建築基準法の概要|建ぺい率・容積率・接道義務
建築基準法の概要
建築基準法は、建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低の基準を定めることにより、国民の生命・健康・財産の保護を図ることを目的としています。鑑定評価においては、対象不動産の建築基準法上の制限が最有効使用の判定に直結するため、正確な理解が不可欠です。
特に建ぺい率・容積率・接道義務は、試験での出題頻度が極めて高く、計算問題も含めて確実に得点できるよう準備が必要です。
単体規定と集団規定の違い
建築基準法の規定は、大きく単体規定と集団規定に分かれます。
| 区分 | 内容 | 適用範囲 |
|---|---|---|
| 単体規定 | 個々の建築物の安全性・衛生に関する規定(構造耐力、防火、避難、採光等) | 全国どこでも適用 |
| 集団規定 | 都市計画との関連で、建築物と周辺環境の調和を図る規定(用途制限、建ぺい率、容積率等) | 都市計画区域・準都市計画区域内のみ適用 |
試験で出題されるのは主に集団規定です。以下、集団規定の主要項目を詳しく解説します。
建ぺい率
定義
建ぺい率とは、建築面積の敷地面積に対する割合です。
建ぺい率 = 建築面積 ÷ 敷地面積 × 100(%)
建ぺい率の上限は、都市計画法で定められた用途地域ごとに指定されます。
用途地域ごとの建ぺい率の指定値
| 用途地域 | 指定できる建ぺい率 |
|---|---|
| 第一種・第二種低層住居専用地域、田園住居地域、工業専用地域 | 30%, 40%, 50%, 60% |
| 第一種・第二種中高層住居専用地域、第一種・第二種住居地域、準住居地域、準工業地域 | 30%, 40%, 50%, 60%, 80% |
| 近隣商業地域 | 60%, 80% |
| 商業地域 | 80% |
| 工業地域 | 30%, 40%, 50%, 60% |
建ぺい率の緩和規定
以下の場合、建ぺい率が緩和されます。
- 角地加算:特定行政庁が指定する角地にある建築物 → +10%
- 防火地域内の耐火建築物 → +10%
- 上記両方に該当 → +20%
建ぺい率の制限が適用されない場合
以下の場合、建ぺい率の制限はありません(建ぺい率100%)。
- 商業地域で防火地域内の耐火建築物(指定80%+20%=100%)
- 巡査派出所、公衆便所等
容積率
定義
容積率とは、建築物の延べ面積の敷地面積に対する割合です。
容積率 = 延べ面積 ÷ 敷地面積 × 100(%)
指定容積率と前面道路による制限
容積率は、指定容積率と前面道路幅員による容積率のうち、小さい方が適用されます。
前面道路の幅員が12m未満の場合、以下の計算で容積率が制限されます。
前面道路幅員による容積率 = 前面道路の幅員(m) × 法定乗数
| 用途地域 | 法定乗数 |
|---|---|
| 住居系用途地域 | 4/10 |
| その他の用途地域 | 6/10 |
計算例1:住居系用途地域の場合
第一種住居地域、指定容積率300%、前面道路幅員6mの場合:
- 前面道路による容積率 = 6m × 4/10 = 240%
- 指定容積率 = 300%
- 適用される容積率 = 240%(小さい方)
計算例2:商業地域の場合
商業地域、指定容積率600%、前面道路幅員8mの場合:
- 前面道路による容積率 = 8m × 6/10 = 480%
- 指定容積率 = 600%
- 適用される容積率 = 480%(小さい方)
計算例3:前面道路が12m以上の場合
第一種住居地域、指定容積率300%、前面道路幅員15mの場合:
- 前面道路が12m以上のため、前面道路による容積率制限は適用されない
- 適用される容積率 = 300%(指定容積率がそのまま適用)
容積率の緩和
- 地下室:住宅部分の延べ面積の1/3まで不算入
- 共同住宅の共用廊下・階段:延べ面積に不算入
- 駐車場:延べ面積の1/5まで不算入
- 特定道路からの距離による緩和:前面道路幅員6m以上12m未満で、幅員15m以上の特定道路から70m以内
接道義務
原則
建築物の敷地は、幅員4m以上の道路に2m以上接しなければならない(接道義務)。
セットバック(2項道路)
幅員4m未満の道路であっても、建築基準法施行時に建築物が立ち並んでいた道で、特定行政庁が指定したもの(2項道路)は、道路とみなされます。
- 道路の中心線から2m後退した線が道路の境界線とみなされる
- 後退した部分(セットバック部分)には建築物を建てられない
- セットバック部分は敷地面積に算入できない
接道義務の特例
- 特定行政庁が認めた場合は、2m以上の接道がなくても建築可能(ただし書き道路)
- 条例で接道義務を強化できる(特殊建築物等で3m以上等)
高さ制限
絶対高さ制限
| 用途地域 | 高さの上限 |
|---|---|
| 第一種・第二種低層住居専用地域、田園住居地域 | 10m又は12m |
斜線制限
| 種類 | 適用区域 | 目的 |
|---|---|---|
| 道路斜線制限 | 全用途地域 | 道路の採光・通風を確保 |
| 隣地斜線制限 | 低層住居専用地域・田園住居地域以外 | 隣地の採光・通風を確保 |
| 北側斜線制限 | 低層住居専用地域・田園住居地域、第一種・第二種中高層住居専用地域 | 北側隣地の日照を確保 |
日影規制
- 中高層建築物が周辺に落とす日影を一定時間以内に制限
- 商業地域・工業地域・工業専用地域には適用されない
- 対象建築物の高さは用途地域によって異なる
用途制限
都市計画法で定められた用途地域に応じて、建築できる建築物の種類が制限されます。
- 最も制限が厳しいのは第一種低層住居専用地域
- 最も制限が緩いのは商業地域(風俗営業施設も建築可)
- 住宅が一切建てられないのは工業専用地域のみ
防火地域・準防火地域
都市計画法に基づき指定される防火地域・準防火地域は、建築物の構造に関する規制であり、建ぺい率の緩和とも関連する重要な制度です。
| 区分 | 建築物の構造制限 |
|---|---|
| 防火地域 | 3階以上又は延べ面積100m2超 → 耐火建築物 / それ以外 → 耐火又は準耐火建築物 |
| 準防火地域 | 4階以上又は延べ面積1,500m2超 → 耐火建築物 / 延べ面積500m2超1,500m2以下 → 耐火又は準耐火建築物 |
防火地域と建ぺい率緩和の関係
防火地域内で耐火建築物を建築する場合、建ぺい率が+10%緩和されます。さらに角地加算(+10%)と合わせると+20%の緩和が受けられます。特に商業地域(指定建ぺい率80%)で防火地域内の耐火建築物の場合、80% + 20% = 100%(建ぺい率制限なし)となります。
建築確認
一定の建築物を建築する場合、工事着手前に建築確認を受ける必要があります。
建築確認が必要な場合
| 対象 | 内容 |
|---|---|
| 特殊建築物 | 用途に供する部分の床面積が200m2を超えるもの |
| 大規模建築物 | 木造:3階以上又は延べ面積500m2超等 / 非木造:2階以上又は延べ面積200m2超 |
| 都市計画区域内の建築物 | 上記以外でも新築は全て必要 |
既存不適格建築物
定義
建築時には適法であったが、その後の法改正や都市計画の変更により、現行の規定に適合しなくなった建築物を既存不適格建築物といいます。
取扱い
- 直ちに適法にする義務はない(そのまま使用可能)
- 増改築を行う場合は、原則として現行基準に適合させる必要がある
- 鑑定評価では、既存不適格であることが価格に影響する場合がある
試験での出題ポイント
建築基準法は短答式で毎年出題されるテーマです。
計算問題対策
- 建ぺい率の計算:角地加算・防火地域緩和を加味できること
- 容積率の計算:前面道路幅員による制限と指定容積率の比較
- セットバック:後退距離の計算
暗記必須事項
- 接道義務:幅員4m以上の道路に2m以上接する
- 前面道路幅員による容積率の法定乗数:住居系4/10、その他6/10
- 絶対高さ制限:低層住居専用地域等で10m又は12m
- 建ぺい率が制限されないケース
よく出る引っかけ
- 「集団規定は全国に適用される」→ 誤り(都市計画区域・準都市計画区域内のみ)
- 「容積率は指定容積率がそのまま適用される」→ 誤り(前面道路幅員による制限あり)
- 「既存不適格建築物は違法建築物である」→ 誤り(適法に存続)
まとめ
建築基準法は、不動産鑑定士試験の行政法規で最重要法規の一つです。建ぺい率は建築面積と敷地面積の割合で角地加算等の緩和があり、容積率は延べ面積と敷地面積の割合で前面道路幅員による制限があります。接道義務は4m以上の道路に2m以上接することが原則です。
これらの規定は、鑑定評価における最有効使用の判定に直結するため、計算問題を含めて正確に理解しておきましょう。都市計画法の用途地域と合わせて学習することで、体系的な理解が深まります。