需要と供給の原則とは(結論を一言で)

需要と供給の原則とは、不動産の価格は需要と供給の相互関係によって定まるという原則です。不動産鑑定士試験では、価格形成の最も基本的な原則として位置づけられ、他の諸原則との関連で出題されます。

一般に、財の価格は、その財の需要と供給との相互関係によって定まるとされているが、不動産の価格も、不動産に対する需要と供給との相互関係によって定まる。

― 不動産鑑定評価基準 総論第4章


わかりやすく言うと

「欲しい人が多くて物件が少なければ価格は上がり、物件が余っていれば価格は下がる」ということです。これは経済学の最も基本的な法則であり、不動産にも当てはまります。

ただし、不動産には供給の弾力性が乏しい(すぐに増やせない)、個別性が強い(全く同じ物件は存在しない)、代替性が低い(簡単に別の物件で代えられない)といった特性があるため、一般の財とは異なる価格の動きをすることがあります。


身近な具体例

例1: 人気学区の住宅地

評判の良い小学校がある学区では、子育て世帯の需要が非常に強い一方、住宅地の供給は限られています。結果として、同じ広さ・同じ駅距離でも、学区によって数百万円の価格差が生まれることがあります。需要が供給を上回っている典型例です。

例2: 人口減少地域の空き家

地方の過疎地域では、人口減少によって住宅の需要が大きく減少しています。一方、既存の住宅は残ったまま供給過多の状態です。結果として、「タダでもいいから引き取ってほしい」という物件さえ存在します。需要が極端に少ない場合、いくら供給があっても価格は低迷します。


鑑定評価における位置づけ

需要と供給の原則は、鑑定評価のあらゆる場面に関わる最も基本的な原則です。

  • 地域分析: 対象地域における不動産の需給動向を把握する
  • 市場分析: 同一需給圏における需要者・供給者の動向を分析する
  • 価格形成要因の分析: 一般的要因として需給バランスを検討する
  • 鑑定評価手法の適用: 各手法で求めた試算価格の調整においても需給を考慮する

不動産市場の需給の特徴

不動産は一般の財と異なる特性を持つため、需給の動きも独特です。

特徴 一般の財 不動産
供給の弾力性 高い(工場で量産可能) 低い(建設に時間がかかる)
代替性 高い(同じ商品が多数ある) 低い(全く同じ不動産はない)
取引頻度 高い 低い(一生に数回程度)
情報の対称性 比較的高い 低い(相対取引が多い)
価格の硬直性 低い 高い(価格調整に時間がかかる)

関連する用語との違い

用語 意味 違いのポイント
需要と供給の原則 価格は需要と供給の相互関係で決まる 市場全体の「量的バランス」を示す
競争の原則 超過利潤が競争を招く 需給バランスが崩れたときの「調整過程」を示す
代替の原則 代替関係にある不動産の価格は相互に関連する 需要が代替物件に流れる「代替効果」を示す

試験での出題ポイント

短答式試験

  • 不動産市場の特殊性: 供給の弾力性が乏しい点、代替性が低い点が問われる
  • 需給の原則と他の原則の関係: 変動の原則や競争の原則との関連が問われる

論文式試験

  • 「不動産の需要と供給の特殊性を一般の財と比較して論述せよ」という形式がありうる
  • 同一需給圏の概念と結びつけた論述が求められることがある

まとめ

需要と供給の原則は、不動産の価格形成における最も基本的な原則であり、「欲しい人と物件の量のバランスで価格が決まる」というシンプルな法則です。ただし、不動産には供給の弾力性が乏しいなどの特殊性があるため、一般の財とは異なる動きをします。地域分析価格形成要因の理解と併せて、確実に押さえておきましょう。