宅地建物取引業法の概要

宅地建物取引業法(宅建業法)は、宅地建物取引業を営む者について免許制度を実施し、業務に対する必要な規制を行うことにより、取引の公正の確保購入者等の利益の保護を図るとともに、宅地及び建物の流通の円滑化に資することを目的としています。

不動産鑑定士試験では、宅建業法の基本的な仕組み、特に重要事項説明(35条書面)媒介契約の種類が頻出です。鑑定評価の実務においても、不動産取引の実態を理解する上で宅建業法の知識は不可欠です。

宅地建物取引業の定義

宅地建物取引業とは

宅地建物取引業とは、以下の行為を業として行うことをいいます。

対象 行為
宅地又は建物 売買(自ら当事者として)
宅地又は建物 交換(自ら当事者として)
宅地又は建物 売買・交換・貸借の媒介
宅地又は建物 売買・交換・貸借の代理

宅建業に該当しない行為

以下の行為は宅建業に該当しません。

  • 自ら貸借(自分の不動産を自分で貸すこと)→ 不動産賃貸業であり宅建業ではない
  • 一回限りの売却で反復継続性がない場合
  • 国・地方公共団体等が行う場合

「業として」の判断基準

  • 不特定多数の者を相手に
  • 反復継続して行うこと
  • 営利目的は必須ではない

免許制度

免許の種類

免許の種類 要件
都道府県知事免許 1つの都道府県内にのみ事務所を設置
国土交通大臣免許 2以上の都道府県に事務所を設置

免許の有効期間

  • 5年間(更新により継続可能)
  • 更新申請は有効期間満了の日の90日前から30日前までに行う

免許の基準(欠格事由)

以下に該当する場合は免許を受けられません。

  • 成年被後見人・被保佐人(一律ではなく個別審査)
  • 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
  • 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
  • 宅建業法違反等で罰金刑に処せられ5年を経過しない者
  • 免許の取消しを受けた日から5年を経過しない者
  • 暴力団員等

免許と鑑定業登録の比較

鑑定評価法の鑑定業者の登録制度と比較すると、以下の点で共通・相違しています。

項目 宅建業(免許制) 鑑定業(登録制)
有効期間 5年 5年
監督者 知事又は大臣 知事又は大臣
専門資格者の設置 宅建士(事務所ごとに5人に1人以上) 鑑定士(事務所ごとに1人以上)
制度の性格 免許制 登録制

宅地建物取引士の設置義務

宅地建物取引士とは

宅地建物取引士(宅建士)は、宅建士試験に合格し、都道府県知事の登録を受け、宅建士証の交付を受けた者です。

設置義務

宅建業者は、事務所ごとに従業員5人に1人以上の割合で専任の宅建士を設置しなければなりません。

宅建士の独占業務

以下の3つは宅建士のみが行える業務です。

業務 内容
重要事項の説明(35条) 契約前に買主・借主等に重要事項を説明
重要事項説明書への記名 35条書面への宅建士の記名
37条書面への記名 契約成立後の書面への宅建士の記名

重要事項説明(35条書面)

概要

宅建業者は、売買・交換・貸借の契約成立前に、取引の相手方等に対して、宅建士をして、重要事項を記載した書面(35条書面)を交付して説明させなければなりません。

重要事項説明の対象者

取引形態 説明の相手方
売買 買主
交換 両当事者
貸借 借主

売主に対しては重要事項説明は不要です(売主は自己の物件をよく知っているため)。

重要事項の主な記載事項

物件に関する事項

  • 登記された権利の種類・内容
  • 法令に基づく制限(都市計画法建築基準法等)
  • 私道負担に関する事項
  • 飲用水・電気・ガスの供給施設、排水施設の整備状況
  • 建物の構造耐力上主要な部分の状況(既存建物の場合)

取引条件に関する事項

  • 代金・交換差金・借賃以外に授受される金銭の額・目的
  • 契約の解除に関する事項
  • 損害賠償額の予定・違約金に関する事項
  • 手付金等の保全措置の概要
  • 支払金・預り金の保全措置の概要
  • ローンのあっせんの内容・不成立の場合の措置

区分所有建物の場合の追加事項

  • 専有部分の用途その他の利用の制限
  • 管理規約の定め
  • 管理費・修繕積立金の額
  • 管理の委託先

説明の方法

  • 宅建士が記名した書面を交付して説明
  • 宅建士は宅建士証を提示して説明
  • IT重説(テレビ会議等による説明)も一定の要件のもとで可能

媒介契約

媒介契約とは

媒介契約とは、宅建業者が売買・交換の媒介(仲介)を依頼された場合に、依頼者との間で締結する契約です。以下の3種類があります。

3種類の媒介契約の比較

項目 一般媒介契約 専任媒介契約 専属専任媒介契約
他の業者への依頼 可能 不可 不可
自己発見取引 可能 可能 不可
契約の有効期間 制限なし(実務上は3月以内が一般的) 3月以内 3月以内
指定流通機構(レインズ)への登録義務 なし 契約締結日から7日以内 契約締結日から5日以内
業務処理状況の報告義務 なし 2週間に1回以上 1週間に1回以上

媒介契約の暗記ポイント

  • 専任:レインズ7日以内、報告2週間に1回
  • 専属専任:レインズ5日以内、報告1週間に1回
  • 専属専任が最も制限が厳しい
  • 一般媒介は最も自由度が高い

自己発見取引とは

自己発見取引とは、依頼者自身が取引の相手方を見つけて直接契約することです。

  • 一般媒介・専任媒介では可能
  • 専属専任媒介では不可(必ず媒介業者を通す必要がある)

37条書面(契約書面)

概要

宅建業者は、契約が成立したときは、遅滞なく、一定の事項を記載した書面(37条書面)を契約の当事者に交付しなければなりません。

35条書面との違い

項目 35条書面(重要事項説明書) 37条書面(契約書面)
交付時期 契約成立 契約成立
交付相手 買主・借主等 当事者双方
説明義務 あり(宅建士が説明) なし(書面交付のみ)
宅建士の記名 必要 必要

37条書面の記載事項(必要的記載事項)

  • 当事者の氏名・住所
  • 物件の所在・面積等
  • 代金・交換差金・借賃の額、支払時期、支払方法
  • 物件の引渡時期
  • 移転登記の申請時期

報酬規定

売買の媒介報酬

宅建業者が受け取れる報酬の上限は、国土交通大臣が定めています。

売買代金(税抜) 報酬の上限(片方から)
200万円以下 代金の5% + 消費税
200万円超400万円以下 代金の4% + 2万円 + 消費税
400万円超 代金の3% + 6万円 + 消費税

計算の簡便法(400万円超の場合)

報酬の上限 = 売買代金 × 3% + 6万円 + 消費税

貸借の媒介報酬

  • 報酬の合計額は借賃の1月分以内(依頼者双方から合計)
  • 居住用建物の貸借:依頼者の一方から受ける報酬は借賃の0.5月分以内(承諾があれば1月分まで)

報酬に関する注意点

  • 報酬の上限を超えて受領することは禁止
  • 成功報酬が原則(媒介が成立しなければ報酬なし)
  • 広告費用は、依頼者の依頼に基づく特別の広告費用を除き、報酬に含まれる

宅建業者の義務と禁止行為

主な義務

義務 内容
標識の掲示 事務所等に標識を掲示
帳簿の備え付け 取引に関する帳簿を事務所ごとに備え付け
従業者名簿 従業者名簿を事務所に備え付け
従業者証明書 従業者に証明書を携帯させる
供託又は保証協会 営業保証金の供託又は保証協会への加入

禁止行為(業務上の規制)

  • 誇大広告の禁止:著しく事実に相違する表示等
  • 不当な勧誘の禁止:威迫、困惑させる行為等
  • 手付の貸付けによる契約締結の誘引の禁止
  • 手付金等の保全措置:一定額を超える手付金等を受領する場合は保全措置が必要

試験での出題ポイント

暗記必須事項

  • 免許の有効期間5年
  • 専任の宅建士:事務所ごとに従業員5人に1人以上
  • 重要事項説明:契約成立に、宅建士が説明、買主・借主に対して行う
  • 媒介契約の数字:専任7日/2週間、専属専任5日/1週間
  • 報酬の上限:400万円超は3% + 6万円
  • 自ら貸借は宅建業に該当しない

よく出る引っかけ

  • 「自ら不動産を賃貸することは宅建業に該当する」→ 誤り(自ら貸借は該当しない)
  • 「重要事項説明は売主に対しても行う」→ 誤り(買主・借主に行う)
  • 「37条書面は説明が必要」→ 誤り(書面交付のみで説明義務なし)
  • 「一般媒介契約でもレインズへの登録が義務」→ 誤り(義務なし)
  • 「媒介契約の有効期間は6月以内」→ 誤り(専任・専属専任は3月以内)
  • 「報酬は売買代金の3%が上限」→ 誤り(3% + 6万円 + 消費税)

まとめ

宅建業法は、不動産取引の公正確保と購入者保護を目的とする法律です。宅建業は免許制であり、事務所ごとに従業員5人に1人以上の専任の宅建士を設置する義務があります。重要事項説明(35条書面)は契約成立前に宅建士が買主・借主に行い、37条書面は契約成立後に当事者双方に交付します。

媒介契約は一般・専任・専属専任の3種類があり、レインズへの登録期限と業務報告頻度の数字は暗記必須です。不動産鑑定士試験では、宅建業法の基本構造を正確に理解しているかが問われるため、都市計画法建築基準法などの他の行政法規と合わせて、体系的に学習していきましょう。