対象確定条件の3類型|現状・想定・調査範囲
対象確定条件の3類型とは
対象確定条件とは、鑑定評価の対象となる不動産を物的に確定するための条件をいいます。基準では3つの類型が定められており、現状所与の条件(そのままの姿で評価)、想定上の条件(一定の状態を想定して評価)、調査範囲等の条件(調査の範囲を限定して評価)に分類されます。不動産鑑定士試験では、3類型の定義と適用場面の区別が繰り返し出題されます。
鑑定評価の対象とする不動産は、鑑定評価の依頼目的に応じ、条件の設定によりその範囲を確定するものとする。
― 不動産鑑定評価基準 総論第5章第1節
わかりやすく言うと
「この不動産を、どういう前提で評価するか」を明確にするルールです。同じ土地でも、「今の更地の状態で評価する」のか、「建物が建った状態を想定して評価する」のか、「土壌汚染の調査はしない前提で評価する」のかで、評価額は大きく変わります。この前提条件を明示するのが対象確定条件です。
身近な具体例
例1:中古車の査定(現状所与)
中古車を査定に出すとき、「今のこの状態」で査定してもらうのが現状所与の条件です。傷やへこみがあればそのまま反映されますし、走行距離もそのまま査定に含まれます。車を修理した状態での査定額を知りたいなら、それは「修理後を想定した査定」(想定上の条件に相当)になります。
例2:リフォーム済みマンションの評価(想定上の条件)
築30年のマンションを「リフォーム工事を完了した状態」で評価してほしいという依頼があったとします。実際にはまだリフォームしていないのですが、リフォーム後の状態を想定して評価額を出します。これが想定上の条件です。銀行が融資判断のために「工事完了後の担保価値」を知りたい場合などに用いられます。
例3:土壌汚染がないものとして評価(調査範囲等の条件)
工場跡地を評価する際に、「土壌汚染の有無については調査を行わず、汚染がないものとして評価する」という条件を設定する場合があります。これが調査範囲等の条件です。実際には汚染があるかもしれないのですが、調査の範囲を限定することで評価が可能になります。ただし、その旨は鑑定評価書に明記されます。
3類型の詳細
第1類型:現状所与の条件
現状所与の条件とは、対象不動産を価格時点における現実の状態を所与として鑑定評価の対象とすることです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 定義 | 価格時点における現実の状態で評価する |
| 前提 | 対象不動産の現況をそのまま受け入れる |
| 適用場面 | 一般的な売買、担保評価、相続・贈与税の評価 |
| 特徴 | 最も基本的な条件。特段の事情がなければこの条件が適用される |
第2類型:想定上の条件
想定上の条件とは、対象不動産について、価格時点の現実の状態とは異なる一定の状態を想定して鑑定評価の対象とすることです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 定義 | 現実とは異なる状態を想定して評価する |
| 前提 | 想定の内容が合理的であり、実現可能であること |
| 適用場面 | 建物完成後の評価、更地化後の評価、区画整理完了後の評価 |
| 特徴 | 想定の内容・根拠を鑑定評価書に明記する必要がある |
想定上の条件は、以下のような場合に設定されます。
- 建物の建築を想定: 更地に建物が完成した状態を想定して評価(建物完成後の担保評価)
- 建物の取壊しを想定: 建物付き土地について、建物を取り壊した更地の状態を想定して評価
- 造成工事の完了を想定: 素地について、造成完了後の宅地の状態を想定して評価
第3類型:調査範囲等の条件
調査範囲等の条件とは、対象不動産の物的確認にあたり、調査の範囲を限定する条件を設定して鑑定評価の対象とすることです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 定義 | 調査の範囲を限定して評価する |
| 前提 | 調査範囲外の事項について一定の前提を置く |
| 適用場面 | 土壌汚染調査の省略、地下埋設物の不調査、アスベスト調査の省略 |
| 特徴 | 調査範囲外の事項によるリスクは依頼者が負担する |
3類型の比較表
| 比較項目 | 現状所与の条件 | 想定上の条件 | 調査範囲等の条件 |
|---|---|---|---|
| 評価の前提 | 現実の状態 | 想定された状態 | 調査範囲を限定した状態 |
| 現実との関係 | 現実そのまま | 現実と異なる | 一部を調査しない |
| 典型例 | 通常の売買評価 | 建物完成後の評価 | 土壌汚染不調査 |
| 条件設定の根拠 | 不要(基本条件) | 合理性・実現可能性が必要 | 調査困難等の理由が必要 |
| 鑑定評価書への記載 | 通常の記載 | 想定内容の明記が必須 | 限定内容の明記が必須 |
条件設定の要件
想定上の条件の設定要件
想定上の条件を設定するためには、以下の要件を満たす必要があります。
想定上の条件を設定する場合には、対象不動産に係る諸事項についてその設定についての依頼者の同意があるとともに、実現性及び合理性が認められることが必要である。
― 不動産鑑定評価基準 総論第5章第1節
- 依頼者の同意: 条件設定について依頼者が合意していること
- 実現性: 想定した状態が実際に実現する可能性があること
- 合理性: 条件設定に合理的な理由があること
調査範囲等の条件の設定要件
調査範囲等の条件についても、設定の根拠が求められます。
- 調査が技術的に困難であること(地下の状態等)
- 費用対効果の観点から調査が合理的でないこと
- 依頼者がリスクを認識したうえで条件設定に同意していること
対象確定条件と最有効使用の関係
条件によって最有効使用が変わる
対象確定条件の設定によって、対象不動産の最有効使用の判定結果が変わることがあります。
- 現状所与: 建物付き土地 → 建物の存在を前提に最有効使用を判定
- 想定上の条件(更地化を想定): 更地として最有効使用を判定 → 新たな建物の建築が最有効使用となりうる
- 想定上の条件(建物完成を想定): 完成後の建物を前提に最有効使用を判定
試験での出題ポイント
短答式試験
- 3類型の定義の区別: 現状所与・想定上・調査範囲等の条件の違いを正確に判断する
- 想定上の条件の設定要件: 依頼者の同意、実現性、合理性の3要件
- 具体例の判定: 「建物完成後の評価」→想定上の条件、「土壌汚染を調査しない」→調査範囲等の条件
論文式試験
- 対象確定条件の3類型の意義と各類型の内容を論述する問題
- 想定上の条件の設定要件とその趣旨を論述する問題
- 具体的な事例(たとえば「更地化を想定した評価」)について、どの類型が適用されるかを判断し、その理由を説明する問題
暗記のポイント
- 3類型: 現状所与の条件、想定上の条件、調査範囲等の条件
- 想定上の条件の設定要件: 依頼者の同意、実現性、合理性
- 現状所与は現実の状態そのまま、想定上は異なる状態を想定、調査範囲等は調査の範囲を限定
- 想定上の条件の例: 建物完成後、更地化後、造成完了後
- 調査範囲等の条件の例: 土壌汚染不調査、地下埋設物不調査、アスベスト不調査
まとめ
対象確定条件の3類型は、鑑定評価の対象不動産を「どういう前提で評価するか」を明確にする仕組みです。現状所与の条件は最も基本的な前提、想定上の条件は現実と異なる状態を想定する場合、調査範囲等の条件は調査の範囲を限定する場合に適用されます。試験では3類型の定義の区別と想定上の条件の設定要件(依頼者の同意・実現性・合理性)が頻出テーマです。対象確定条件の基本や最有効使用の判定との関係もあわせて整理しておきましょう。