類型と評価手法の関係

鑑定評価の三方式(原価法、取引事例比較法、収益還元法)は、不動産の類型によって適用可能性や説得力が異なります。不動産鑑定士試験では、類型ごとに重視すべき手法を理解することが重要です。

三方式を併用し、各試算価格等が有する説得力に係る判断を行った上で、鑑定評価額を決定しなければならない。

― 不動産鑑定評価基準 総論第8章第4節


更地の評価

重視する手法

手法 適用 重視度
取引事例比較法 最も重視
原価法 造成地等で適用
収益還元法 土地残余法、開発法

理由

  • 取引事例比較法:更地の取引事例が比較的豊富、市場参加者も取引価格を重視
  • 原価法:更地には通常適用困難(造成費が分かる場合は適用可能)
  • 収益還元法:土地残余法、開発法として適用可能
【更地の評価のポイント】
  ・取引事例比較法を中心に評価
  ・大規模画地は開発法も適用
  ・収益用不動産の想定が可能なら土地残余法も適用

建付地の評価

重視する手法

手法 適用 重視度
取引事例比較法 重視
原価法 最も重視(土地+建物)
収益還元法 賃貸想定なら重視

理由

  • 原価法:土地価格+建物価格として積算可能
  • 取引事例比較法:複合不動産の取引事例と比較
  • 収益還元法:賃貸を想定できる場合に適用
【建付地の評価のポイント】
  ・自用の場合は原価法と取引事例比較法を重視
  ・建付減価の有無を確認
  ・最有効使用との関係を検討

借地権の評価

重視する手法

手法 適用 重視度
取引事例比較法 事例があれば重視
原価法 直接適用は困難
収益還元法 差額還元法として適用
割合法 広く用いられる

主な評価方法

借地権の評価には、以下の方法があります。

  • 割合法:更地価格 × 借地権割合
  • 差額還元法:差額地代を還元
  • 取引事例比較法:類似の借地権取引と比較
【借地権の評価のポイント】
  ・割合法と差額還元法を併用
  ・地代水準と借地権価格の関係を確認
  ・取引事例があれば重視

底地の評価

重視する手法

手法 適用 重視度
収益還元法 地代収入の還元
取引事例比較法 事例があれば参考
割合法 底地割合を適用

主な評価方法

底地の評価は、以下の方法で行います。

  • 収益還元法:地代収入を還元
  • 割合法:更地価格 × 底地割合
  • 取引事例比較法:類似の底地取引と比較
【底地の評価のポイント】
  ・収益還元法(地代収入の還元)を中心に評価
  ・借地権価格との整合性を確認
  ・合計が更地価格を下回ることを確認

区分所有建物の評価

重視する手法

手法 適用 重視度
取引事例比較法 最も重視
原価法 参考として適用
収益還元法 賃貸用なら重視

理由

  • 取引事例比較法:分譲マンション等は取引事例が豊富
  • 原価法:土地持分+建物専有部分として積算
  • 収益還元法:賃貸用の場合に適用
【区分所有建物の評価のポイント】
  ・住居用は取引事例比較法を最重視
  ・投資用は収益還元法も重視
  ・管理状態、修繕積立金の状況も考慮

賃貸用不動産の評価

重視する手法

手法 適用 重視度
収益還元法 最も重視
取引事例比較法 参考として適用
原価法 参考程度

理由

  • 収益還元法:投資家は収益性を重視
  • 取引事例比較法:投資利回りを含めた比較
  • 原価法:収益との乖離が生じやすい
【賃貸用不動産の評価のポイント】
  ・DCF法と直接還元法を併用
  ・還元利回り・割引率の査定が重要
  ・テナント構成、賃料ギャップを分析

証券化対象不動産の評価

重視する手法

手法 適用 重視度
収益還元法(DCF法) 最も重視
直接還元法 DCF法と併用
原価法 参考程度
取引事例比較法 参考程度

理由

証券化対象不動産は、投資家向けの評価であり、DCF法が中心となります。

【証券化対象不動産の評価のポイント】
  ・DCF法の適用が必須
  ・エンジニアリングレポートの活用
  ・各種パラメータの合理的な設定

工場・倉庫の評価

重視する手法

手法 適用 重視度
原価法 最も重視
取引事例比較法 事例が乏しい
収益還元法 賃貸用なら適用

理由

  • 原価法:特殊な建物の再調達原価からアプローチ
  • 取引事例比較法:類似事例が乏しいことが多い
  • 収益還元法:賃貸用の場合に適用
【工場・倉庫の評価のポイント】
  ・原価法を中心に評価
  ・特殊設備の減価修正に留意
  ・市場性減価(用途の限定性)を考慮

農地・林地の評価

重視する手法

手法 適用 重視度
取引事例比較法 最も重視
収益還元法 収益還元法として適用
原価法 適用困難

理由

  • 取引事例比較法:農地・林地の取引事例と比較
  • 収益還元法:農業収益、林業収益を還元
  • 原価法:通常は適用困難

まとめ表

類型 最重視する手法 理由
更地 取引事例比較法 取引事例が豊富
建付地(自用) 原価法、取引事例比較法 積算が可能、事例との比較
借地権 割合法、差額還元法 地代との関係が重要
底地 収益還元法 地代収入が基礎
賃貸不動産 収益還元法 投資家は収益重視
証券化対象 DCF法 投資家向け評価
工場・倉庫 原価法 事例が乏しい

試験での出題ポイント

短答式試験

  • 類型別の重視する手法
  • 各手法の適用可能性
  • 賃貸用不動産自用不動産の違い
  • 証券化対象不動産の評価手法

論文式試験

  • 類型別の重視すべき手法を体系的に論述
  • 特定の類型について三方式の適用を説明
  • 手法選択の判断基準を論じる

暗記のポイント

  1. 更地:取引事例比較法を重視
  2. 賃貸用不動産:収益還元法を重視
  3. 証券化対象:DCF法が中心
  4. 工場・倉庫:原価法を重視
  5. 借地権・底地:割合法、収益還元法

まとめ

不動産の類型によって、重視すべき評価手法は異なります。更地では取引事例比較法、賃貸用不動産では収益還元法、証券化対象不動産ではDCF法が中心となり、工場・倉庫のような特殊な不動産では原価法が重視されます。ただし、三方式を可能な限り併用し、各試算価格の説得力を判定した上で鑑定評価額を決定することが原則です。関連する論点として、三方式の説得力の判定不動産の種別と類型もあわせて学習しましょう。