対象不動産の確定とは

対象不動産の確定とは、鑑定評価の対象となる不動産を「物理的に何か」(物的確定)と「どのような権利か」(権利の態様の確定)の両面から明確にすることです。不動産鑑定士試験では、対象確定条件と密接に関連する重要な概念です。

鑑定評価の対象となる不動産は、土地若しくは建物又はこれらの組合せである。鑑定評価に当たっては、まず対象不動産を確定しなければならず、対象不動産の確定に当たっては、対象不動産の物的確定及び権利の態様の確定を行う。

― 不動産鑑定評価基準 総論第5章第1節


わかりやすく言うと

鑑定評価を始める前に、「何を評価するのか」をはっきりさせる必要があります。これには2つの側面があります。

  1. 物的確定: 「どの土地・建物のことか」を特定する(所在・面積・構造など)
  2. 権利の態様の確定: 「どのような権利を評価するのか」を特定する(所有権か借地権か、etc.)

同じ土地でも、所有権として評価するのか、借地権として評価するのかで価格は全く異なります。だからこそ、両面からの確定が不可欠なのです。


身近な具体例

例1: 一戸建ての鑑定評価

「東京都○○区○○1-2-3の土地(150平方メートル)及び建物(木造2階建て120平方メートル)の所有権を評価する」

  • 物的確定: 所在は○○1-2-3、土地面積150平方メートル、建物は木造2階建て120平方メートル
  • 権利の態様の確定: 土地・建物ともに所有権(完全所有権、第三者の権利なし)

例2: 借地上の建物の鑑定評価

「同じ土地の上に建物が建っているが、土地は借地である」という場合を考えます。

  • 物的確定: 物理的な土地・建物は例1と同じ
  • 権利の態様の確定: 土地は借地権、建物は所有権

物的確定は同じでも、権利の態様が異なれば、評価額は大きく変わります。借地権の場合、底地の所有者に地代を支払う必要があるため、完全所有権の場合より低い評価額になるのが通常です。


物的確定と権利の態様の確定の詳細

物的確定で確認すべき事項

確認事項 内容
所在 住所、地番
土地の面積・形状 登記簿面積、実測面積、形状(整形・不整形)
建物の概要 構造、延床面積、築年数、用途
境界 隣地との境界が確定しているか
不動産の種別 宅地、農地、林地など
不動産の類型 更地、建付地、借地権、底地など

権利の態様の確定で確認すべき事項

確認事項 内容
所有権の帰属 誰が所有しているか
使用収益を制約する権利 借地権、地上権、地役権の有無
担保権の設定 抵当権、根抵当権の有無
賃貸借の状況 テナントの有無、契約内容
共有の場合 共有持分、共有者の状況

鑑定評価における位置づけ

対象不動産の確定は、鑑定評価プロセスの最初のステップです。

  • 対象確定条件の設定: 物的確定と権利の態様の確定に基づき、対象確定条件を設定する
  • 不動産の種別・類型の判定: 物的確定の結果として、不動産の種別と類型を判定する
  • 適用手法の選択: 権利の態様によって、適用すべき鑑定評価手法が変わる
  • 鑑定評価書への記載: 物的確定と権利の態様は鑑定評価書の必須記載事項

関連する用語との違い

用語 意味 違いのポイント
物的確定 対象不動産の物理的な特定 「何がどこにあるか」を明確にする
権利の態様の確定 対象不動産の権利関係の特定 「どんな権利か」を明確にする
対象確定条件 対象不動産を確定するための条件 物的確定と権利確定を含む上位概念
不動産の類型 更地・建付地・借地権等の分類 権利の態様に基づく分類体系

試験での出題ポイント

短答式試験

  • 物的確定と権利の態様の区別: 「借地権を評価することは物的確定の問題である」→ 誤り(権利の態様の確定の問題)
  • 対象確定と不動産の類型の関係: 権利の態様の確定が不動産の類型(更地・建付地・借地権など)の判定につながる点が問われる

論文式試験

  • 「対象不動産の確定の意義と手順について、物的確定と権利の態様の確定に分けて論述せよ」
  • 具体例を交えて物的確定と権利の態様の確定の違いを明確に説明することが求められる

まとめ

対象不動産の確定は、鑑定評価の出発点であり、物的確定(物理的な特定)と権利の態様の確定(権利関係の特定)の2つの側面からなります。同じ物件でも権利の態様が異なれば評価額は大きく変わるため、両面からの確定が不可欠です。対象確定条件不動産の種別と類型の記事と併せて、体系的に理解しておきましょう。