国土利用計画法の概要|届出制と許可制
国土利用計画法の概要
国土利用計画法は、適正かつ合理的な土地利用の確保を図るため、土地取引について一定の規制を設けている法律です。不動産鑑定士試験の短答式では、事後届出制の面積基準が最も重要な暗記事項であり、ほぼ毎年出題されます。
土地の取引規制には、通常の事後届出制のほか、注視区域・監視区域における事前届出制、規制区域における許可制の3つの制度があります。
国土利用計画法の目的
この法律は、国土利用計画の策定に関し必要な事項について定めるとともに、土地利用基本計画の作成、土地取引の規制に関する措置その他土地利用を調整するための措置を講ずることにより、国土形成計画法による措置と相まつて、総合的かつ計画的な国土の利用を図ることを目的とする。
― 国土利用計画法 第1条
国土利用計画法の主な内容は以下の4つです。
- 国土の利用に関する基本理念を定める
- 土地利用基本計画の策定
- 土地取引の規制に関する措置(本法の核心部分)
- 遊休土地に関する措置
土地利用基本計画と5地域
国土利用計画法は、都道府県が土地利用基本計画を定めることとしており、国土を以下の5つの地域に区分します。
| 地域 | 根拠法 |
|---|---|
| 都市地域 | 都市計画法 |
| 農業地域 | 農業振興地域の整備に関する法律 |
| 森林地域 | 森林法 |
| 自然公園地域 | 自然公園法 |
| 自然保全地域 | 自然環境保全法 |
この5地域の区分は重複指定が可能であり、複数の地域に属する土地もあります。不動産鑑定評価においても、対象不動産がどの地域に属するかは、価格形成要因の分析に重要です。
事後届出制(通常の届出制度)
概要
現在、日本全国で原則として適用されているのが事後届出制です。一定面積以上の土地取引について、契約締結後に届出を行う制度です。
届出が必要な面積基準(暗記必須)
| 区域 | 届出が必要な面積 |
|---|---|
| 市街化区域 | 2,000㎡以上 |
| 市街化調整区域・非線引き区域(市街化区域以外の都市計画区域) | 5,000㎡以上 |
| 都市計画区域外 | 10,000㎡(1ha)以上 |
この面積基準は試験で頻出であり、確実に暗記しておく必要があります。
届出の手続
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 届出義務者 | 権利取得者(買主等) |
| 届出先 | 市町村長を経由して都道府県知事に届出 |
| 届出期限 | 契約締結後2週間以内 |
| 届出事項 | 当事者の氏名、契約年月日、土地の所在・面積、利用目的、対価の額 |
審査対象
事後届出制では、都道府県知事は利用目的のみを審査します。
- 価格の審査は行わない(事前届出制との大きな違い)
- 利用目的が土地利用基本計画に適合しない場合は勧告できる
勧告の内容と効果
- 都道府県知事は、届出から3週間以内に勧告できる
- 勧告に従わない場合は公表できる
- 勧告に法的強制力はない(罰則なし)
事前届出制(注視区域・監視区域)
注視区域
- 地価が相当な程度を超えて上昇する恐れがある区域
- 都道府県知事が指定
- 面積基準は事後届出制と同じ
監視区域
- 地価が急激に上昇する恐れがある区域
- 都道府県知事が指定
- 面積基準を引き下げることができる(都道府県の規則で定める)
事前届出制の特徴
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 届出時期 | 契約締結前 |
| 届出義務者 | 当事者双方(売主と買主) |
| 審査対象 | 利用目的と価格の両方 |
| 勧告 | 利用目的又は価格について勧告可 |
事前届出制では、勧告の間は契約を締結してはなりません(勧告前の契約禁止)。
許可制(規制区域)
概要
規制区域は、土地の投機的取引が集中して地価が急激に上昇している区域について、都道府県知事が指定します。
- 土地取引には都道府県知事の許可が必要
- 面積にかかわらず全ての取引が対象
- 許可なく行った契約は無効
- 現在まで指定された例はない
3つの制度の比較表
| 項目 | 事後届出制 | 事前届出制(注視区域) | 事前届出制(監視区域) | 許可制(規制区域) |
|---|---|---|---|---|
| 届出時期 | 契約後2週間以内 | 契約前 | 契約前 | 契約前(許可申請) |
| 届出義務者 | 権利取得者 | 当事者双方 | 当事者双方 | 当事者双方 |
| 面積基準 | 市街化区域2,000㎡等 | 事後届出制と同じ | 引き下げ可 | なし(全て) |
| 審査対象 | 利用目的のみ | 利用目的+価格 | 利用目的+価格 | 利用目的+価格 |
| 効果 | 勧告 | 勧告 | 勧告 | 許可/不許可 |
届出不要の場合
以下の場合は、届出が不要です。
当事者の性質による除外
- 国・地方公共団体等が当事者の場合
- 農地法の許可を受けた場合
取引の性質による除外
- 民事調停法による調停に基づく場合
- 裁判所の確定判決による場合
- 相続、遺贈、法人の合併等(対価を伴わない取得)
- 強制競売による取得
面積基準以下
- 各区域の面積基準未満の取引
注意点(頻出の引っかけ)
- 贈与は届出不要(対価を伴わないため)
- 交換は届出が必要(対価性がある)
- 抵当権の設定は届出不要(土地の所有権移転ではない)
- 予約完結権の行使は届出が必要(売買の予約は届出対象)
- 信託の引受けによる取得は届出不要
- 面積の判定は、一団の土地として判断(分割して基準以下にしても合算される)
一団の土地の判定(具体例)
一団の土地とは、取引の目的となる土地が物理的に一体性を有するか、利用上の一体性を有する場合に合算して面積基準を判定するものです。
| ケース | 面積 | 届出の要否 |
|---|---|---|
| 市街化区域内で隣接する2筆(A:1,200m2 + B:1,000m2)を同一人に売却 | 合算2,200m2 | 届出必要(2,000m2以上) |
| 市街化区域内の1筆1,500m2を分割して2人に売却 | 各1,500m2以下 | 届出不要(個別に基準未満) |
| 都市計画区域外の2筆(A:6,000m2 + B:5,000m2)を一括売却 | 合算11,000m2 | 届出必要(10,000m2以上) |
一団の土地の判定では、権利取得者を基準に判断します。同一の権利取得者が一体として利用する目的で取得する場合に合算されます。
届出事項と届出先
届出事項
- 当事者の氏名・住所
- 契約の締結年月日
- 土地の所在及び面積
- 土地の利用目的
- 対価の額
- その他政令で定める事項
届出先
市町村長を経由して都道府県知事に届出ます。市町村長ではなく、最終的な届出先は都道府県知事である点に注意が必要です。
勧告の効果
事後届出制における勧告
- 利用目的の変更を勧告
- 勧告に従わない場合は公表
- 罰則はない(行政指導の性格)
届出をしなかった場合
- 届出をしなかった場合や虚偽の届出をした場合は罰則あり(6月以下の懲役又は100万円以下の罰金)
- ただし、契約自体は有効(届出と契約の効力は別)
試験での出題ポイント
国土利用計画法は短答式で頻出のテーマです。
暗記必須事項
- 面積基準:市街化区域2,000㎡、その他都市計画区域5,000㎡、都市計画区域外10,000㎡
- 届出義務者:事後届出は権利取得者、事前届出は当事者双方
- 届出期限:契約締結後2週間以内
- 審査対象:事後届出は利用目的のみ、事前届出は利用目的と価格
- 届出先:市町村長を経由して都道府県知事
よく出る引っかけ
- 「事後届出制では価格も審査される」→ 誤り(利用目的のみ)
- 「届出をしなかった場合、契約は無効」→ 誤り(契約は有効、罰則はある)
- 「相続による取得は届出が必要」→ 誤り(届出不要)
- 「面積基準は個々の取引ごとに判断する」→ 誤り(一団の土地として判断)
遊休土地制度
国土利用計画法には、遊休土地に関する措置も定められています。
遊休土地の通知
以下のいずれにも該当する場合、都道府県知事は土地の所有者に通知できます。
- 取引届出から2年を経過していること
- 土地の利用の程度が周辺地域の利用状況に照らして著しく劣っていること
- 一定面積以上(事後届出の面積基準と同じ)であること
遊休土地の勧告
通知を受けた所有者は、通知の日から起算して6週間以内に利用・処分計画を届け出なければなりません。都道府県知事は、この計画が土地利用基本計画に適合しない場合、勧告できます。
鑑定評価との関連
国土利用計画法は、不動産鑑定評価にも以下の点で関連します。
- 事前届出制における価格審査では、「公表された公示価格を規準として算定した価格」が基準となる
- これは地価公示法における公示価格の規準と同様の考え方
- 鑑定評価実務においても、国土利用計画法上の地域区分(5地域)は対象不動産の法的規制の分析に必要
まとめ
国土利用計画法は、土地取引の適正化を図るため、事後届出制・事前届出制・許可制の3つの規制制度を設けています。現在主に適用されているのは事後届出制であり、市街化区域2,000m2以上、その他の都市計画区域5,000m2以上、都市計画区域外10,000m2以上の面積基準を暗記することが最優先です。
事後届出では利用目的のみを審査し、事前届出では利用目的と価格の両方を審査するという違いを確実に押さえましょう。また、一団の土地の判定や、届出不要となる場合の例外規定も出題頻度が高いため、しっかり整理しておく必要があります。
都市計画法の区域区分と関連付けて面積基準を覚えると効率的です。また、地価公示法の公示価格との関係についても合わせて学習しておきましょう。