地価公示と地価調査|公的価格の位置づけ
地価公示と地価調査の制度的意義
地価公示と地価調査は、不動産の公的価格の中核をなす制度であり、不動産鑑定士試験において必須の知識です。地価公示は地価公示法に基づき国土交通省が実施し、地価調査は国土利用計画法に基づき都道府県が実施します。いずれも正常価格を示すものであり、鑑定評価においては規準として位置づけられ、鑑定評価額との均衡が求められます。
不動産鑑定士は、土地についての鑑定評価を求められたときは、[中略]公示価格を規準としなければならない。
― 地価公示法 第8条
地価公示制度の概要
制度の目的
地価公示制度は、一般の土地の取引価格に対して指標を与え、公共事業用地の取得価格の算定の規準とすること等を目的として、昭和44年(1969年)に創設されました。
この法律は、都市及びその周辺の地域等において、標準地を選定し、その正常な価格を公示することにより、一般の土地の取引価格に対して指標を与え、及び公共の利益となる事業の用に供する土地に対する適正な補償金の額の算定等に資し、もつて適正な地価の形成に寄与することを目的とする。
― 地価公示法 第1条
実施主体と手続き
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 実施主体 | 国土交通省(土地鑑定委員会) |
| 基準日 | 毎年1月1日 |
| 公表時期 | 毎年3月下旬 |
| 対象地域 | 都市計画区域その他の土地取引が相当程度見込まれる区域 |
| 標準地数 | 約26,000地点(全国) |
| 評価主体 | 2人以上の不動産鑑定士が鑑定評価 |
| 価格の性格 | 正常な価格(正常価格) |
標準地の選定
標準地は、土地の利用状況、環境等が通常と認められる一団の土地について選定されます。
- 対象区域内において、用途が同質と認められる地域ごとに選定
- その地域の標準的な土地を代表するものとして選ばれる
- 建物がある場合でも、更地としての価格(建物がないものとした価格)を公示
正常な価格の意義
地価公示における「正常な価格」は、自由な取引が行われるとした場合における、その取引において通常成立すると認められる価格です。
土地鑑定委員会は、[中略]標準地の単位面積当たりの正常な価格を判定し、これを公示するものとする。
― 地価公示法 第2条第1項
この「正常な価格」は、鑑定評価基準における正常価格の概念と対応するものです。
地価調査制度の概要
制度の目的
地価調査は、国土利用計画法施行令に基づき、都道府県知事が基準地の正常な価格を調査・公表する制度です。
- 国土利用計画法に基づく土地取引の規制において、取引価格の審査の基準となる
- 地価公示と相互に補完する関係にある
- 都市計画区域外の土地もカバーする
実施の概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 実施主体 | 都道府県知事 |
| 基準日 | 毎年7月1日 |
| 公表時期 | 毎年9月下旬 |
| 対象地域 | 都市計画区域内外を問わず、基準地を選定 |
| 基準地数 | 約21,000地点(全国) |
| 評価主体 | 1人以上の不動産鑑定士が鑑定評価 |
| 価格の性格 | 正常な価格 |
地価公示との相違点
| 比較項目 | 地価公示 | 地価調査 |
|---|---|---|
| 根拠法 | 地価公示法 | 国土利用計画法施行令 |
| 実施主体 | 国土交通省(土地鑑定委員会) | 都道府県知事 |
| 基準日 | 1月1日 | 7月1日 |
| 鑑定士数 | 2人以上 | 1人以上 |
| 対象区域 | 都市計画区域等 | 都市計画区域内外 |
| 主な目的 | 取引価格の指標、補償金算定の規準 | 土地取引規制の基準 |
公的価格の体系
4つの公的価格
土地の公的価格には、地価公示・地価調査のほか、相続税路線価と固定資産税評価額があります。
| 公的価格 | 基準日 | 評価水準(目安) | 所管 |
|---|---|---|---|
| 地価公示 | 1月1日 | 100%(正常価格) | 国土交通省 |
| 地価調査 | 7月1日 | 100%(正常価格) | 都道府県 |
| 相続税路線価 | 1月1日 | 公示価格の約80% | 国税庁 |
| 固定資産税評価額 | 1月1日(3年ごと改定) | 公示価格の約70% | 市町村 |
地価公示と地価調査は時価の100%を示すのに対し、相続税路線価は約80%、固定資産税評価額は約70%の水準に設定されています。これは、評価の安全性を考慮し、時価の変動による課税上の不都合を避けるためです。
公的価格間の均衡
これらの公的価格は、地価公示を中心として相互に均衡を保つことが求められています。
- 相続税路線価は地価公示価格の80%水準を目途に設定
- 固定資産税評価額は地価公示価格の70%水準を目途に設定
- 地価調査は地価公示と半年のずれがあり、年間の地価動向を補完
鑑定評価における「規準」の意義
規準とは
鑑定評価基準において、規準とは、不動産鑑定士が土地の鑑定評価を行う際に、地価公示の公示価格を基準として鑑定評価額を決定しなければならないことをいいます。
不動産鑑定士は、公示区域内の土地について鑑定評価を行う場合において、当該土地の正常価格を求めるときは、[中略]当該土地とこれに類似する利用価値を有すると認められる1又は2以上の標準地との位置、地積、環境等の土地の客観的価値に作用する諸要因についての比較を行い、その結果に基づき、当該標準地の公示価格と当該土地の鑑定評価額との均衡を保たせなければならない。
― 不動産鑑定評価基準 総論第8章第5節
規準の手順
規準の手順は、以下のとおりです。
- 対象地に類似する標準地の選定:利用価値が類似する標準地を1つ以上選定
- 諸要因の比較:対象地と標準地の位置、地積、環境等の客観的要因を比較
- 公示価格との均衡の確認:鑑定評価額が公示価格と均衡するかを検証
- 必要な調整:均衡が保たれない場合、鑑定評価の過程を再検討
規準の意義
規準の制度は、以下のような意義を持ちます。
- 鑑定評価の客観性の確保:公示価格という共通の基準点を設けることで、鑑定評価額のばらつきを抑制
- 公的価格との整合性:相続税、固定資産税等の課税価格との整合性を確保
- 市場参加者への信頼性:公示価格との均衡が保たれることで、鑑定評価額の信頼性が向上
- 適正な地価の形成:鑑定評価が適正な地価水準を維持する役割を果たす
規準が適用される場面
規準は、以下の要件を全て満たす場合に適用されます。
- 対象が土地であること(建物単体の評価には適用されない)
- 公示区域内の土地であること
- 正常価格を求める場合であること(限定価格や特定価格を求める場合は適用されない)
地価公示の鑑定評価手法
鑑定評価の方法
地価公示における鑑定評価は、以下の手法を用いて行われます。
標準地の鑑定評価の特徴
- 更地としての評価:建物がある場合でも、建物がないものとしての価格を求める
- 2人以上の鑑定士が独立して鑑定評価を行い、その結果を調整
- 土地鑑定委員会が最終的に正常な価格を判定・公示
- 全国の鑑定評価の整合性が確保されるよう、分科会での検討が行われる
地価公示・地価調査の活用
不動産取引の指標
地価公示・地価調査は、一般の土地取引における価格の指標として広く活用されています。
- 売買価格の妥当性の判断材料
- 不動産の資産価値の把握
- 地域の地価動向の分析
鑑定評価における活用
鑑定評価の実務においては、規準としての活用のほか、以下のように活用されます。
- 時点修正の資料:地価公示・地価調査の変動率を用いた時点修正
- 地域分析の資料:標準地の価格動向から地域の特性を把握
- 還元利回りの参考:公示地の還元利回りの水準を参考にした利回りの査定
課税評価の基準
- 相続税の路線価:地価公示価格の約80%を目途に設定
- 固定資産税評価額:地価公示価格の約70%を目途に設定
- これらの課税価格は、地価公示を共通の基盤として公的価格の体系的な均衡が図られている
試験での出題ポイント
短答式試験
- 地価公示の基準日(1月1日)と地価調査の基準日(7月1日)
- 地価公示は2人以上の鑑定士、地価調査は1人以上の鑑定士が評価
- 地価公示法第8条の規準の規定の正確な理解
- 公的価格の評価水準(公示100%、路線価80%、固定資産税70%)の正誤問題
- 規準が適用される要件(公示区域内・土地・正常価格)
論文式試験
- 地価公示の目的と鑑定評価における規準の意義を論述する問題
- 地価公示と地価調査の相違点と相互補完関係を論じる問題
- 公的価格の体系における地価公示の位置づけを論述する問題
- 規準の手順と意義を体系的に説明する問題
暗記のポイント
- 地価公示:地価公示法、国土交通省、1月1日、2人以上、都市計画区域等
- 地価調査:国土利用計画法施行令、都道府県知事、7月1日、1人以上、区域制限なし
- 公的価格の水準:公示100%、路線価80%、固定資産税70%
- 規準の要件:公示区域内の土地について正常価格を求める場合
- 規準の意義:鑑定評価額と公示価格との均衡を保つ
まとめ
地価公示と地価調査は、正常な価格を公示・公表する制度であり、不動産の公的価格の中核を担っています。鑑定評価においては、公示区域内の土地の正常価格を求める場合に公示価格を規準とすることが義務づけられており、鑑定評価額の客観性と信頼性を確保する重要な機能を果たしています。公的価格の体系は地価公示を中心に構成されており、相続税路線価(80%)や固定資産税評価額(70%)も地価公示と均衡を保つよう設定されています。関連する論点として、正常価格の概念や地価公示法の詳細もあわせて学習しましょう。