底地割合と底地価格の関係

不動産鑑定士試験において、底地の評価は借地権と表裏一体の重要テーマです。底地とは借地権が付着している宅地の所有権であり、その割合は理論的には「1 − 借地権割合」と考えられがちですが、実際には底地割合と借地権割合の合計は100%を下回るのが一般的です。これは底地固有の市場性の低さに起因するものであり、この点を正確に理解することが試験対策の核心です。

底地とは、宅地について借地権の付着している場合における当該宅地の所有権をいう。

― 不動産鑑定評価基準 総論第2章


底地の基本概念

底地の定義

底地は、借地権が付着している宅地の所有権です。底地の所有者(地主)は、借地人から地代を受領する権利を有しますが、土地の使用収益は借地人に委ねられています。

底地の経済的特徴

特徴 内容
収益の固定性 地代収入が低水準で固定的。地代の増額は借地借家法により制限
市場性の低さ 買手が限定的(借地人以外の需要が極めて少ない)
流動性の低さ 売却に時間がかかり、価格も低水準に形成される
管理の制約 借地人の利用を制限できない。建替え承諾料等の特殊な収益がある
将来の不確実性 借地権の存続期間が長期に及ぶため、土地の利用変更が困難

底地割合の理論

理論上の底地割合

理論的には、更地の価格を借地権と底地で配分するため、以下の関係が成り立つはずです。

理論上の底地割合 = 1 − 借地権割合

例えば、借地権割合が60%であれば、理論上の底地割合は40%となります。

実際の底地割合

しかし、実際の底地の取引価格は、理論上の底地割合に対応する価格よりも相当程度低いのが一般的です。

前提 理論値 実際の目安
借地権割合60%のエリア 底地割合40% 底地割合15%〜25%程度
借地権割合70%のエリア 底地割合30% 底地割合10%〜20%程度
借地権割合80%のエリア 底地割合20% 底地割合5%〜15%程度

合計が100%にならない理由

更地の価格 > 借地権の正常価格 + 底地の正常価格

この差額は権利の分割に伴う価値の損失です。具体的には以下の要因によります。

要因 内容
底地の市場性の低さ 底地を購入する第三者が極めて限定的
権利の不完全性 更地であれば自由に利用できるが、底地は利用が制約される
取引コスト 借地権と底地を別々に取引するコストが加算される
地代の低水準 多くの借地では地代が低水準に据え置かれている

底地の評価手法

鑑定評価基準の規定

底地の鑑定評価額は、実際支払賃料に基づく純収益等の現在価値の総和を求めることにより得た収益価格及び取引事例比較法に基づく比準価格を関連づけて決定するものとする。この場合において、当該宅地の更地としての価格から借地権の価格を控除して得た価格を比較考量するものとする。

― 不動産鑑定評価基準 各論第1章

評価手法の体系

手法 内容 基準上の位置づけ
収益還元法 実際支払賃料に基づく純収益の現在価値の総和 基本手法(関連づけて決定)
取引事例比較法 底地の取引事例に基づく比準価格 基本手法(関連づけて決定)
控除法 更地価格 − 借地権価格 補助手法(比較考量)

収益還元法の適用

底地の収益は主に地代収入です。ただし、地代水準が低い場合は収益還元法による価格も低くなります。

底地の収益価格 = 地代に基づく純収益 ÷ 還元利回り

具体例

項目 金額
実際支払地代(年額) 120万円
公租公課(固定資産税・都市計画税) △50万円
管理費等 △10万円
純収益 60万円
還元利回り 3.0%
底地の収益価格 2,000万円

控除法の適用

更地の価格           :1億円
借地権の価格(正常価格):6,000万円
控除法による底地の価格 :4,000万円

しかし、この4,000万円は理論上の上限であり、実際の底地の取引価格(正常価格)はこれよりも大幅に低くなります。収益還元法による価格(2,000万円)との間に大きな乖離が生じるのが一般的です。


底地の市場性が低い理由

買手の限定性

底地を購入する動機を持つ主体は極めて限定的です。

買手候補 購入動機 特徴
借地人 完全所有権の回復(底地の併合) 最も有力な買手。限定価格が成立
底地買取業者 将来の借地権の回収や等価交換を期待 低価格で仕入れ、利益を狙う
投資家 安定的な地代収入を期待 利回りが低いため需要は限定的

底地の収益性の低さ

底地の収益は地代収入ですが、借地の地代は一般に低水準です。特に古くから設定されている借地では、地代が物価上昇に追いついておらず、更地価格に対する地代の利回りが1%を下回るケースもあります。

【低地代の例】
更地価格     :1億円
年間地代     :80万円
地代の利回り :0.8%(極めて低い)

限定価格と正常価格の違い

底地の正常価格

正常価格は、不特定多数の市場参加者を前提とした市場価値です。底地の正常価格は、底地の市場性の低さを反映して低い水準になります。

底地の限定価格(借地人による取得)

限定価格は、借地人が底地を取得する場合に成立する価格です。借地人にとっては底地を取得することで完全所有権を回復できるため、正常価格を大幅に上回る価格での取得にも経済的合理性があります。

底地の限定価格 = 底地の正常価格 + 増分価値の配分額

具体例

項目 金額
更地の価格 1億円
借地権の正常価格 6,000万円
底地の正常価格 2,000万円
増分価値 1億 −(6,000万 + 2,000万)= 2,000万円
底地の限定価格 2,000万 + 増分価値の配分額(例:1,200万)= 3,200万円

増分価値の配分は、当事者間の交渉力、借地の経緯等を考慮して判定されます。


底地割合に影響する要因

地域特性

地域 底地割合の傾向 背景
都心商業地域 低い(5〜15%) 借地権割合が非常に高い
都市部住宅地域 やや低い(15〜25%) 借地権割合が高いが商業地域ほどではない
郊外住宅地域 比較的高い(20〜35%) 借地権割合が相対的に低い

個別条件

要因 底地割合への影響
地代水準 地代が高いほど底地の収益性が向上し、底地割合は上昇
残存期間 定期借地権では残存期間の短縮に伴い底地割合が上昇
承諾料の有無 譲渡承諾料・建替え承諾料等の収入があれば底地の収益性が向上
借地人の信用力 信用力が高い借地人であれば安定的な地代が期待できる

具体的な数値例

ケーススタディ

前提 内容
更地の価格 8,000万円
借地権割合 70%
借地権の正常価格 5,600万円
年間地代 96万円
公租公課 40万円

収益還元法による底地価格

純収益 = 96万円 − 40万円 = 56万円
還元利回り = 3.5%
底地の収益価格 = 56万円 ÷ 3.5% = 1,600万円

控除法による底地価格

更地価格 − 借地権価格 = 8,000万円 − 5,600万円 = 2,400万円

底地の正常価格の決定

収益価格1,600万円と控除法による2,400万円を関連づけ、底地の正常価格を1,800万円と決定した場合、底地割合は以下の通りです。

底地割合 = 1,800万円 ÷ 8,000万円 = 22.5%

検証

借地権割合 + 底地割合 = 70% + 22.5% = 92.5%
乖離率 = 100% − 92.5% = 7.5%(権利分割のデメリット)

試験での出題ポイント

短答式試験

不動産鑑定士の短答式試験では、以下の論点が出題されます。

  • 底地の定義:「借地権の付着している宅地の所有権」
  • 底地割合 ≠ 1 − 借地権割合:合計が100%にならないことの理解
  • 底地の評価手法の体系:収益還元法と取引事例比較法が基本手法、控除法は補助手法
  • 限定価格の成立場面:借地人が底地を取得する場合の増分価値

論文式試験

論文式試験では、底地の評価について以下の体系的な論述が求められます。

  • 底地の定義と経済的特徴(市場性の低さの理由を含む)
  • 評価手法の体系(基本手法と補助手法の区別)
  • 更地価格・借地権価格・底地価格の三者の関係
  • 正常価格と限定価格の違いを底地の文脈で論述

暗記のポイント

  1. 底地の定義 — 借地権の付着している宅地の所有権
  2. 底地割合 ≠ 1 − 借地権割合 — 権利分割のデメリットにより合計は100%未満
  3. 底地の収益 — 地代収入が主。地代水準が低いため収益還元法による価格も低い
  4. 評価手法の体系 — 収益還元法・比準価格を関連づけ、控除法を比較考量
  5. 限定価格 — 借地人による底地取得の場合、増分価値の配分額を加算

まとめ

底地割合は「1 − 借地権割合」という単純な計算では求められず、底地固有の市場性の低さを反映して低い水準に形成されます。底地の評価は、収益還元法と取引事例比較法を基本手法とし、控除法を補助手法として活用します。借地人が底地を取得する場合には限定価格が成立し、正常価格を上回る水準での取引に経済的合理性があります。

底地の評価は借地権の鑑定評価と表裏一体の関係にあります。また、底地の鑑定評価手法の詳細や、底地と借地権の価格配分の理論的な考え方もあわせて学習することで、権利の価格に対する理解がより深まるでしょう。