基本利率と期待利回りの違い
基本利率と期待利回りの違い
基本利率とは、金融市場で成立する無リスク資産の利回り(リスクフリーレート)を基礎とした利率です。一方、期待利回りとは、投資家が不動産投資に対して期待する利回りであり、基本利率にリスクプレミアムを上乗せしたものです。不動産鑑定士試験では、収益還元法における還元利回り・割引率の構成要素として両者の関係が問われます。
わかりやすく言うと
- 基本利率: 「国債のような安全な投資で得られる利回り」
- 期待利回り: 「不動産というリスクのある投資で、投資家が求める利回り」
不動産は国債と違って空室リスク・値下がりリスク・流動性リスクがあるため、投資家は国債より高い利回りを求めます。この差額がリスクプレミアムです。
期待利回り = 基本利率(リスクフリーレート)+ リスクプレミアム
基本利率(リスクフリーレート)の詳細
基本利率とは
基本利率は、信用リスクがほぼゼロの資産(無リスク資産)から得られる利回りです。一般的には長期国債の利回りが代用されます。
| 代表的な指標 | 内容 |
|---|---|
| 10年物国債利回り | 最も一般的な基本利率の指標 |
| 長期プライムレート | 銀行の最優遇貸出金利 |
基本利率の意義
基本利率は、全ての投資の出発点となる利率です。投資家は少なくとも基本利率以上の利回りが得られなければ、わざわざリスクを取って不動産に投資する意味がありません。基本利率は、いわば投資判断の「底値」としての役割を果たしています。
期待利回りの詳細
期待利回りとは
期待利回りは、不動産投資家が投資対象に対して求める利回りです。基本利率に、不動産投資特有のリスクプレミアムを加算して構成されます。
リスクプレミアムの構成要素
| リスク要素 | 内容 |
|---|---|
| 空室リスク | テナントが退去し、空室期間が生じるリスク |
| 賃料変動リスク | 賃料が下落するリスク |
| 価格変動リスク | 不動産価格自体が下落するリスク |
| 流動性リスク | 不動産は株式等に比べて売却に時間がかかるリスク |
| 管理の煩雑さ | 賃貸管理・建物管理に手間がかかること |
| 個別性リスク | 不動産ごとの固有のリスク |
期待利回りの水準イメージ
基本利率(国債利回り): 1.0%
+ リスクプレミアム: +3.0〜5.0%
━━━━━━━━━━━━━━━━━
期待利回り: 4.0〜6.0%
ただし、これはあくまでイメージであり、実際の水準は不動産の種類・立地・経済情勢によって大きく異なります。
還元利回りとの関係
期待利回りは、収益還元法における還元利回りの重要な構成要素です。
還元利回りは、直接還元法の収益価格及びDCF法の復帰価格の算定において、一期間の純収益から対象不動産の価格を直接求める際に使用される率であり、将来の収益に影響を与える要因の変動予測と予測に伴う不確実性を含むものである。
― 不動産鑑定評価基準 総論第7章第1節
還元利回りは期待利回りを基礎としつつ、純収益の変動予測を加味して調整されます。
| 概念 | 位置づけ |
|---|---|
| 基本利率 | 出発点(リスクフリーレート) |
| 期待利回り | 基本利率 + リスクプレミアム |
| 還元利回り | 期待利回りを基礎に、純収益の変動予測を加味 |
身近な具体例
例1: 国債と不動産投資の比較
ある投資家が1億円を運用するとします。
- 国債(10年物): 年利1.0%で年100万円の利息。元本保証、流動性あり
- 不動産(都心マンション): 年利4.5%で年450万円の賃料収入。ただし空室リスク・修繕費・売却時の不確実性あり
投資家は国債なら1.0%で満足しますが、不動産ではリスクに見合った上乗せ分(3.5%のリスクプレミアム)がないと投資しません。この4.5%が期待利回りです。
例2: 立地によるリスクプレミアムの違い
同じ賃貸マンションでも、都心駅前と地方郊外ではリスクプレミアムが異なります。
| 立地 | 基本利率 | リスクプレミアム | 期待利回り |
|---|---|---|---|
| 都心駅前 | 1.0% | +2.5% | 3.5% |
| 地方郊外 | 1.0% | +5.5% | 6.5% |
都心は空室リスクが低く流動性が高いためリスクプレミアムが小さく、地方郊外はその逆です。
関連用語との比較
| 用語 | 意味 | 位置づけ |
|---|---|---|
| 基本利率 | 無リスク資産の利回り | 全ての投資の出発点 |
| 期待利回り | 投資家が期待する利回り | 基本利率 + リスクプレミアム |
| 還元利回り | 純収益を収益価格に変換する率 | 期待利回りを基礎に変動予測を加味 |
| 割引率 | 将来の収益を現在価値に割り引く率 | DCF法で使用 |
| 最終還元利回り | DCF法で復帰価格を求める際の利回り | 分析期間終了時の還元利回り |
試験での出題ポイント
短答式試験
- 基本利率の意味: 「基本利率とは不動産投資から期待される利回りをいう」→ 誤り(無リスク資産の利回り)
- リスクプレミアムの意味: 「リスクプレミアムとは基本利率そのものである」→ 誤り(基本利率に上乗せされるリスク対価)
論文式試験
- 「還元利回りの構成要素について、基本利率・リスクプレミアム・期待利回りの関係を論述せよ」
- リスクプレミアムの構成要素(空室リスク・流動性リスク等)を具体的に挙げられるかがポイント
暗記のポイント
- 算式: 期待利回り = 基本利率 + リスクプレミアム
- 基本利率の指標: 10年物国債利回り
- リスクプレミアムの要素: 空室・賃料変動・価格変動・流動性・管理の煩雑さ
まとめ
基本利率は無リスク資産の利回り(リスクフリーレート)であり、期待利回りは基本利率にリスクプレミアムを加えたものです。収益還元法における還元利回りは、この期待利回りを基礎として構成されます。リスクプレミアムの構成要素と、立地や物件特性による水準の違いを理解することが、還元利回りと割引率の正確な理解につながります。