河川法の概要

河川法は、河川について洪水・津波・高潮等による災害の発生の防止、河川の適正な利用と流水の正常な機能の維持、河川環境の整備と保全を図ることを目的とする法律です。

不動産鑑定士試験の行政法規では、河川区域河川保全区域の区別、行為制限占用許可制度が出題されます。河川法による制限は対象不動産の利用に直接影響するため、鑑定評価の実務でも重要です。


河川法の目的

この法律は、河川について、洪水、津波、高潮等による災害の発生が防止され、河川が適正に利用され、流水の正常な機能が維持され、及び河川環境の整備と保全がされるようにこれを総合的に管理することにより、国土の保全と開発に寄与し、もつて公共の安全を保持し、かつ、公共の福祉を増進することを目的とする。

― 河川法 第1条

河川法の目的は大きく3つに整理できます。

目的 内容
治水 洪水・津波・高潮等の災害防止
利水 河川の適正な利用と流水の正常な機能の維持
環境 河川環境の整備と保全

河川の分類

一級河川・二級河川・準用河川

河川法では、河川を以下のように分類しています。

分類 指定者 管理者 具体例
一級河川 国土交通大臣 国土交通大臣(一部は都道府県知事等に委任) 利根川、信濃川、淀川
二級河川 都道府県知事 都道府県知事 各都道府県の主要河川
準用河川 市町村長 市町村長 小規模な河川

河川管理者

河川管理者とは、河川の管理を行う主体です。一級河川は国土交通大臣、二級河川は都道府県知事、準用河川は市町村長が河川管理者となります。


河川区域と河川保全区域

河川区域

河川区域は、河川管理者が管理する河川の区域であり、最も強い制限がかかります。

河川区域は以下の3つで構成されます。

区域 内容
1号地(河川の流水が継続的に存する土地) 通常、水が流れている部分(河床)
2号地(河川管理施設の敷地) 堤防、護岸、水門等の敷地
3号地(堤外地) 1号地と2号地に挟まれた土地(河川敷)

河川保全区域

河川保全区域は、河川区域に隣接する一定の区域で、堤防等の河川管理施設の保全のために河川管理者が指定する区域です。河川区域ほど厳格ではありませんが、一定の行為制限がかかります。

河川管理者は、河川区域に隣接する一定の区域を河川保全区域として指定することができる。

― 河川法 第54条第1項

河川予定地

河川工事が行われる予定の土地について、あらかじめ河川予定地として指定することができ、指定された区域では一定の行為制限がかかります。


河川区域における行為制限

原則

河川区域内では、以下の行為が河川管理者の許可なく行うことはできません。

行為 根拠条文 内容
土地の占用 第24条 河川区域内の土地を占用する場合
土石等の採取 第25条 河川区域内の土石・砂利等を採取する場合
工作物の新築等 第26条 河川区域内に工作物を新築・改築・除却する場合
土地の掘削等 第27条 土地の掘削・盛土・切土その他土地の形状を変更する行為、竹木の栽植・伐採

河川区域内の土地において工作物を新築し、改築し、又は除却しようとする者は、河川管理者の許可を受けなければならない。

― 河川法 第26条第1項

流水の占用

河川の流水を利用する場合も、河川管理者の許可が必要です。

河川の流水を占用しようとする者は、河川管理者の許可を受けなければならない。

― 河川法 第23条


河川保全区域における行為制限

河川保全区域内では、以下の行為について河川管理者の許可が必要です。

行為 内容
土地の掘削・盛土・切土 土地の形状を変更する行為
工作物の新築・改築 建築物その他の工作物の建設

河川区域と比較すると、河川保全区域の制限はやや緩やかですが、堤防の安全性に影響を及ぼす行為は制限されます。


河川区域内の土地の占用許可

占用許可制度

河川区域内の土地(河川敷等)を使用するためには、河川管理者から占用許可を受ける必要があります。

占用が認められる場合

用途 具体例
公共的施設 橋梁、道路、上下水道管
公園・緑地 河川敷の公園整備
運動施設 河川敷のグラウンド
船舶関連施設 桟橋、係留施設

占用料

河川区域内の土地を占用する場合、原則として占用料を支払う必要があります。占用料の額は、河川管理者が定めます。


河川法と他の法律との関係

都市計画法との関係

河川区域や河川保全区域は、都市計画法の用途地域の指定とは別に設定されます。用途地域内にある土地であっても、河川区域に該当すれば河川法の制限が優先的に適用されます。

建築基準法との関係

河川保全区域内に建築物を建築する場合、建築基準法の規制に加えて、河川法に基づく河川管理者の許可も必要となります。


鑑定評価との関連

河川法の制限が価格に与える影響

区域 影響
河川区域内 土地の利用が著しく制限される。私有地が河川区域内にある場合、建築不可等の制約が大きな減価要因
河川保全区域内 建築制限がかかるため、利用可能な建築物が制限される。これも減価要因
河川区域に近接する土地 浸水リスク(水害リスク)が価格形成要因として考慮される

水害リスクと鑑定評価

近年、水害リスクの不動産価格への影響が注目されています。河川法による規制区域の有無に加えて、水防法に基づくハザードマップの情報も鑑定評価において重要な考慮事項です。

考慮事項 内容
浸水想定区域 洪水時に浸水が想定される区域かどうか
浸水の深さ 想定される浸水の深さ(0.5m未満、0.5〜3m、3m以上等)
過去の浸水履歴 過去に実際に浸水被害が発生したかどうか

河川敷の評価

河川区域内の土地(河川敷)は、建築物の建築が制限されるため、その評価額は極めて低い水準となります。ただし、占用許可を得て特定の用途に利用されている場合は、占用権の経済価値を考慮することがあります。


試験での出題ポイント

短答式試験

  • 一級河川の管理者は国土交通大臣、二級河川の管理者は都道府県知事
  • 河川区域河川保全区域の違い(制限の厳格さの違い)
  • 河川区域内の行為制限(第24〜27条): 占用、採取、工作物の新築等はすべて河川管理者の許可が必要
  • 「河川保全区域内では一切の建築行為が禁止されている」→ 誤り。許可を受ければ可能

論文式試験

  • 河川区域・河川保全区域の制限が不動産の鑑定評価に与える影響の論述
  • 水害リスクと価格形成要因の関係

暗記のポイント

  1. 河川の分類: 一級河川(国土交通大臣)、二級河川(都道府県知事)、準用河川(市町村長)
  2. 河川区域 = 1号地(流水地)+ 2号地(管理施設敷地)+ 3号地(堤外地)
  3. 河川区域内の制限: 占用採取工作物の新築土地の形状変更 → すべて許可制
  4. 河川保全区域: 河川区域に隣接する区域で、掘削・盛土・工作物の新築等が許可制
  5. 河川区域の許可権者は河川管理者

まとめ

河川法は、治水・利水・環境保全の観点から河川を管理する法律であり、河川区域と河川保全区域において厳格な行為制限を課しています。不動産の鑑定評価では、対象不動産が河川区域・河川保全区域に該当するかどうかが利用制限の有無に直結するため、価格形成要因の分析において正確に把握する必要があります。水害リスクの評価も含めて、都市計画法など他の行政法規との関係も整理しておきましょう。