PMフィーとAMフィーの概要

PMフィー(プロパティマネジメントフィー)AMフィー(アセットマネジメントフィー)は、不動産の証券化において発生する主要な管理報酬です。不動産鑑定士試験では、証券化対象不動産の鑑定評価におけるDCF法の費用項目として、両フィーの取扱いが問われます。

PMフィーは運営費用として純収益の計算に反映させる一方、AMフィーは不動産固有のキャッシュフローには含めないという原則的な違いを正確に理解しておくことが重要です。

証券化対象不動産の鑑定評価に当たっては、DCF法の適用が原則として必要であり、[中略]各収支項目について、それぞれの特性に応じた査定を行うものとする。

― 不動産鑑定評価基準 各論第3章


PMフィーとは

プロパティマネジメントの意義

プロパティマネジメント(PM)とは、不動産の物理的な管理・運営を担う業務をいいます。PM会社は、不動産オーナー(又は投資法人等)から委託を受けて、以下の業務を遂行します。

  • テナント管理: 賃料の請求・回収、テナント対応、クレーム処理
  • 建物管理: 日常清掃、設備点検、修繕の手配
  • リーシング: 空室発生時のテナント募集活動
  • レポーティング: オーナーへの月次・年次の収支報告

PMフィーの算定方法

PMフィーは、PM会社に支払う報酬であり、一般に以下の方法で算定されます。

算定方式 内容 相場水準
賃料収入連動型 賃料収入の一定割合 収入の3〜5%程度
固定報酬型 月額・年額の定額 物件規模による
併用型 固定報酬+成功報酬 基本料+リーシング成果等

DCF法における計上方法

PMフィーは、運営費用の一項目として純収益(NOI)の計算時に控除します。

NOI = 有効総収益 − 運営費用
運営費用 = 維持管理費 + 修繕費 + PMフィー + 公租公課 + …

基準においても、運営費用の構成項目としてプロパティマネジメントフィーが明記されています。


AMフィーとは

アセットマネジメントの意義

アセットマネジメント(AM)とは、投資家の立場から不動産投資のポートフォリオを管理し、投資収益の最大化を図る業務をいいます。AM会社は、以下のような戦略的な意思決定を担います。

  • 投資戦略の策定: 取得・売却の判断、ポートフォリオ構成の最適化
  • PM会社の監督: PM会社の業務品質の管理・評価
  • 財務管理: 借入れの管理、配当政策の決定
  • バリューアップ戦略: リノベーション、テナントミックスの最適化

AMフィーの算定方法

AMフィーは、AM会社に支払う報酬であり、一般に以下の方法で算定されます。

算定方式 内容 相場水準
AUM連動型 運用資産額(AUM)の一定割合 年額0.3〜0.5%程度
NOI連動型 純収益の一定割合 NOIの3〜5%程度
取得・売却報酬 取引額の一定割合(成功報酬) 取引額の0.5〜1%程度

DCF法における計上方法

AMフィーは、原則として運営費用に含めません。その理由は、AMフィーが不動産そのものの運営に要する費用ではなく、投資運用に関する費用であるためです。

ただし、鑑定評価においては、投資採算価値を求める場合など、AMフィーを費用として計上すべき局面もあります。この点は、鑑定評価の目的と求める価格の種類に応じて判断します。


PMフィーとAMフィーの違い

比較表

比較項目 PMフィー AMフィー
業務内容 物件の物理的管理・運営 投資ポートフォリオの戦略的管理
対象 個別の不動産 投資ファンド全体
視点 不動産の日常管理 投資家の利益最大化
DCF法での取扱い 運営費用に計上する 原則として計上しない
算定基準 賃料収入ベースが多い 運用資産額ベースが多い
費用の性質 不動産固有のコスト 投資運用のコスト

区分の理由

鑑定評価で求める価格は、原則として不動産そのものの経済価値を表すものです。PMフィーは不動産を適切に運営するために不可欠な費用であるため運営費用に含めますが、AMフィーは投資家の運用活動に伴う費用であり、不動産の価値とは切り離して考えるのが原則です。

この考え方は、正常価格の前提である「不動産の客観的な交換価値」の概念と整合しています。


証券化対象不動産の費用構造

費用項目の全体像

証券化対象不動産のDCF法で計上する費用項目の全体像は以下のとおりです。

区分 費用項目 備考
運営費用 維持管理費 建物管理、清掃、警備等
水道光熱費 共用部分の電気・水道等
修繕費 日常的な修繕
PMフィー プロパティマネジメント報酬
テナント募集費用 仲介手数料、広告費
公租公課 固定資産税、都市計画税
損害保険料 火災保険、地震保険等
その他 管理組合費等
資本的支出 大規模修繕 ER基づく長期修繕計画
設備更新 エレベーター、空調等
計上しないもの AMフィー 投資運用の費用(原則)
減価償却費 非キャッシュ項目
ローン返済額 資金調達に関する項目

テナント募集費用の考え方

テナント募集費用は、空室発生時にテナントを誘致するための費用です。仲介手数料(一般に賃料の1〜2ヶ月分)や広告費が含まれます。この費用は、空室率の水準と連動するため、空室率の予測と整合的に査定する必要があります。

公租公課の査定

公租公課(固定資産税・都市計画税)は、課税標準額に基づいて算定される比較的安定した費用です。ただし、新築物件の場合は固定資産税の軽減措置の期間終了に伴う税額の増加を考慮する必要があります。


実務上の留意点

PMフィーの妥当性検証

PMフィーの水準は、市場の相場と照らして妥当性を検証します。以下の点に留意が必要です。

  • PM会社との契約条件: 委託業務の範囲とフィー水準の整合性
  • 市場相場との比較: 類似物件のPMフィー水準
  • 物件特性による差異: オフィスと住宅では管理業務の内容が異なるため、フィー水準も異なる
  • グループ内取引: AM会社とPM会社が同一グループの場合、フィーの適正性を特に注意して検証する

テナント関連費用の整合性

テナント募集費用やフリーレント等のテナント関連費用は、空室率の予測、賃料予測と整合的に査定する必要があります。空室率が高い場合にはテナント募集費用も増加し、テナント確保のためにフリーレント等のインセンティブを提供する可能性も高まります。

費用査定と収益価格の感度

費用の査定は収益価格に直結するため、各費用項目の変動が収益価格にどの程度影響するかを把握しておくことが重要です。特にPMフィーは賃料収入に連動するため、賃料予測が変わるとPMフィーの水準も変動し、収益価格への影響が二重に生じます。


BMフィーとPMフィーの関係

BMフィーとは

実務では、BMフィー(ビルマネジメントフィー)という概念も登場します。BMフィーは、建物の設備管理や清掃・警備等の現場業務に対する報酬です。

フィー 業務範囲 関係
BMフィー 設備管理、清掃、警備の現場業務 PMの下位概念
PMフィー テナント管理、リーシング、収支管理 BMを含む場合と含まない場合がある
AMフィー 投資戦略、ポートフォリオ管理 PMの上位概念

鑑定評価における整理

鑑定評価では、BMフィーとPMフィーをまとめて運営費用に計上するのが一般的です。ただし、レントロールや管理委託契約でBMフィーとPMフィーが別建てになっている場合は、それぞれの金額を確認して合算します。


試験での出題ポイント

短答式試験

  • PMフィーの計上: 運営費用に含める項目として正誤判定で問われる
  • AMフィーの取扱い: 「AMフィーは運営費用に含めない」が原則(例外あり)
  • 運営費用の構成項目: 基準に列挙されている項目を正確に覚える

論文式試験

  • 証券化対象不動産のDCF法の適用手順を論述する中で、運営費用の項目とその査定方法を記述
  • PMとAMの業務範囲の違いと、それぞれの報酬の鑑定評価上の取扱いの違いを論述
  • 費用項目の査定にあたっての留意点(市場相場との比較、整合性の確認等)

暗記のポイント

  1. PMフィーは運営費用に計上するAMフィーは原則として計上しない
  2. 運営費用の項目: 維持管理費、水道光熱費、修繕費、PMフィー、テナント募集費用、公租公課、損害保険料
  3. 運営費用に含まないもの: 減価償却費、ローン返済額、AMフィー
  4. PMは「物件管理」、AMは「投資運用」、BMは「現場管理」
  5. グループ内取引の場合、フィーの適正性を特に検証する

まとめ

PMフィーとAMフィーは、証券化対象不動産の鑑定評価で必ず論点となる費用項目です。PMフィーは不動産の物理的な管理・運営に要する費用として運営費用に計上する一方、AMフィーは投資運用に関する費用であるため原則として計上しません。この区分は、鑑定評価が不動産そのものの経済価値を求めるものであるという基本原則に基づいています。試験ではDCF法の費用項目の列挙と、各フィーの取扱いが頻出テーマとなっているため、正確に整理しておきましょう。