寄与の原則とは

寄与の原則とは、不動産のある構成要素が不動産全体の収益や価値にどの程度貢献しているかによって、その要素の価値が決まるという原則です。不動産鑑定士試験では、原価法の減価修正リフォーム投資の判断と関連づけて出題されます。

不動産のある部分がその不動産全体の収益獲得に寄与する度合いは、その部分に要した費用(原価)だけで判定するべきではなく、それが全体の収益獲得に寄与している度合いをもって判定すべきである。

― 不動産鑑定評価基準 総論第4章


わかりやすく言うと

「かけた費用と、それによって増える価値は、必ずしも一致しない」ということです。500万円のリフォームをしても、不動産の価値が500万円上がるとは限りません。場合によっては300万円しか上がらないこともあれば、700万円上がることもあります。

大切なのは「いくらかけたか」ではなく「どれだけ価値に貢献しているか」という視点です。


身近な具体例

例1: キッチンリフォームの効果

築25年のマンションに300万円をかけてキッチンをフルリフォームしたとします。しかし、このマンション自体の市場価格が2,000万円程度で、同じマンション内の他の部屋も2,000万円前後で取引されているなら、リフォーム後の価格は2,200万円程度かもしれません。かけた費用300万円に対し、価値の増加は200万円。費用と価値の増加は一致しないのです。

例2: 駐車場の増設

ロードサイドの商業施設で、駐車場を20台分から50台分に拡張するために1,000万円を投じたとします。駐車場が広くなったことで来客数が増え、テナント賃料を上げることができました。年間賃料の増加額が200万円なら、収益還元法の考え方で見ると、この投資は数千万円の価値向上に寄与しています。費用1,000万円に対し、寄与する価値はそれ以上という例です。


鑑定評価における位置づけ

寄与の原則は、鑑定評価の以下の場面で重要な指針となります。

  • 原価法の減価修正: 各構成要素の費用ではなく、寄与度に基づいて価値を判定する
  • 機能的減価の認識: 費用をかけた設備が全体の価値向上に寄与していない場合の減価
  • 増改築の評価: リフォームや増築の費用と価値増加のギャップを適切に判断する
  • 最有効使用の判定: 各要素の寄与度から最適な構成を検討する

関連する用語との違い

用語 意味 違いのポイント
寄与の原則 各要素の価値はその寄与度で決まる(費用=価値ではない) 要素の「貢献度」に着目
均衡の原則 構成要素のバランスが最適なとき価値が最大化される 要素間の「バランス」に着目
収益逓増及び逓減の法則 投入量を増やすと収益は最初は増加するが、やがて減少に転じる 投入量の「最適点」に着目

試験での出題ポイント

短答式試験

  • 費用と価値の不一致: 「ある構成部分に要した費用がそのまま当該部分の価値を表す」→ 誤り。寄与の原則により、価値は寄与度で判定する
  • 原価法との関係: 再調達原価=価値ではないことの根拠として問われる

論文式試験

  • 「原価法における減価修正と寄与の原則の関係を論述せよ」という形式が考えられる
  • 機能的減価の認識根拠として寄与の原則を位置づけられるかがポイント

まとめ

寄与の原則は、「かけた費用ではなく、全体への貢献度で価値が決まる」という原則であり、原価法における減価修正の理論的根拠として重要です。リフォームや増改築の評価において、費用と価値の乖離を正しく認識するための指針となります。諸原則全体の体系や均衡の原則との関連も押さえておきましょう。