令和3年短答式試験の概要

令和3年(2021年)の不動産鑑定士短答式試験・鑑定理論科目は、基準の総論を中心とした基本的な知識を正確に問う問題が多い年度でした。本記事では、令和3年に出題が想定される主要論点について、基準の該当条文を根拠にした正誤判断の方法を解説します。

短答式試験の合格には、基準の条文と選択肢を正確に照合する力が不可欠です。以下、特に重要な論点を取り上げ、条文と対比しながら解説します。


令和3年短答式試験の概要

試験の基本情報

項目 内容
試験日 2021年5月(第2日曜日)
試験科目 鑑定理論、行政法規
試験時間 鑑定理論:2時間
出題形式 五肢択一式
出題数 40問
合格基準 総合点でおおむね7割以上

合格率の推移

年度 合格率(概算)
令和元年 約33%
令和2年 約33%
令和3年 約34%
令和4年 約33%

主要論点1:不動産の価格に関する諸原則

論点の特定

不動産の価格に関する諸原則は、短答式では定義の正確さと適用場面の理解が問われます。

基準の条文

不動産の鑑定評価は、その対象である不動産の経済価値を判定し、これを貨幣額をもって表示することであるが、このような不動産の経済価値は、不動産の効用、相対的稀少性及び不動産に対する有効需要の三者の相関結合によって生ずるものであり、かつ、その三者についてそれぞれ関連する諸要因の影響を受けて変動するものである。

― 不動産鑑定評価基準 総論第4章

正誤判断のフレームワーク

不動産の経済価値を成り立たせる3つの要素に関する問題では、以下の点に注目します。

要素 基準の文言 典型的な誤りの選択肢
効用 不動産の効用 「効率」にすり替え
相対的稀少性 相対的稀少性 「絶対的稀少性」にすり替え
有効需要 不動産に対する有効需要 「潜在的需要」にすり替え
関係 三者の相関結合によって生ずる 「それぞれ独立して」にすり替え

なぜ間違えやすいか:「相対的稀少性」を「絶対的稀少性」と混同するケースが多い。基準は「相対的」と明記しており、不動産の稀少性は絶対的なものではなく、需要との関係で相対的に決まるものである。


主要論点2:鑑定評価の三方式の適用の考え方

三方式の併用原則

三方式については、個々の手法の定義(令和4年の解説を参照)に加えて、併用原則が重要な論点です。

鑑定評価の手法の適用に当たっては、鑑定評価の手法を当該案件に即して適切に適用すべきであり、地域分析及び個別分析により把握した対象不動産に係る市場の特性等を適切に反映した複数の鑑定評価の手法を適用すべきである。

― 不動産鑑定評価基準 総論第8章第7節

正誤判断のポイント

記述例 正誤 判断の根拠
「複数の鑑定評価の手法を適用すべきである」 基準の文言通り
1つの手法のみを適用すれば足りる」 基準は「複数の鑑定評価の手法を適用すべき」と規定
常に3つすべての手法を適用しなければならない」 基準は「複数の」と規定しており、必ずしも3つすべてではない
「案件に即して適切に適用すべき」 基準の文言通り

典型的な誤答パターン:「複数の手法を適用すべき」を「3つすべての手法を必ず適用しなければならない」と読み替えてしまう。基準は「複数の」であり「すべての」ではない。


主要論点3:不動産の種別と類型

基準の条文

不動産の種別と類型は、分類の正確さが問われる論点です。

基準では、不動産の種別について、「不動産の種別とは、不動産の用途に関して区分される不動産の分類をいう」と規定しています。また、不動産の類型について、「不動産の類型とは、その有形的利用及び権利関係の態様に応じて区分される不動産の分類をいう」と規定しています。

正誤判断のポイント

概念 分類の基準 典型的な誤りの選択肢
種別 用途に関する区分 「権利関係に関する区分」→類型の定義と混同
類型 有形的利用及び権利関係の態様に応じた区分 「用途に関する区分」→種別の定義と混同

種別の例:宅地、農地、林地、見込地、移行地

類型の例:更地、建付地、借地権、底地、区分地上権

典型的な誤答パターン:「更地」を不動産の種別として選択してしまう。更地は類型であり、種別ではない。種別は「宅地」「農地」等の用途による分類。


主要論点4:減価修正の方法

基準の条文

原価法における減価修正の方法は、短答式でも論文式でも頻出する論点です。

減価修正の方法には、耐用年数に基づく方法と、観察減価法の二つがある。これらを併用するものとする。

― 不動産鑑定評価基準 総論第7章第1節

正誤判断のポイント

記述例 正誤 判断の根拠
「耐用年数に基づく方法と観察減価法の二つがある」 基準の文言通り
「これらを併用するものとする」 基準は併用を要請
「耐用年数に基づく方法のみを適用する」 基準は2つの方法の「併用」を規定
「耐用年数に基づく方法又は観察減価法のいずれかを適用する」 「いずれか」ではなく「併用」が基準の要請

減価の三要因の正確な理解

減価の要因は、物理的要因、機能的要因及び経済的要因に分けられる。

― 不動産鑑定評価基準 総論第7章第1節

要因 内容 典型的な誤りの選択肢
物理的要因 物理的な損耗・損傷
機能的要因 機能的な陳腐化・設備の旧式化 「物理的な損傷」と混同
経済的要因 近隣地域の変化等による経済的陳腐化 「市場全体の景気」と混同

主要論点5:取引事例の選択要件

基準の条文

取引事例比較法の事例選択要件は、細かな条件が問われます。

基準では、取引事例は以下の要件を満たすものから選択すべきとされています。

  • 近隣地域又は同一需給圏内の類似地域に存する不動産に係るもの
  • 取引時点が価格時点に近いもの
  • 取引事情が正常なもの又は正常なものに補正できるもの

正誤判断のポイント

記述例 正誤 判断の根拠
「近隣地域又は同一需給圏内の類似地域に存する不動産」 基準の要件通り
「近隣地域に存する不動産のみ 同一需給圏内の類似地域の事例も使用可能
「取引事情が正常なもの又は正常なものに補正できるもの 事情補正が可能であれば使用可能
「取引事情が正常なものに限る 事情補正ができるものも含む

典型的な誤答パターン:「正常な取引事例のみ使用可能」と判断してしまう。基準は「正常なもの又は正常なものに補正できるもの」と規定しており、事情補正ができれば使用可能。


主要論点6:新規賃料と継続賃料の区別

論点の特定

新規賃料継続賃料の区別は、各論の中でも重要な論点です。

基準に基づく区別

項目 新規賃料 継続賃料
場面 新たに賃貸借契約を締結する場合 既存の賃貸借契約を更新・改定する場合
適用手法 積算法、賃貸事例比較法、収益分析法等 差額配分法、利回り法、スライド法、賃貸事例比較法
特徴 市場賃料を求める 契約の経緯等を考慮する

典型的な誤答パターン:差額配分法を新規賃料の評価手法として選択してしまう。差額配分法は継続賃料の評価手法であり、新規賃料には適用しない。


選択肢の正誤を見抜く実践テクニック

令和3年レベルの問題に対応するための3つの技術

技術1:定義の「キーワード」を照合する

基準の定義文には、それぞれ固有のキーワードがある。選択肢のキーワードが基準と一致するかを1語ずつ確認する。

正常価格の定義のキーワード:
✓ 市場性を有する不動産
✓ 現実の社会経済情勢の下で
✓ 合理的と考えられる条件を満たす市場
✓ 市場価値を表示する適正な価格

技術2:「例外規定」の有無を確認する

「すべて」「必ず」「のみ」と書かれた選択肢は、基準に例外規定がないかを確認する。基準に「原則として」「ただし」等の例外規定がある場合、その選択肢は誤り。

技術3:「主語のすり替え」を見抜く

正しい知識を別の主語に当てはめた選択肢に注意する。例:地域要因の説明を個別的要因の主語で記述する。


試験での出題ポイント

学習の優先順位

優先度 分野 学習のポイント
最優先 価格の種類(4類型の定義) 定義を全文暗記、適用場面を具体例で整理
最優先 三方式の意義と併用原則 各手法の定義+「複数の手法を適用すべき」の暗記
不動産の価格に関する諸原則 3要素(効用・稀少性・有効需要)の正確な暗記
不動産の種別と類型 種別=用途、類型=利用形態と権利関係の区別
減価修正の方法 2つの方法+「併用」+減価の3要因
取引事例の選択要件 事例の要件を正確に暗記

過去問の活用法

令和3年の過去問を使った学習法

  1. 時間を計って本番形式で解く:2時間40問の時間配分を体感する
  2. 全選択肢を基準の条文に照らして検証する:誤りの選択肢が基準のどの部分をどう改変しているかを特定する
  3. 「誤りを正しく直す」練習:誤りの選択肢を正しい文に修正する作業が暗記に直結する
  4. 間違えた問題の関連条文を重点暗記する

他年度との組み合わせ学習

活用の順番 年度 目的
1回目 令和3年 基本事項の理解度チェック
2回目 令和4年 標準レベルの問題で実力確認
3回目 令和6年 最新の出題傾向の把握
4回目 間違えた問題を年度横断で復習 弱点の克服

過去問を使った効率的な学習法も参考にしてください。


まとめ

令和3年短答式試験・鑑定理論の主要論点と対策を整理します。

  • 不動産の経済価値の3要素(効用・相対的稀少性・有効需要)の「相関結合」を正確に覚える
  • 三方式の併用原則は「複数の手法を適用すべき」であり「すべての手法を必ず」ではない
  • 種別と類型の区別は「用途」vs「利用形態と権利関係」で覚える
  • 減価修正の方法は耐用年数に基づく方法と観察減価法の「併用」が基準の要請
  • 取引事例の選択要件は正常な取引事情「又は正常なものに補正できるもの」を含む
  • 基準の条文を正確に暗記し、選択肢のキーワードを1語ずつ照合する習慣をつける

基準の条文を繰り返し読み込み、過去問で正誤判断力を鍛えましょう。短答式・鑑定理論の対策鑑定評価基準の暗記術も参考にしてください。