純収益とは

純収益とは、不動産から得られる総収益から総費用を控除した残りの収益のことです。不動産鑑定士試験では、収益還元法の適用における最も重要な構成要素として頻出です。

純収益は、不動産に帰属する適正な収益をいい、一般に、総収益から総費用を控除して求めるものとする。

― 不動産鑑定評価基準 総論第7章第1節


わかりやすく言うと

賃貸マンションを持っていると、家賃収入が入ってきます。しかし、管理費、修繕費、固定資産税、保険料など、さまざまな費用もかかります。家賃収入(総収益)から、これらの費用(総費用)を差し引いた「手残り」が純収益です。

収益還元法では、この純収益を還元利回りで割って不動産の価格を求めます。つまり、純収益の正確な把握が、収益価格の精度を左右するのです。


身近な具体例

例1: 賃貸アパートの純収益

月額家賃8万円の部屋が6室あるアパートを考えます。

総収益 = 8万円 × 6室 × 12ヶ月 = 576万円
空室等損失 = 576万円 × 5% = 約29万円
実効総収益 = 576万円 − 29万円 = 547万円

総費用:
  管理費      60万円
  修繕費      30万円
  固定資産税等 50万円
  損害保険料  10万円
  合計       150万円

純収益 = 547万円 − 150万円 = 397万円

この純収益397万円が、収益還元法で使用される数値です。

例2: 事業用ビルの純収益

企業が自ら使用しているオフィスビルには直接の賃料収入がありません。この場合、もしこのビルを賃貸したら得られるであろう賃料(想定賃料)をもとに総収益を算定します。これを想定上の収益といい、自用の不動産の収益価格を求める際に用います。


純収益の構成要素

総収益に含まれるもの

項目 内容
賃料収入 貸室・貸地の賃料(共益費含む)
駐車場収入 駐車場の使用料
その他収入 看板設置料、自動販売機収入など
空室等損失 空室・滞納による収入減(マイナス項目)

総費用に含まれるもの

項目 内容
維持管理費 清掃、警備、設備点検など
修繕費 通常の修繕に要する費用
公租公課 固定資産税、都市計画税
損害保険料 火災保険、地震保険など
貸倒れ準備費 賃料滞納に備える費用
空室等損失相当額 空室リスクに対応する費用

鑑定評価における位置づけ

純収益は、収益還元法の2つの手法で異なる使い方をされます。

  • 直接還元法: 1年間の安定的な純収益を還元利回りで割って価格を求める
  • DCF法: 各期の純収益を予測し、割引率で現在価値に割り引いて価格を求める
  • 賃料評価: 新規賃料の算定でも純収益の概念が使われる

関連する用語との違い

用語 意味 違いのポイント
純収益 総収益 − 総費用 不動産に帰属する適正な収益
総収益 不動産から得られる全ての収入 費用控除前の「グロス」の収入
還元利回り 純収益を価格に変換する率 純収益を「割る」ための数値
NOI 実務で使われる用語(純収益とほぼ同義) Net Operating Incomeの略

試験での出題ポイント

短答式試験

  • 総費用に含まれる項目: 「減価償却費は総費用に含まれる」→ 場合による(償却前純収益と償却後純収益の区別が問われる)
  • 空室率の取扱い: 空室等損失を総収益から控除する点が問われる

論文式試験

  • 「純収益の意義と算定方法を述べ、総収益・総費用の構成項目を論述せよ」
  • 償却前純収益と償却後純収益の使い分け(直接還元法とDCF法での違い)を説明できるかがポイント

まとめ

純収益は、不動産の総収益から総費用を控除した「手残り」であり、収益還元法の根幹をなす概念です。総収益・総費用の各項目を正確に把握することが、適切な収益価格の算定につながります。DCF法における各期の純収益予測や、還元利回りとの関係も併せて学習しましょう。