高圧線下地の鑑定評価|区分地上権との関係
高圧線下地の評価の基本
高圧線下地とは、送電線(高圧電線)が上空を通過している土地のことです。不動産鑑定士試験では、個別的要因の減価項目として高圧線下地の評価が問われることがあります。
不動産鑑定士の実務では、高圧線下地の評価は相続税評価の更正請求や補償金の算定で頻繁に行われます。電圧の種類によって建築制限の内容が異なるため、正確な規制内容の把握が不可欠です。
電圧別の規制内容
送電線の電圧と離隔距離
送電線は電圧により分類され、離隔距離(電線と建物の最小距離)が定められています。
| 電圧区分 | 電圧 | 離隔距離 | 建築制限 |
|---|---|---|---|
| 特別高圧(17万V以上) | 170kV〜 | 水平3m以上 | 建物の建築不可 |
| 特別高圧(17万V未満) | 35〜170kV | 水平3m以上 | 高さ制限あり |
| 高圧 | 7〜35kV | 1.2m以上 | 軽微な制限 |
17万V以上の場合
17万V以上の送電線の下では、電気設備技術基準により建物の建築が原則として禁止されます。これは最も厳しい制限であり、土地の利用価値が大幅に制限されます。
区分地上権との関係
区分地上権の設定
高圧線下地には、電力会社が区分地上権を設定しているのが一般的です。区分地上権とは、地下又は空間の一定範囲を使用する権利です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 権利者 | 電力会社 |
| 設定範囲 | 送電線の上空及びその周辺空間 |
| 制限内容 | 建築制限、樹木の高さ制限 |
| 補償 | 区分地上権設定時に補償金を支払済み |
補償金と減価の関係
区分地上権設定時に支払われた補償金は、その時点での減価分を反映したものです。しかし、鑑定評価で求める価格は現時点の市場価値であるため、過去の補償金額に拘束されるわけではありません。
減価率の査定方法
阻害率方式
高圧線下地の減価は、阻害率(利用制限の程度を示す割合)を用いて算定するのが一般的です。
減価額 = 更地価格 × 線下地面積割合 × 阻害率
阻害率の目安
| 電圧区分 | 阻害率の目安 | 理由 |
|---|---|---|
| 17万V以上 | 50〜70% | 建物建築不可 |
| 17万V未満 | 20〜40% | 高さ制限あり |
| 高圧 | 5〜15% | 軽微な制限 |
心理的嫌悪感による追加減価
建築制限に加えて、高圧線の存在に対する心理的嫌悪感(電磁波への懸念等)による追加減価が生じる場合があります。この減価は客観的な根拠が乏しいため、査定に際しては市場の取引事例から実証的に把握することが望ましいとされています。
計算例
【前提条件】
対象地の面積:300㎡
線下部分の面積:100㎡(対象地の1/3)
電圧:154kV(17万V未満)
更地価格(線下制限なし):90,000,000円
【減価の算定】
阻害率:30%
線下地面積割合:100㎡ ÷ 300㎡ = 33.3%
減価額 = 90,000,000円 × 33.3% × 30% = 8,991,000円
心理的減価(全体に対して3%程度)= 2,700,000円
合計減価 = 11,691,000円
高圧線下地の価格 = 90,000,000円 − 11,691,000円 ≒ 78,300,000円
(減価率:約13%)
試験での出題ポイント
短答式試験
- 電圧別の建築制限:17万V以上は建物建築不可
- 区分地上権の概念:空間の一定範囲を使用する権利
- 阻害率方式:更地価格×線下面積割合×阻害率
- 離隔距離:電線と建物の最小距離
論文式試験
- 個別的要因(土地)における高圧線の影響の論述
- 区分地上権の設定と評価との関連
- 阻害率方式による減価額算定の具体的な計算
暗記のポイント
- 17万V以上:建物建築不可、阻害率50〜70%
- 17万V未満:高さ制限あり、阻害率20〜40%
- 算式:減価額=更地価格×線下面積割合×阻害率
- 区分地上権:電力会社が空間に設定する権利
- 心理的嫌悪感:客観的根拠が乏しいため市場事例から把握
まとめ
高圧線下地の鑑定評価では、電圧別の建築制限の内容を正確に把握し、阻害率方式により減価額を算定します。17万V以上の送電線下では建物建築が不可能であるため減価率が大きく、17万V未満では高さ制限に基づく減価を査定します。区分地上権の設定状況や心理的嫌悪感による追加減価も考慮事項です。区分地上権の詳細は区分地上権の評価で、個別的要因の全体像は個別的要因(土地)で確認しましょう。
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