マンション管理適正化法と建替え円滑化法
マンション管理適正化法と建替え円滑化法の概要
マンションの管理の適正化の推進に関する法律(マンション管理適正化法)とマンションの建替え等の円滑化に関する法律(マンション建替え円滑化法)は、いずれもマンション(区分所有建物)に関する重要な法律です。不動産鑑定士試験の行政法規においては、区分所有法と併せて出題されることがあり、管理業者の登録制度や建替え決議の要件は暗記必須の知識です。
マンション管理適正化法は管理の適正化を、建替え円滑化法は建替えの円滑化をそれぞれ目的としており、両法を組み合わせて理解することが重要です。
マンション管理適正化法の概要
法律の目的
マンション管理適正化法は、マンションにおける良好な居住環境の確保を図ることを目的として、2000年(平成12年)に制定されました。
主な内容は以下のとおりです。
- マンション管理士制度の創設
- マンション管理業者の登録制度
- 管理計画認定制度の創設(2020年改正)
- マンション管理適正化指針の策定
マンション管理士制度
マンション管理士は、マンション管理適正化法に基づく国家資格です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 業務 | マンションの管理に関する専門的知識をもって、管理組合の運営等について助言・指導等を行う |
| 登録 | 試験合格後、国土交通大臣の登録を受ける |
| 名称独占 | マンション管理士でない者はマンション管理士の名称を使用してはならない |
| 信用失墜行為の禁止 | マンション管理士の信用を傷つけるような行為の禁止 |
| 秘密保持義務 | 業務上知り得た秘密の漏洩禁止 |
なお、マンション管理士は名称独占資格であり、業務独占資格ではない点に注意が必要です。
マンション管理業者の登録制度
マンション管理業を営むためには、国土交通大臣の登録を受ける必要があります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 登録の有効期間 | 5年間(更新可能) |
| 管理業務主任者 | 事務所ごとに30管理組合につき1人以上の管理業務主任者を設置 |
| 重要事項説明 | 管理受託契約の締結前に管理業務主任者による重要事項説明が必要 |
| 財産の分別管理 | 管理組合の財産と管理業者固有の財産を分別管理 |
| 帳簿の備付け | 管理受託契約に関する帳簿の作成・保存義務 |
管理計画認定制度(2020年改正)
2020年の法改正により、管理計画認定制度が創設されました。
- マンションの管理組合が作成した管理計画を地方公共団体の長が認定する制度
- 認定基準には、長期修繕計画の適切な作成、修繕積立金の適正な額の設定等が含まれる
- 認定を受けたマンションは、住宅金融支援機構のフラット35で金利引下げの優遇を受けられる
この制度は、マンションの適正な管理を促進し、管理不全マンションの発生を防止することを目的としています。
マンション管理適正化指針
国土交通大臣は、マンションの管理の適正化に関する指針を定めなければなりません。この指針では、以下の事項について基本的な方向性が示されています。
- 管理組合の運営に関する事項
- 管理規約に関する事項
- 管理組合の経理に関する事項
- 長期修繕計画の策定に関する事項
マンション建替え円滑化法の概要
法律の目的
マンション建替え円滑化法は、マンションの建替えの円滑化を図ることを目的として、2002年(平成14年)に制定されました。
老朽化したマンションの建替えには多くの区分所有者の合意形成が必要であり、その手続を整備することで建替えを促進する法律です。
建替えの流れ
マンションの建替えは、以下のステップで進められます。
- 建替え決議:区分所有法第62条に基づく区分所有者及び議決権の各5分の4以上の賛成
- 建替え合意者の集会:建替えに参加するかしないかの催告
- マンション建替組合の設立:都道府県知事等の認可
- 権利変換計画の認可:権利変換手続による権利の移行
- 建替え工事の実施
- 新マンションへの権利の移行
マンション建替組合
建替えを実施するために、マンション建替組合を設立できます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 設立要件 | 建替え合意者の4分の3以上の同意 + 都道府県知事等の認可 |
| 法人格 | 法人(権利義務の主体となれる) |
| 組合員 | 建替え合意者全員が組合員となる |
| 役員 | 理事3人以上、監事2人以上 |
| 総会 | 組合の最高意思決定機関 |
権利変換手続
権利変換手続は、建替え円滑化法の中核的な制度です。
権利変換とは、旧マンションの区分所有権・敷地利用権等を新マンションの区分所有権・敷地利用権等に一括して移行させる手続です。
- 個別の売買契約や移転登記が不要
- 権利変換計画の認可により、一括して権利が移行する
- 権利変換を望まない区分所有者には補償金が支払われる
マンション敷地売却制度(2014年改正)
2014年の法改正により、マンション敷地売却制度が創設されました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 耐震性不足と認定されたマンション(2021年改正で外壁の剥落等により危害を生ずるおそれがあるマンションにも拡大) |
| 決議要件 | 区分所有者、議決権及び敷地利用権の持分の各5分の4以上の賛成 |
| 効果 | マンション及び敷地を一括して買受人に売却できる |
| 買受人 | デベロッパー等が買受計画を作成し、都道府県知事等の認定を受ける |
この制度は、建替えが困難なマンションについて、敷地を含めた一括売却という選択肢を提供するものです。
容積率の緩和特例
建替え円滑化法では、一定の要件を満たすマンションの建替えについて、容積率の緩和特例が設けられています。
- 耐震性不足のマンションの建替え
- 外壁の剥落等の危険性があるマンションの建替え
- 火災に対する安全性が不足するマンションの建替え
これらのマンションについて、特定行政庁の許可により建築基準法上の容積率制限を超えることが認められる場合があります。
不動産鑑定評価との関連
マンションの管理・建替えに関する法制度は、区分所有建物の鑑定評価と密接に関連します。
管理状態と価格形成要因
マンションの管理状態は、価格形成要因の個別的要因として重要です。
- 管理の良否:管理費・修繕積立金の水準、滞納率
- 長期修繕計画の策定状況
- 管理計画認定の有無
- 大規模修繕の実施履歴
建替えと鑑定評価
建替えの可能性があるマンションの評価においては、以下の点を考慮する必要があります。
- 建替え決議の成立可能性
- 容積率の緩和特例の適用可能性
- 権利変換後の価値と現在の価値の比較
- 建替え期間中の住居確保に要するコスト
試験での出題ポイント
短答式試験
- マンション管理業者の登録:国土交通大臣への登録、有効期間5年
- 管理業務主任者:30管理組合につき1人以上設置
- 管理計画認定制度:地方公共団体の長が認定
- 建替え決議の要件:区分所有者及び議決権の各5分の4以上
- マンション建替組合の設立:建替え合意者の4分の3以上の同意 + 認可
- マンション敷地売却制度:耐震性不足等のマンションが対象
論文式試験
論文式では、鑑定理論の中で区分所有建物の評価に関連して出題される可能性があります。管理状態が価格形成要因にどのように影響するかを論述できるようにしておきましょう。
暗記のポイント
- 管理業者登録の有効期間:5年間
- 管理業務主任者の設置基準:30管理組合につき1人以上
- 建替え決議の要件:区分所有者及び議決権の各5分の4以上
- 建替組合設立の要件:建替え合意者の4分の3以上の同意 + 都道府県知事等の認可
- マンション敷地売却決議:区分所有者、議決権及び敷地利用権の持分の各5分の4以上
- 管理計画認定制度:地方公共団体の長が認定、2020年改正で創設
- マンション管理士は名称独占資格(業務独占ではない)
まとめ
マンション管理適正化法と建替え円滑化法は、マンションの管理と建替えに関する2つの重要法令です。管理適正化法は管理業者の登録制度や管理計画認定制度を、建替え円滑化法は建替組合制度や権利変換手続を定めています。
不動産鑑定士試験では、登録の有効期間(5年)、管理業務主任者の設置基準(30組合に1人)、建替え決議の要件(5分の4以上)といった数値要件が特に問われやすいテーマです。