学習スケジュールの立て方とは

不動産鑑定士試験の合格には、一般的に2,000〜5,000時間の学習が必要とされています。短期集中型の1年プランと、社会人向けの2年プランのどちらを選ぶかは、確保できる学習時間と基礎知識の有無によって決まります。どちらのプランでも、科目ごとの時間配分と月別のマイルストーンを明確に設定し、計画的に学習を進めることが合格の鍵です。

本記事では、1年プランと2年プランの具体的なスケジュールを月単位で詳しく解説します。

合格に必要な学習時間の目安

科目別の学習時間

科目 配分 1年プラン(約3,000時間) 2年プラン(約3,500時間)
鑑定理論(論文+演習) 40% 約1,200時間 約1,400時間
民法 15% 約450時間 約525時間
経済学 15% 約450時間 約525時間
会計学 15% 約450時間 約525時間
行政法規 15% 約450時間 約525時間

鑑定理論の学習には、不動産鑑定評価基準及び同留意事項の正確な暗記が不可欠であり、他の科目と比べて圧倒的に多くの時間を要する。

鑑定理論が全体の40%を占める理由は、短答式論文式+演習の両方で出題され、配点も最大だからです。

前提知識による学習時間の差

受験生のタイプ 目安の総学習時間
法学部出身+簿記2級以上 2,000〜2,500時間
宅建合格者 2,500〜3,500時間
関連知識なしの初学者 3,500〜5,000時間

1年プラン(短期集中型)

1年プランの前提条件

  • 1日の学習時間:平均8時間(専業受験生向け)
  • 学習開始時期:前年の6月(翌年5月の短答式→8月の論文式を目指す)
  • 適している人:専業受験生、または長期休暇が取得できる人

月別スケジュール

第1期:基礎固め(6月〜9月)

鑑定理論 その他科目 1日の目安
6月 基準の通読(1回目)、体系の理解 民法:基本テキスト読み込み 8時間
7月 基準の精読+暗記開始、三方式の理解 経済学:ミクロの基礎 8時間
8月 基準暗記の反復、価格の類型の完全暗記 経済学:マクロの基礎 8時間
9月 論文答案構成の練習開始 会計学:簿記の基礎から開始 8時間

第1期のマイルストーン: – 基準の全範囲を2回以上読了 – 主要な定義の暗記が完了 – 民法・経済学の基本テキスト1周目が完了

第2期:応用力養成(10月〜12月)

鑑定理論 その他科目 1日の目安
10月 論文の答案執筆練習、演習問題の開始 民法:判例学習、会計学:頻出論点 8時間
11月 過去問演習(論文・演習)、基準暗記の精度向上 経済学:グラフ作成練習、会計学:論述練習 8時間
12月 過去問演習の継続、弱点の洗い出し 民法:答案構成練習、行政法規:学習開始 8時間

第2期のマイルストーン: – 鑑定理論の過去問5年分を1周 – 演習科目の基本的な計算手順を習得 – 各科目のテキスト2周目が完了

第3期:短答式対策集中(1月〜3月)

鑑定理論 行政法規 その他科目 1日の目安
1月 肢別問題集1周目 頻出法令の集中学習 論文科目は維持 8時間
2月 肢別問題集2周目 肢別問題集1周目 論文科目は維持 8時間
3月 肢別問題集3周目、基準暗記の総復習 肢別問題集2周目、数字の暗記 論文科目は維持 8時間

第3期のマイルストーン: – 鑑定理論の肢別問題集3周完了、正答率80%以上 – 行政法規の肢別問題集2周完了、正答率70%以上

第4期:短答直前〜論文追い込み(4月〜8月)

内容 1日の目安
4月 短答式の総仕上げ、模試受験 8時間
5月(前半) 短答式直前対策(弱点補強のみ) 8時間
5月(後半) 短答式試験受験→論文式対策に完全シフト 8時間
6月 論文全科目の過去問演習、答案添削 10時間
7月 論文模試、弱点補強、基準暗記の最終確認 10時間
8月 論文式試験受験(直前は体調管理も重要) 8時間

2年プラン(社会人向け)

2年プランの前提条件

  • 1日の学習時間:平日3〜4時間、休日6〜8時間
  • 学習開始時期:1年目の4月(1年目の翌年5月に短答式→2年目の8月に論文式)
  • 適している人:フルタイムで働きながら合格を目指す社会人

1年目:短答式合格を目指す

1年目・前半(4月〜9月)

学習内容 時間/週
4月 鑑定理論:基準の通読開始 20時間
5月 鑑定理論:基準の精読、暗記開始 20時間
6月 鑑定理論:暗記の反復+行政法規:学習開始 20時間
7月 鑑定理論:各論の類型別の学習 20時間
8月 鑑定理論+行政法規:並行学習 20時間
9月 肢別問題集の開始(鑑定理論) 20時間

1年目・後半(10月〜翌年5月)

学習内容 時間/週
10月 肢別問題集1周目(鑑定理論+行政法規) 20時間
11月 肢別問題集2周目 22時間
12月 肢別問題集3周目+弱点補強 22時間
1月 行政法規の数字暗記、基準暗記の精度向上 22時間
2月 模試受験、弱点の洗い出し 24時間
3月 総復習+模試2回目 24時間
4月 直前対策(弱点集中) 25時間
5月 短答式試験受験 25時間

1年目のマイルストーン: – 基準の暗記率80%以上 – 鑑定理論の肢別正答率85%以上 – 行政法規の肢別正答率70%以上 – 短答式試験合格

2年目:論文式合格を目指す

2年目・前半(6月〜12月)

鑑定理論 その他科目 時間/週
6月 論文答案構成の練習開始 民法:基本テキスト 22時間
7月 答案執筆練習、演習の計算手順 経済学:ミクロの基礎 22時間
8月 過去問演習開始 経済学:マクロの基礎 22時間
9月 過去問演習の継続 会計学:簿記の基礎 22時間
10月 演習問題の反復 民法:判例学習、会計学:頻出論点 24時間
11月 論文・演習の過去問2周目 経済学:計算問題、会計学:論述練習 24時間
12月 弱点の洗い出し、基準暗記の再強化 全科目のテキスト総復習 24時間

2年目・後半(1月〜8月)

学習内容 時間/週
1月 全科目の過去問演習(3周目) 25時間
2月 答案添削(予備校の模試利用推奨) 25時間
3月 弱点科目の集中対策 25時間
4月 模試受験、全科目の最終確認 28時間
5月 短答式の復習(免除でない場合)+論文対策 28時間
6月 論文直前対策:全科目の答案練習 30時間
7月 最終仕上げ:基準暗記+弱点補強 30時間
8月 論文式試験受験 25時間

2年目のマイルストーン: – 鑑定理論の論文過去問3周完了 – 演習科目で安定して7割以上得点 – 全科目の答案構成が時間内にできる – 論文式試験合格

科目別の時間配分の調整

基礎知識がある場合の調整

前提知識によって、科目の時間配分を調整することが重要です。

前提知識 調整方法
宅建合格者 民法・行政法規の時間を20%削減し、鑑定理論に回す
法学部出身 民法の時間を30%削減し、会計学・経済学に回す
簿記2級以上 会計学の時間を30%削減し、鑑定理論に回す
経済学部出身 経済学の時間を30%削減し、鑑定理論に回す

弱点科目がある場合の調整

学習を進める中で弱点科目が見つかった場合は、以下のルールで調整します。

  • 鑑定理論の配分は40%以下にしない:最重要科目の学習時間を削らない
  • 弱点科目は他の科目から5〜10%を移す:得意科目の時間を削って補充する
  • 苦手科目の基礎に戻る勇気を持つ:応用ができないのは基礎が不十分な場合が多い

直前期の調整法

短答式試験の直前2週間

内容
14日前〜8日前 肢別問題集の最終周回(苦手分野のみ)
7日前〜4日前 基準の重要条文の総復習
3日前〜前日 模試の見直し+体調管理
当日 朝は軽い復習のみ、体調最優先

論文式試験の直前2週間

内容
14日前〜8日前 全科目の答案構成練習(1日2問ずつ)
7日前〜4日前 鑑定理論の基準暗記の最終確認
3日前〜前日 暗記事項の総チェック+体調管理
当日 朝は軽い暗記確認のみ

直前期にやってはいけないこと

  • 新しい教材に手を出す:既存の教材の復習に集中する
  • 睡眠時間を削る:睡眠不足は記憶力と集中力の大敵
  • 苦手分野に深入りしすぎる:直前期は得意分野の確認に時間を使う方が効率的
  • SNSで他の受験生の進捗を気にしすぎる:自分のペースを守る

試験での出題ポイント

短答式試験

短答式試験の合格に向けたスケジュールのポイントは以下のとおりです。

  • 肢別問題集は最低3周:回数を重ねるごとに、解くスピードと正答率が向上する
  • 行政法規は短答式直前3ヶ月で集中:暗記科目のため、短期集中が効率的
  • 模試は必ず受験する:特に独学の場合、模試で自分の実力を客観的に把握することが重要

論文式試験

論文式試験の合格に向けたスケジュールのポイントは以下のとおりです。

  • 答案を書く練習は早めに開始:「知っている」と「書ける」は別次元の能力
  • 演習科目は過去問を2周以上:計算手順の定着には反復が必要
  • 直前1ヶ月は全科目バランスよく:特定の科目に偏りすぎない

暗記のポイント

学習スケジュールにおける暗記の組み込み方をまとめます。

  • 基準の暗記は毎日のルーティンに:1日15〜30分を暗記専用の時間として確保する
  • 暗記のピークは試験日に合わせる:直前に最も記憶が鮮明になるよう、反復スケジュールを逆算して設定する
  • 暗記と理解を交互に行う:暗記だけの時間が続くと集中力が下がるため、理解を深める学習と交互に行う
  • 週1回は暗記テストを実施:自分で小テストを作り、暗記の定着度を確認する
  • 暗記内容をグループ化する価格の4類型三方式など、関連する内容をセットで覚える

まとめ

不動産鑑定士試験の学習スケジュールは、自分の状況に合ったプランを選び、着実に実行することが最も重要です。

1年プラン

  • 対象者:専業受験生、1日8時間以上確保できる人
  • 総学習時間:約3,000時間
  • 特徴:短期集中で一気に合格を目指す
  • 注意点:体力・精神力の維持が課題

2年プラン

  • 対象者:社会人、1日3〜4時間程度の人
  • 総学習時間:約3,500時間
  • 特徴:1年目に短答式、2年目に論文式と段階的に攻略
  • 注意点:1年目の短答式合格が2年目のモチベーションを大きく左右する

共通の重要ポイント

  • 科目配分:鑑定理論40%、民法15%、経済学15%、会計学15%、行政法規15%
  • マイルストーン管理:月ごとの目標を設定し、進捗を確認する
  • 直前期の調整:新しいことに手を出さず、既存の知識の確認に集中する
  • 体調管理:試験本番に最高のパフォーマンスを出せるよう、直前は体調管理を最優先にする

独学での学習法も参考にしながら、自分に合ったスケジュールを作成し、合格を勝ち取りましょう。