密集市街地整備促進法の概要
密集市街地整備促進法の概要
密集市街地における防災街区の整備の促進に関する法律(密集市街地整備促進法)は、老朽化した木造建築物が密集する市街地の防災機能の確保と土地の合理的かつ健全な利用を図ることを目的とする法律です。
不動産鑑定士の鑑定評価の実務では、防災街区整備地区計画、防災街区整備事業、建替計画の認定などが重要な論点です。
※ 本法令は不動産鑑定士試験(行政法規)の37法令には含まれません。ただし、鑑定評価の実務において不動産の価格形成に影響を与える法令であるため、実務的な観点から解説します。
密集市街地整備促進法の目的
この法律は、密集市街地について計画的な再開発又は開発整備による防災街区の整備を促進するために必要な特別の措置を講ずることにより、密集市街地の防災に関する機能の確保と土地の合理的かつ健全な利用を図り、もって公共の福祉に寄与することを目的とする。
― 密集市街地における防災街区の整備の促進に関する法律 第1条
密集市街地とは
密集市街地とは、老朽化した木造建築物が密集し、十分な公共施設(道路・公園等)が整備されていないため、大規模な火災や地震に対して脆弱な市街地を指します。東京の下町エリアや大阪の木造住宅密集地域などが典型例です。
法律の全体構成
密集市街地整備促進法は、大きく以下の制度で構成されています。
| 制度 | 内容 |
|---|---|
| 防災街区整備方針 | 都市計画として密集市街地の整備方針を定める |
| 防災街区整備地区計画 | 地区レベルで防災性向上のための計画を策定 |
| 防災街区整備事業 | 密集市街地の防災性を高めるための事業 |
| 建替計画の認定 | 老朽建築物の建替えを促進する認定制度 |
| 防災都市施設 | 防災上重要な都市施設の整備 |
防災街区整備方針
概要
防災街区整備方針は、都市計画法に基づく都市計画として定められるものです。密集市街地の中で特に一体的かつ総合的に市街地の再開発を促進すべき地区等を明らかにします。
方針に定める事項
- 防災再開発促進地区: 特に防災性の向上が必要な地区
- 防災街区としての整備の方針
防災街区整備地区計画
概要
防災街区整備地区計画は、密集市街地において防災機能の確保と土地の合理的利用を図るために定められる地区計画です。都市計画法上の地区計画の一種として位置づけられます。
定められる事項
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 地区防災施設 | 地区内で整備すべき防災上必要な道路・公園等 |
| 建築物等の制限 | 建築物の構造(耐火・準耐火等)、壁面の位置、高さ等 |
| 防災街区整備権利移転等促進計画 | 権利関係の調整を促進するための計画 |
特定建築物地区整備計画
防災街区整備地区計画の中で、特定防災機能の確保と土地の合理的かつ健全な利用を図るために定める詳細な計画です。
建築制限
防災街区整備地区計画の区域内で、地区防災施設の区域においては、建築物の建築や土地の形質変更等について市町村長の許可が必要です。
防災街区整備事業
概要
防災街区整備事業は、密集市街地の防災機能の確保と土地の合理的利用を図ることを目的として施行される事業です。土地区画整理法の区画整理事業や都市再開発法の市街地再開発事業に類似した仕組みを持ちます。
施行者
| 施行者 | 説明 |
|---|---|
| 個人施行者 | 一定の条件を満たす個人 |
| 防災街区整備事業組合 | 地権者等で構成される組合 |
| 事業会社 | 防災街区整備事業を施行する会社 |
| 地方公共団体 | 都道府県・市町村 |
| 都市再生機構・地方住宅供給公社 | 公的機関 |
事業の仕組み
防災街区整備事業では、事業区域内の土地・建物の権利を防災施設建築物の一部等に変換します。
| 権利変換の概要 | 内容 |
|---|---|
| 従前の権利 | 事業区域内の土地所有権・借地権・建物所有権等 |
| 従後の権利 | 防災施設建築物の共有持分・借家権等 |
| 補償 | 権利変換を受けない者への金銭補償 |
鑑定評価との関連
防災街区整備事業における権利変換に際しては、従前・従後の資産の評価が必要であり、不動産鑑定士が関与する場面があります。
建替計画の認定
概要
密集市街地内にある老朽化した建築物を建て替える場合に、一定の要件を満たす建替計画について市町村長の認定を受けることができる制度です。
認定の効果
認定を受けた建替計画に基づく建替えには、以下の支援措置が講じられます。
- 容積率の特例: 通常の容積率制限を超えて建築が可能
- 税制上の優遇措置: 一定の税制上のメリット
- 融資制度の活用: 住宅金融支援機構等の融資の活用
認定の要件
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 対象建築物 | 密集市街地内の老朽建築物(耐火・準耐火でない建築物等) |
| 防災性の向上 | 建替え後の建築物が耐火建築物又は準耐火建築物であること |
| 安全性の確保 | 延焼防止上支障がないこと |
延焼等危険建築物に対する措置
除却の勧告
市町村長は、防災再開発促進地区内にある延焼等危険建築物(延焼の危険性が高い建築物)の所有者に対して、建築物の除却その他必要な措置を勧告することができます。
延焼等危険建築物の基準
- 耐火建築物又は準耐火建築物でない建築物
- 隣地境界線又は道路中心線からの距離が一定以下のもの
鑑定評価上の影響
密集市街地整備促進法が適用される地域の不動産を評価する場合、以下の点に留意が必要です。
| 評価上の論点 | 影響 |
|---|---|
| 防災街区整備地区計画の指定 | 建築物の構造制限(耐火・準耐火要件)がコスト増要因 |
| 防災街区整備事業の施行 | 事業の進捗状況が土地の利用可能性に影響 |
| 除却の勧告対象 | 老朽建築物の評価額の減価要因 |
| 建替計画認定による容積率特例 | 容積率の増加が価格にプラスの影響 |
鑑定評価の実務での留意点
重要な制度の整理
- 法律の正式名称: 「密集市街地における防災街区の整備の促進に関する法律」
- 防災街区整備地区計画の内容(地区防災施設、建築物の構造制限等)
- 防災街区整備事業の施行者の種類
- 建替計画の認定の要件と効果
評価における着眼点
- 密集市街地の防災性向上に関する法制度が不動産価格に与える影響
- 行為制限、事業の進捗状況が鑑定評価に及ぼす影響
主要ポイントの整理
- 目的: 防災機能の確保 + 土地の合理的かつ健全な利用
- 防災街区整備地区計画は都市計画法上の地区計画の一種
- 防災街区整備事業の仕組みは権利変換方式
- 建替計画の認定 → 容積率の特例等の支援措置
まとめ
密集市街地整備促進法は、老朽木造建築物が密集する市街地の防災性を向上させるための法律です。防災街区整備地区計画、防災街区整備事業、建替計画の認定制度の3つが主な柱であり、行政法規の試験範囲外ではあるものの実務では各制度の要件と効果を正確に押さえておくことが重要です。都市計画法の地区計画との関係や、土地区画整理法の区画整理事業との類似点も整理しておきましょう。