用途的地域とは

用途的地域とは、不動産の用途(住宅・商業・工業など)に基づいて区分される地域のことです。不動産鑑定士試験では、地域分析の基本単位として頻出であり、地域の標準的使用を判定する前提となります。

地域分析においては、まず対象不動産がどの用途的地域に存するかを判定し、当該地域における不動産の標準的使用を判定しなければならない。

― 不動産鑑定評価基準 総論第6章第1節


わかりやすく言うと

街を歩いてみると、「住宅が多いエリア」「商店やオフィスが集まるエリア」「工場が並ぶエリア」というように、似た用途の不動産が集まって一つの「まとまり」を形成していることがわかります。こうした似た用途の不動産が集まっている範囲が用途的地域です。

都市計画法の「用途地域」(13種類)とは別の概念で、鑑定評価基準における独自の地域区分です。


身近な具体例

例1: 住宅地域の風景

閑静な住宅街を思い浮かべてください。道路の両側には戸建住宅やマンションが並び、角に小さなコンビニがある程度。騒音もなく、子どもたちが安全に遊べる環境です。これは典型的な住宅地域です。この地域の標準的使用は「低層〜中層の住宅」となり、この判定が鑑定評価の出発点になります。

例2: 商業地域の風景

駅前のにぎやかな通りには、百貨店、飲食店、銀行、オフィスビルが建ち並んでいます。人通りが多く、看板や広告が目立ちます。これは商業地域であり、標準的使用は「中高層の商業ビル」です。価格形成要因としては、繁華性、交通の便、顧客の量が重要になります。


用途的地域の分類

鑑定評価基準では、用途的地域を以下のように分類しています。

用途的地域 典型的な立地 標準的使用の例 重視される要因
住宅地域 郊外の住宅街 戸建住宅、マンション 居住の快適性、環境
商業地域 駅前、繁華街 商業ビル、店舗 繁華性、収益性
工業地域 湾岸、工業団地 工場、倉庫 交通の便、基盤整備
農地地域 郊外〜農村部 農地(水田・畑) 生産性、灌漑条件
林地地域 山間部 山林 林種、地勢

さらに住宅地域は高度住宅地域、普通住宅地域、農家集落地域などに細分化されます。


用途的地域と用途地域の違い

項目 用途的地域(鑑定評価基準) 用途地域(都市計画法)
根拠 不動産鑑定評価基準 都市計画法
種類 住宅・商業・工業・農地・林地など 13種類(第1種低層住居専用等)
性質 不動産の実態的な利用状況に基づく 法律に基づく指定区分
一致するか 実態の利用と法的指定が異なる場合がある 法律上の規制として存在

鑑定評価では、都市計画法の用途地域の指定内容も参考にしつつ、実態としてどのような用途の地域かを判定します。


鑑定評価における位置づけ

用途的地域の判定は、鑑定評価プロセスの中で以下の役割を担います。

  • 地域分析の出発点: どの用途的地域に属するかの判定が最初のステップ
  • 標準的使用の判定: 用途的地域の種類に応じて標準的使用を判断する
  • 地域要因の分析: 用途的地域ごとに重視すべき地域要因が異なる
  • 同一需給圏の判定: 同じ用途的地域が基本的な同一需給圏となる

関連する用語との違い

用語 意味 違いのポイント
用途的地域 不動産の用途に基づく地域区分 地域分析の基本単位
同一需給圏 対象不動産と代替関係にある不動産が存在する範囲 取引事例の選択範囲
近隣地域 対象不動産を含む、同質的な利用がなされている地域 用途的地域の中のより限定的な範囲
類似地域 近隣地域と類似した地域要因を持つ地域 近隣地域以外の比較対象地域

試験での出題ポイント

短答式試験

  • 用途的地域と用途地域の区別: 「用途的地域は都市計画法に基づく地域区分である」→ 誤り(鑑定評価基準に基づく概念)
  • 用途的地域の種類: 住宅・商業・工業だけでなく、農地地域・林地地域も含まれる点が問われる

論文式試験

  • 「地域分析において用途的地域の判定が重要である理由を論述せよ」
  • 近隣地域・類似地域・同一需給圏との関係を体系的に整理して論述することが求められる

まとめ

用途的地域は、不動産の用途に基づいて区分される地域の概念であり、地域分析の出発点となります。都市計画法の用途地域とは異なり、実態的な利用状況に基づく鑑定評価基準独自の概念である点を明確に理解しておきましょう。価格形成要因の分析においても、用途的地域の種類によって重視する要因が変わることを押さえておくことが重要です。