不動産鑑定士とコンサルティングマスターの違い

不動産鑑定士不動産コンサルティングマスターは、どちらも不動産の専門家ですが、その資格の性質と位置づけが根本的に異なります。不動産鑑定士は国家資格であり鑑定評価の独占業務を持つのに対し、コンサルティングマスターは公益財団法人が認定する民間資格で独占業務はありません。

両資格は競合ではなく補完関係にあり、鑑定士がコンサルティングマスターを取得することで業務の幅を大きく広げることができます。


基本情報の比較

資格の概要

比較項目 不動産鑑定士 不動産コンサルティングマスター
資格の種類 国家資格 民間資格(公益財団法人認定)
認定機関 国土交通省 公益財団法人不動産流通推進センター
根拠法 不動産の鑑定評価に関する法律 なし(任意資格)
登録者数 8,500人 18,000人
独占業務 不動産の鑑定評価 なし
受験資格 誰でも受験可能 宅建士・鑑定士・一級建築士のいずれかの登録者

重要なポイント

コンサルティングマスターの受験には、宅建士・不動産鑑定士・一級建築士のいずれかの資格が前提条件となります。つまり、鑑定士はコンサルティングマスターの受験資格を当然に満たしているということです。


試験制度の比較

項目 不動産鑑定士 コンサルティングマスター
試験回数 年1回(短答5月・論文8月) 年1回(11月)
試験形式 短答式+論文式 択一+記述
科目 鑑定理論、民法、経済学、会計学、行政法規 事業・実務・経済・金融・税制・建築・法律
合格率 約5% 約40〜50%
必要勉強時間 2,000〜5,000時間 100〜300時間
合格後の要件 実務修習(1〜2年) 登録(5年ごと更新)
難易度 最難関クラス 中程度(基礎資格があれば取得しやすい)

鑑定士と比べると、コンサルティングマスターの試験は合格率が高く、必要勉強時間も短いです。特に不動産鑑定士の資格保有者にとっては、鑑定士試験で学んだ知識の多くが活用できるため、比較的短期間で取得可能です。


業務内容の比較

不動産鑑定士の業務

業務 内容
鑑定評価(独占業務) 鑑定評価基準に基づく不動産の価格・賃料の評価
公的評価 地価公示、地価調査、固定資産税評価
民間評価 担保評価、証券化不動産評価
コンサルティング 不動産投資助言、CRE戦略
裁判関連 訴訟における鑑定意見

コンサルティングマスターの業務

業務 内容
不動産コンサルティング 不動産の有効活用、投資判断の助言
事業企画 土地活用プランの策定、開発計画の立案
相続対策 不動産を活用した相続税対策の提案
資産運用 不動産ポートフォリオの構築・管理
仲介・管理のアドバイス 売買・賃貸に関する専門的な助言

業務の違いを一言で

不動産鑑定士 コンサルティングマスター
いくらの価値があるか」を判定する どう活用すべきか」を提案する
客観的な評価(第三者的立場) 主体的な提案(依頼者の味方)
法律に基づく独占業務 知識・経験に基づく付加価値

年収・報酬の比較

勤務の場合

項目 不動産鑑定士 コンサルティングマスター
平均年収 600〜800万円 500〜700万円(基礎資格による)
資格手当 月2〜5万円 月0〜2万円
昇進への影響 大きい 中程度

独立の場合

項目 不動産鑑定士 コンサルティングマスター
独立の形態 鑑定事務所 コンサルティング会社
年収(軌道後) 800〜2,000万円 600〜1,500万円
主な収入源 鑑定評価報酬 コンサルティング報酬
報酬の根拠 法的に保護された独占業務 提案の質と実績

コンサルティングマスター単独では独占業務がないため、報酬の獲得に実績と信頼が不可欠です。一方、鑑定士の鑑定評価報酬は法律で保護された業務に基づくため、安定した収入源となります。


コンサルティングマスターの活用場面

具体的なコンサルティング業務の例

業務 内容 報酬の目安
土地の有効活用提案 遊休地にアパートを建てるか駐車場にするかの比較検討 30〜100万円
相続対策 不動産を活用した相続税の軽減策の提案 50〜200万円
等価交換事業 地主とデベロッパーの等価交換スキームの立案 100〜500万円
不動産投資助言 投資用不動産の選定、ポートフォリオ提案 50〜150万円
賃料交渉の支援 テナントとの賃料改定交渉の助言 20〜50万円

不動産特定共同事業との関係

コンサルティングマスターは、不動産特定共同事業法に基づく業務管理者としての資格要件を満たすことができます。これは不動産クラウドファンディング等の事業を行う際に必要な要件であり、近年需要が高まっている分野です。


ダブルライセンスのメリット

鑑定士+コンサルマスターの相乗効果

不動産鑑定士がコンサルティングマスターを取得すると、以下の相乗効果が期待できます。

メリット 内容
業務の幅の拡大 評価だけでなく「活用提案」まで一貫して対応
クライアントへの付加価値 「いくらか」だけでなく「どうすべきか」まで答えられる
受注機会の増加 コンサルティング案件から鑑定評価を受注する導線
差別化 他の鑑定士との差別化要因
報酬の増加 コンサルティング報酬が上乗せされる

具体的な業務フロー例

鑑定士+コンサルマスターの業務フロー

1. クライアントからの相談
   「相続した土地をどう活用すべきか?」

2. 鑑定評価(鑑定士の業務)
   土地の時価を鑑定評価で算定 → 4,000万円

3. コンサルティング(コンサルマスターの業務)
   活用プランの比較検討
   - プランA:アパート建設 → 利回り6%、投資回収15年
   - プランB:駐車場 → 利回り3%、低リスク
   - プランC:売却 → 4,000万円の現金化

4. 最適な提案
   クライアントの状況に応じた最適プランを提案

このように、鑑定評価で客観的な価値を把握した上で、コンサルティングで具体的な行動提案を行うことができます。


取得の優先順位

鑑定士を先に取るべき理由

理由 説明
受験資格 コンサルマスターの受験には鑑定士等の資格が必要
難易度 鑑定士試験の方が圧倒的に難しく、先に取得すべき
独占業務 鑑定士には独占業務があり、業務の基盤となる
知識の活用 鑑定士の知識でコンサルマスター試験は比較的容易

推奨する取得プラン

目標
1〜3年目 不動産鑑定士試験の合格
4年目 実務修習(鑑定士)
5年目 コンサルティングマスター試験の合格

鑑定士試験の合格後、実務修習中や修習修了後にコンサルティングマスターの取得を目指すのが効率的です。鑑定士試験で学んだ知識があれば、コンサルマスター試験は2〜3ヶ月の追加学習で合格可能です。


類似資格との比較

資格 性質 独占業務 鑑定士との相性
コンサルティングマスター 民間資格 なし 非常に良い
宅建士 国家資格 あり 非常に良い
CCIM(米国) 国際民間資格 なし 良い
CPM(米国) 国際民間資格 なし 良い
ARES認定マスター 民間資格 なし 良い

CCIM(Certified Commercial Investment Member)CPM(Certified Property Manager) は米国発の国際資格で、不動産投資や管理の専門性を証明します。グローバルに活躍する鑑定士にとっては、これらの資格も検討に値します。


コンサルティングマスターの今後の展望

需要が高まる背景

要因 内容
不動産の複雑化 権利関係、法規制、税制の複雑化で専門的助言の需要増
高齢化と相続 相続案件の増加に伴う不動産コンサルティング需要の拡大
空き家問題 全国約900万戸の空き家の活用に関する助言需要
不動産テック デジタル技術を活用した新しいコンサルティングサービス
ESG投資 環境性能を考慮した不動産投資助言

不動産特定共同事業の拡大

不動産クラウドファンディングの市場拡大に伴い、コンサルティングマスターの資格が業務管理者の要件として求められるケースが増えています。この分野は今後も成長が見込まれており、資格の需要は高まると考えられます。


まとめ

不動産鑑定士と不動産コンサルティングマスターは、国家資格と民間資格独占業務の有無という根本的な違いがあります。鑑定士は「不動産の価値を判定する」専門家、コンサルマスターは「不動産の活用を提案する」専門家です。

両資格は補完関係にあり、ダブルライセンスによって評価と提案をワンストップで提供できるようになります。鑑定士の資格保有者にとって、コンサルティングマスターは比較的短期間で取得でき、業務の幅を大きく広げる資格です。

不動産鑑定士の仕事内容は不動産鑑定士とはを、独立開業については独立開業ガイドをあわせてご覧ください。