地価公示法の概要|公示価格と鑑定評価の関係
地価公示法の概要
地価公示法は、都市及びその周辺地域等において標準地を選定し公示価格を公示することにより、一般の土地取引の指標を提供するとともに、公共事業の用に供する土地の取得価格の算定の基準とすることを目的としています。
不動産鑑定士試験では、地価公示の手順、公示価格の性格(更地としての正常価格)、鑑定評価における規準の意味が頻出です。鑑定評価法と並んで不動産鑑定士に直結するテーマであり、確実に押さえる必要があります。
地価公示法の目的
この法律は、都市及びその周辺の地域等において、標準地を選定し、その正常な価格を公示することにより、一般の土地の取引価格に対して指標を与え、及び公共の利益となる事業の用に供する土地に対する適正な補償金の額の算定等に資し、もつて適正な地価の形成に寄与することを目的とする。
― 地価公示法 第1条
地価公示法の目的は、大きく以下の2つに分かれます。
| 目的 | 内容 |
|---|---|
| 一般の土地取引の指標 | 土地取引を行う者が取引価格の判断材料として活用 |
| 公共事業の補償の基準 | 公共事業に供する土地の取得価格の算定の基準 |
地価公示の法的効果
- 都市計画区域内で土地取引を行う者は、公示価格を指標として取引を行うよう努めなければならない(努力義務)
- 不動産鑑定士は、鑑定評価を行う場合に、公示価格を規準としなければならない(法的義務)
- 土地収用における補償金の算定は、公示価格を規準として算定した事業認定時の価格を基準とする
地価公示の手順
地価公示は、以下の手順で行われます。
1. 標準地の選定
- 土地鑑定委員会が標準地を選定
- 都市計画区域その他の土地取引が相当程度見込まれる区域から選定
- 自然的・社会的条件からみて類似する地域内で、土地の利用状況、環境等が通常と認められる一団の土地
2. 不動産鑑定士による鑑定評価
- 2人以上の不動産鑑定士が各標準地について鑑定評価を実施
- 近傍類地の取引価格から算定される推定価格
- 近傍類地の地代等から算定される推定価格
- 同等の効用を有する土地の造成に要する推定費用
- これらを勘案して鑑定評価を行う
3. 土地鑑定委員会の判定
- 土地鑑定委員会は、鑑定評価の結果を審査し、必要な調整を行い、正常な価格を判定
- 判定は毎年1月1日時点の価格
4. 官報での公示
- 土地鑑定委員会が官報で公示
- 公示事項:標準地の所在・地番、地積、形状、標準地及びその周辺の利用状況、公示価格等
- 関係市町村長は、公示事項を記載した書面・図面を市町村の事務所で一般の閲覧に供する
地価公示の手順フロー
土地鑑定委員会が標準地を選定
↓
2人以上の不動産鑑定士が鑑定評価
↓
土地鑑定委員会が審査・調整・判定
↓
官報で公示(毎年3月下旬ごろ発表)
↓
関係市町村長が書面・図面を閲覧に供する
公示価格の性格
正常な価格
公示価格は、自由な取引が行われるとした場合に通常成立すると認められる価格、すなわち正常価格です。
更地としての価格
- 公示価格は、更地(建物等の定着物がない宅地)としての価格
- 建物が存在する土地でも、建物がないものとして評価
- 借地権等の権利が設定されている場合も、それらがないものとして評価
公示価格の性格まとめ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 価格の種類 | 正常価格(正常な市場で成立する価格) |
| 土地の状態 | 更地としての価格 |
| 価格時点 | 毎年1月1日 |
| 鑑定評価人数 | 2人以上の不動産鑑定士 |
| 判定者 | 土地鑑定委員会 |
鑑定評価における公示価格との関係(規準)
規準とは
不動産鑑定士が土地の正常価格を求めるに際しては、公示価格を規準としなければならないとされています(地価公示法第8条)。
「規準とする」とは、対象土地の価格を求めるに際して、公示価格と対象土地の価格との間に均衡を保たせることをいいます。
規準の具体的方法
以下の要因を考慮して、公示価格との均衡を図ります。
- 時点修正:公示価格の価格時点(1月1日)から鑑定評価の価格時点までの変動
- 標準化補正:標準地と対象土地の個別的要因の違いの補正
- 地域要因の比較:標準地の存する地域と対象土地の存する地域の地域要因の比較
規準価格 = 公示価格 × 時点修正率 × 標準化補正率 × 地域要因比較率
規準の具体的な計算例
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 標準地の公示価格 | 300,000円/m2(1月1日時点) |
| 価格時点 | 7月1日(半年後) |
| 時点修正率 | 1.01(半年間で1%上昇と判定) |
| 標準化補正率 | 0.98(対象地は標準地より画地条件がやや劣る) |
| 地域要因比較率 | 1.05(対象地の地域の方が駅に近い等) |
規準価格 = 300,000円 × 1.01 × 0.98 × 1.05
= 約311,600円/m2
鑑定士は、この規準価格と自ら求めた試算価格との間に大きな乖離がないかを検証し、均衡を保たせることが求められます。
規準が必要な場合
都道府県地価調査との違い
地価公示と類似の制度として、都道府県地価調査(国土利用計画法施行令に基づく)があります。
| 項目 | 地価公示 | 都道府県地価調査 |
|---|---|---|
| 根拠法 | 地価公示法 | 国土利用計画法施行令 |
| 実施主体 | 土地鑑定委員会 | 都道府県知事 |
| 価格時点 | 毎年1月1日 | 毎年7月1日 |
| 対象区域 | 都市計画区域等 | 全国(都市計画区域外も含む) |
| 鑑定評価 | 2人以上の不動産鑑定士 | 1人以上の不動産鑑定士 |
| 公表 | 官報で公示 | 都道府県公報等で公表 |
| 選定地点 | 標準地 | 基準地 |
両者の関係
- 地価公示と都道府県地価調査は相互に補完する関係
- 価格時点が半年ずれており(1月1日と7月1日)、年間の地価動向を把握可能
- 同一地点に標準地と基準地が設定される場合もある(同一地点で半年ごとの価格が公表)
土地鑑定委員会
組織
- 国土交通省に設置される合議制の機関
- 委員7人で構成
- 委員の任期は3年
主な職務
- 標準地の選定
- 公示価格の判定
- 不動産鑑定士の試験に関する事務
- 実務修習に関する事務
地価公示の公示事項
地価公示では、以下の事項が官報で公示されます。
- 標準地の所在の郡、市、区、町村及び字並びに地番
- 標準地の単位面積当たりの正常な価格
- 標準地の地積及び形状
- 標準地及びその周辺の土地の利用の現況
- その他国土交通省令で定める事項
標準地の数と推移
地価公示の標準地の数は、約26,000地点(2025年時点)です。都道府県地価調査の基準地は約21,000地点あり、両者を合わせると全国で約47,000地点の地価情報が提供されています。
試験での出題ポイント
暗記必須事項
- 価格時点:地価公示は1月1日、都道府県地価調査は7月1日
- 鑑定評価の人数:地価公示は2人以上、都道府県地価調査は1人以上
- 公示価格の性格:更地としての正常価格
- 規準の意味:公示価格との間に均衡を保たせること
- 実施主体:地価公示は土地鑑定委員会、都道府県地価調査は都道府県知事
よく出る引っかけ
- 「地価公示は国土交通大臣が行う」→ 誤り(土地鑑定委員会)
- 「公示価格は建物を含めた価格である」→ 誤り(更地としての価格)
- 「都道府県地価調査は都市計画区域内のみ」→ 誤り(全国が対象)
- 「鑑定評価では常に公示価格を規準とする」→ 誤り(正常価格を求める場合)
- 「地価公示は1人の鑑定士で行う」→ 誤り(2人以上)
まとめ
地価公示法は、標準地の公示価格を通じて、一般の土地取引の指標と公共事業の補償基準を提供する法律です。公示価格は毎年1月1日時点の更地としての正常価格であり、2人以上の不動産鑑定士の鑑定評価に基づき土地鑑定委員会が判定します。
鑑定評価では正常価格を求める際に公示価格を規準とすることが法的に義務付けられています。都道府県地価調査との違い(価格時点、鑑定士の人数、対象区域等)も頻出の比較論点です。鑑定評価法や正常価格の概念と合わせて体系的に学習しましょう。